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第八章 絶望の連鎖に
覇者に
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カルロの許可を得た私はコンラッドと共にサルバディール皇国へと向かいます。
マリィはカゴから出してあげても眠ったまま。ご飯を食べているか寝ているかのどちらかです。
こんな調子ではデブ竜になってしまわないかと心配してしまいますね。
「姫、最近は随分と大人しくしているみたいじゃないですか?」
道中の馬車。コンラッドが暇に任せて聞いた。
「そうでもないけどね。個人的には色々とありすぎたわ。それで給金は髭から受け取っているの?」
「毎月いただいております。気にしていただく必要はございません。それで姫、サルバディール皇国で何があるのでしょう? 戦争とか聞こえましたが……」
恐らくコンラッドは魔道書探しに飽きていたのでしょう。
面白そうな話に乗っかっただけかと思われます。
「まあ平たく戦争です。しかも負け戦なのよ。どうしようかしら?」
「詳しく聞かせていただいても?」
コンラッドの要請に私は全てを伝えていきます。
これから始まる戦争の顛末。勝っても負けても第三者しか利益を享受できない無意味な戦いについて。
「なるほど、実に面白いじゃないですか? 戦争前に赴く理由は仲裁ではないのでしょう?」
「まあね。議会は私のことを敵視しているし。教会に寄ったあとはヴァリアント帝国に潜入してみようと考えています」
「流石は我が主人。修道女として潜入するのでしょうか?」
何かと修道服は便利ですからね。聖職者はどこへ行っても無茶な扱いを受けませんし。
「いざとなれば帝国のお城を吹き飛ばしても構わないのだけど、介入するのもどうかと思うのよねぇ……」
「姫、しれっと恐ろしい話をしますなぁ。冗談ではないのですよね?」
そういえばコンラッドは私が戦闘魔法の使い手であることを知りません。
神聖魔法については充分に理解しているでしょうけれど。
「あの岩くらいなら吹き飛ばせるわよ?」
ちょうど良い感じの岩山が見えてきたので、私はそれを例にしてロナ・メテオ・バーストの威力を説明します。
「いや、あれは山じゃないですか?」
「しょうがないな。やってみせるよ……」
どうにも信じてもらえないので、私は実演することに。
恐らく十七歳である現在なら昏倒は避けられると思う。常に魔力強化はしているし、キャンセル技にて熟練度も上げているのだから。
「……我、それを望まん。虚空に生み出されし力を一点に撃ち出すのみ」
車内で魔法を詠唱したものだから、馬が驚いています。
まあしかし、騒ぐのはここからです。渾身の古代魔法が撃ち放たれるのですから。
「いけぇえぇええええっ!!」
車内よりも大きな魔法陣。私はそれに魔力を注いでいく。
この調子なら問題ないと思える。昏倒せずに古代魔法を撃ち抜けることでしょう。
「ロナ・メテオ・バースト!!」
刹那に巨大な隕石が出現しています。全魔力が変換されたのち、それは撃ち出されていく。
遥か遠くにそびえ立つ岩山に向かって、目にも留まらぬ速さで放たれていました。
「おぉ……。ぉぅ……」
流石にコンラッドも戸惑っている様子。まあ古代魔法を見る機会なんてないからね。王宮魔道士でさえも、ひっくり返ると思うわ。
呆然と頭を振りつつも、コンラッドは私と視線を合わせます。
「姫、帝国を滅ぼしませんか?」
はい? それはどういった提案なのかな?
「魔法で殲滅するの?」
「いや、姫の魔法に対抗できる国があるとは思えません。セントローゼス王国でさえ、姫が本気で攻め込めば陥落してしまうでしょう」
まあ、古代魔法を見てしまえばそう思うかも。でもね、私は別に戦闘狂じゃないのよ。
「さっきの魔法は連発できないの。魔力が足りないからね。三発も撃ったら昏倒しちゃうわ」
「いや、一発で降参しますよ。どのような城壁も木っ端微塵になりますし……」
でも、一国を滅ぼしちゃう女ってどうなの? 誰も近寄って来ないんじゃないかな?
私が自問自答していると、マリィが目を覚ましました。
「がぁぁっ!」
「え? 外に出たいの?」
マリィには運動させないとダメです。
デブ竜にしないためにも、意欲のあるときには外を飛んでもらわないと。
「疲れたら言うのよ?」
「がぁぁっ!」
分かっているのか分かっていないのか。
コンラッドの話が途中になっていましたが、マリィを窓から出して、私は彼女を見守るように見つめています。
「ガァァアアアッッ!!」
一瞬のあと、マリィが巨大な火球を撃ち放ちました。
何が何だか分からなかったけれど、車窓から見えていた岩山が一つ消し飛んでいます。
「がぁぁぁ……」
どうやら私に対抗したみたい。自分も岩山くらい吹き飛ばせるのだと。
微妙な雰囲気に包まれる中、私はチラリとコンラッドに視線を向ける。
「姫、一国どころか連合軍であっても殲滅できるかと……」
違うの! 私は別に戦闘狂じゃないの!
私は三発しか撃てないし、マリィは寝ぼけてるだけなんだって!
