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第二章 騎士となるために

新たなる決意

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 食堂で夕飯を平らげて部屋に戻った一八。扉を開くや否に心配した伸吾が声をかけてくれる。
「奥田君、大丈夫? まるで意識がなかったけど……」
「もう心配ねぇよ。単なる魔力切れだ」
 そう言うしかない。詳しく問われたら菜畑の返答をそのまま返すだけである。

「まあ、そうだろうね。何しろ君が放った一撃は演習場の壁を破壊してしまったんだし……」
「マジで!?」
 それはまるで予想していない。意識を失ったあと、レイストームは減衰することなく壁を突き破ってしまったという。

「修繕費を請求されないだろうな……」
「菜畑教員が見ていたんだし、それはないと思うよ。それより魔法術式について調べてみたんだけど……」
 どうやら伸吾は一八のためを思って、まだ魔法術式について調べてくれたらしい。マナリスと会った今となってはもう必要なかったのだが……。

「すまん。俺はあのレイストームって魔法を使うよ。どうやら女神の加護によって俺はあの魔法術式を覚えられたんだ……」
 信じてもらえるかどうかは不明だ。しかし、それくらいしか弁明などできない。女神マナリスに褒美としてもらっただなんていえるはずもなかった。

「それって菜畑教員が話してたの? どうにも真偽が怪しい話だね?」
「そういうけどよ、俺だって困惑してんだ。マジックデバイスのトリガーを引いた瞬間に術式が理解できたんだぞ? 間違っていた術式を俺は直ぐさま訂正して起動できた。素人の俺ができるとは思えんだろう?」
「まあそれはそうか。魔法のイロハも分かってなかったんだもんね。やはり女神の加護を持つ者は何かしらの使命が与えられているのかもしれない」
 伸吾は良いように解釈してくれる。そうなれば一八としても話を進めやすい。女神の加護という特殊な天恵技によって誤魔化すことができる。

「いやでも、俺の使命は天軍の殲滅だと思う。それで俺はあの術式を奈落太刀の柄に入れ込めないかと考えてるんだが……」
 ここで一八はアイデアを口にする。なぜなら魔道兵器は基本的に握っておくものであり、ある程度の魔力を常に供給し速射できるようにしておくものなのだ。
「でもあれは一発で魔力切れしてしまうんだろ?」
「それで良いんだよ。いざというとき確殺できる手段であるなら……」
 一八は語った。魔力切れというデメリットはあったけれど、天主に対して有効な攻撃方法は再考の余地すらないのだと。

「俺は仲間を守れる――――」

 本当に強く真っ直ぐな騎士だと伸吾は思った。全てを背負うような一八には何も返せない。生き抜くことよりも仲間を守ろうとする崇高な決意には……。
「まったく呆れるね。なら僕はいつも君の側にいるよ……」
「おう、いつだって守ってやるさ。伸吾が危機にあるのなら俺は駆け付けるから」
「いや、そうじゃないって……」
 一八の返答を伸吾は笑みを浮かべながらも否定する。彼にもまた覚悟があったのだ。

「僕が奥田君を守るためだ……」
 一八に看過されたのか伸吾は理由を口にする。今の今まで任務外の行動を控えていた彼であるが、任務以外にも請け負うような話をした。

「そりゃ、ありがてぇな……。頼りにしてるぜ!」
「こちらこそ。君が側にいるなら百人力だよ」
 頷く一八はスッと右拳を突き出す。待ち受けるものは部活などではなく、命を懸けた戦いである。しかし、一八はスポーツマン的な結束を促しているかのよう。

 直ぐさま伸吾の右拳がコツンとぶつかる。笑顔の伸吾は満更でもない感じだ。
 それは意思表示に違いない。たとえ、どのような危機にあろうとも、互いが一方を守り抜くのだと。
「さあ、明日も頑張ろう! 僕も遠距離武器を考えてみる。それが自分のためだけでなく、仲間を守ることに繋がるなら!」
「おうよ! 俺も手伝うぜ。明日は術式論の授業がある。先生に聞いてみるっきゃねぇな!」
 術式論を履修していて良かったと思う。基本的に自分のデバイスを改良していく授業なのだ。伸吾が携帯すべき武器も見つけられるだろうし、何より奈落太刀の柄に換装できるかどうかを知ることができる。

 二人は勉強したのちにベッドへと入った。入学式前夜であるかのように、明日の授業に期待をして。掲げた崇高なる目的を遂げられるようにと……。
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