「実に楽しくなってきましたね」
「楽しくない! 殲滅とか考えてないからね!?」
声を張ることしかできない私でした……。
マリィはカゴから出してあげても眠ったまま。ご飯を食べているか寝ているかのどちらかです。
こんな調子ではデブ竜になってしまわないかと心配してしまいますね。
「姫、最近は随分と大人しくしているみたいじゃないですか?」
道中の馬車。コンラッドが暇に任せて聞いた。
「そうでもないけどね。個人的には色々とありすぎたわ。それで給金は髭から受け取っているの?」
「毎月いただいております。気にしていただく必要はございません。それで姫、サルバディール皇国で何があるのでしょう? 戦争とか聞こえましたが……」
恐らくコンラッドは魔道書探しに飽きていたのでしょう。
面白そうな話に乗っかっただけかと思われます。
「まあ平たく戦争です。しかも負け戦なのよ。どうしようかしら?」
「詳しく聞かせていただいても?」
コンラッドの要請に私は全てを伝えていきます。
これから始まる戦争の顛末。勝っても負けても第三者しか利益を享受できない無意味な戦いについて。
「なるほど、実に面白いじゃないですか? 戦争前に赴く理由は仲裁ではないのでしょう?」
「まあね。議会は私のことを敵視しているし。教会に寄ったあとはヴァリアント帝国に潜入してみようと考えています」
「流石は我が主人。修道女として潜入するのでしょうか?」
何かと修道服は便利ですからね。聖職者はどこへ行っても無茶な扱いを受けませんし。
「いざとなれば帝国のお城を吹き飛ばしても構わないのだけど、介入するのもどうかと思うのよねぇ……」
「姫、しれっと恐ろしい話をしますなぁ。冗談ではないのですよね?」
そういえばコンラッドは私が戦闘魔法の使い手であることを知りません。
神聖魔法については充分に理解しているでしょうけれど。
「あの岩くらいなら吹き飛ばせるわよ?」
ちょうど良い感じの岩山が見えてきたので、私はそれを例にしてロナ・メテオ・バーストの威力を説明します。
「いや、あれは山じゃないですか?」
「しょうがないな。やってみせるよ……」
どうにも信じてもらえないので、私は実演することに。
恐らく十七歳である現在なら昏倒は避けられると思う。常に魔力強化はしているし、キャンセル技にて熟練度も上げているのだから。
「……我、それを望まん。虚空に生み出されし力を一点に撃ち出すのみ」
車内で魔法を詠唱したものだから、馬が驚いています。
まあしかし、騒ぐのはここからです。渾身の古代魔法が撃ち放たれるのですから。
「いけぇえぇええええっ!!」
車内よりも大きな魔法陣。私はそれに魔力を注いでいく。
この調子なら問題ないと思える。昏倒せずに古代魔法を撃ち抜けることでしょう。
「ロナ・メテオ・バースト!!」
刹那に巨大な隕石が出現しています。全魔力が変換されたのち、それは撃ち出されていく。
遥か遠くにそびえ立つ岩山に向かって、目にも留まらぬ速さで放たれていました。
「おぉ……。ぉぅ……」
流石にコンラッドも戸惑っている様子。まあ古代魔法を見る機会なんてないからね。王宮魔道士でさえも、ひっくり返ると思うわ。
呆然と頭を振りつつも、コンラッドは私と視線を合わせます。
「姫、帝国を滅ぼしませんか?」
はい? それはどういった提案なのかな?
「魔法で殲滅するの?」
「いや、姫の魔法に対抗できる国があるとは思えません。セントローゼス王国でさえ、姫が本気で攻め込めば陥落してしまうでしょう」
まあ、古代魔法を見てしまえばそう思うかも。でもね、私は別に戦闘狂じゃないのよ。
「さっきの魔法は連発できないの。魔力が足りないからね。三発も撃ったら昏倒しちゃうわ」
「いや、一発で降参しますよ。どのような城壁も木っ端微塵になりますし……」
でも、一国を滅ぼしちゃう女ってどうなの? 誰も近寄って来ないんじゃないかな?
私が自問自答していると、マリィが目を覚ましました。
「がぁぁっ!」
「え? 外に出たいの?」
マリィには運動させないとダメです。
デブ竜にしないためにも、意欲のあるときには外を飛んでもらわないと。
「疲れたら言うのよ?」
「がぁぁっ!」
分かっているのか分かっていないのか。
コンラッドの話が途中になっていましたが、マリィを窓から出して、私は彼女を見守るように見つめています。
「ガァァアアアッッ!!」
一瞬のあと、マリィが巨大な火球を撃ち放ちました。
何が何だか分からなかったけれど、車窓から見えていた岩山が一つ消し飛んでいます。
「がぁぁぁ……」
どうやら私に対抗したみたい。自分も岩山くらい吹き飛ばせるのだと。
微妙な雰囲気に包まれる中、私はチラリとコンラッドに視線を向ける。
「姫、一国どころか連合軍であっても殲滅できるかと……」
違うの! 私は別に戦闘狂じゃないの!
私は三発しか撃てないし、マリィは寝ぼけてるだけなんだって!
「実に楽しくなってきましたね」
「楽しくない! 殲滅とか考えてないからね!?」
声を張ることしかできない私でした……。
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