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第2章 出会いは必然!?
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「そうだ。お昼食べました?」
「あっ!まだだった!」
仕事探しに夢中になって、お昼逃してたんだ。
「この先に、美味しいパスタ屋さんがあるんですけど、一緒に食べませんか?」
「はい。」
その時は、素直にはいって言ってしまった。
たぶん。
もっと、折橋さんと一緒にいたいんだと思う。
この先、こんな素敵な人と、出会う事なんてないんだろうなぁ。
住む世界が違うって、こう言う事だ。
しばらくして、リムジンはパスタ屋さんの近くに止まった。
「ここですよ。」
リムジンを降りた先のお店は、まるでイタリアかフランスに来たみたいな外見。
「……可愛い。」
こんなパスタ屋さん、あったなんて、知らなかった。
「よかった。気に入って貰えて。」
折橋さんも、嬉しそうだ。
お店の中に入ると、お洒落なテーブルが並ぶ。
「窓際にしよう。」
折橋さんは、私の手を握った。
「えっ……」
そのテーブルまでの間、私は不自由な生活から連れ出して貰っている、どこかの映画のヒロインみたいに、もうどうなってもいいと思った。
このまま、何も悩みのない世界に、連れて行ってほしい。
その瞬間、周りはスローモーション。
周りには、お花畑が飛んでいた。
「ここにしましょう。」
「は、はい!」
ハッと気が付くと、歩いた距離はほんの1m。
そんな短い間に、あんな逃避行していたなんて。
どんな想像力だよ。
「何がいいですか?」
「えーっと……」
メニューを見て、愕然とした。
パスタだけで、800円。
中には、1,000円を超えるモノもある。
そんなパスタ、食べた事ない。
「……えっと、ミートスースありますか、ね。」
「分かりました。ミートソースですね。」
折橋さんはあっさり返事し、店員さんを呼んだ。
「ボロネーゼを二つ、お願いします。」
「畏まりました。」
ほう、ボロネーゼって言うのか。
私は、もう一度メニュー表を見た。
ボロネーゼは、960円。
はっははぁー、ギリ払える。
「あのっ!」
「はい?」
私は、右手を少し挙げた。
「ここ、私にご馳走させて下さい。」
折橋さんが、目をぱちくりさせている。
「さっきの、お礼をしたくて。」
「はははっ、気にしなくていいのに。」
「いえ。」
ドキドキしながら待つと、折橋さんはあの優しそうな笑顔を返してくれた。
「じゃあ、お言葉に甘えて。」
私は、ほっとした。
「よかった。」
これで、貸し借り無しで、別れられる。
「そっか。」
「えっ?」
「そう言う人なんだぁって、つむぎさんは。」
折橋さんはそう言うと、私をまた柔らかい表情で、じっと見つめてくれた。
なんだろう、この感じ。
「決めた。」
「はい?」
私が前のめりになると、折橋さんも前のめりになった。
「僕と、結婚しませんか?」
頭の中が真っ白になった。
はっ?なに?
私、今、折橋さんにプロポーズされたの?
「もちろん、急なお話ですから、今直ぐなんていいません。一緒に住むのも、週末だけでいい。平日はつむぎさんの自由にしていいですから。あっ、住むところは僕が提供します。」
いろんな情報が一気に入ってきたけれど、一回整理した。
1、結婚は今直ぐではない。
2、一緒に住むのは週末だけ。
3、平日は私の勝手にしていい。
4、家は折橋さんが、用意してくれる。
ん?
一緒に住むのは、週末だけ?
あれ?なんだ、それ。
「あの……週末だけ一緒に住むって……」
「今、流行ってるでしょ?週末婚って。」
週末婚!?
そんなの流行ってるの!?
私の辞書に、そんな言葉、載ってないんですけど!?
「返事はいつでもいいから。考えてみて。」
「はあ……」
そして私は、やってきたボロネーゼを食べてる間も、”週末婚”と言うワードが気になって気になって、仕方なかった。
だからかな。
960円もしたボロネーゼの味、全く覚えていなくて、そんな覚えていないパスタに、今の全財産を使ってしまった。
しかも帰りの景色も、全くただ流れていくだけで、どこを通って帰って来たのか、全く分からなかった。
「今日は、ご馳走様でした。」
「……はい。」
「また、会って貰えますか?」
「……はい。」
「その時は、僕がご馳走しますね。」
「……はい。」
なぜか茫然としていたら、折橋さんに抱きしめられていた。
「えっ?えっ?」
「突然で、驚いたかもしれないけれど、君と結婚したいって言う気持ちは、本当だから。」
心臓が、トクントクンと波打つ。
「一生、君だけだと誓うよ。だから、この話受けて欲しい。」
嬉しくて嬉しくて、私は幸せを感じていた。
「大丈夫。俺、君よりも14歳年上だけど、夜も頑張るから。」
「えっ、あの……」
14歳も年上だったんだ。
若く見えるから、そんなの感じなかった。
しかも、夜も頑張るって……
やだ私、そんな事に、期待して。
「週末だけどね。」
私は思いっきり、折橋さんの体を突き放した。
「いや、やっぱり週末だけって、可笑しいと思うんです。」
「何が?お互い、縛られなくていいじゃん。」
「そう言う問題じゃ、ないと思うんです。」
「じゃあ、どう言う問題?」
どう言う問題って、結婚って毎日、一緒にいたいからするものなんじゃ……
「ああ、週末だけじゃ足りないって事。」
「そ、そうです。」
「やだなぁ、つむぎさん。意外と欲しがり?大丈夫。週末にまとめて愛してあげるから。」
「そっちの話じゃありません!」
そう言っているのに、折橋さんはもうリムジンに乗っている。
「そうだ。これ、俺の連絡先。」
スケジュール帳のメモ用紙に、携帯の番号を書いて渡してくれた折橋さん。
「ちょ、ちょっと!」
「結婚したくなったら、いつでも連絡して。」
「そんな用事で電話するなんて、有り得る訳ないでしょ!」
「じゃあね、つむぎさん!」
そして折橋さんは、リムジンで走り去ってしまった。
「はぁ?」
ただ一人、家の前で取り残された私がいた。
私が結婚?
しかも、来月には無職になるって言うのに、IT会社の社長と?
「有り得ない、有り得ない!」
いくら頭を振っても、折橋さんの優しそうな笑顔が、目の前から離れない。
「週末婚かぁ。」
私は、ため息をついた。
「それよりも、就職活動だよ。」
私は、折橋さんから貰った携帯番号の紙を、カバンの中に押し込んだ。
「あっ!まだだった!」
仕事探しに夢中になって、お昼逃してたんだ。
「この先に、美味しいパスタ屋さんがあるんですけど、一緒に食べませんか?」
「はい。」
その時は、素直にはいって言ってしまった。
たぶん。
もっと、折橋さんと一緒にいたいんだと思う。
この先、こんな素敵な人と、出会う事なんてないんだろうなぁ。
住む世界が違うって、こう言う事だ。
しばらくして、リムジンはパスタ屋さんの近くに止まった。
「ここですよ。」
リムジンを降りた先のお店は、まるでイタリアかフランスに来たみたいな外見。
「……可愛い。」
こんなパスタ屋さん、あったなんて、知らなかった。
「よかった。気に入って貰えて。」
折橋さんも、嬉しそうだ。
お店の中に入ると、お洒落なテーブルが並ぶ。
「窓際にしよう。」
折橋さんは、私の手を握った。
「えっ……」
そのテーブルまでの間、私は不自由な生活から連れ出して貰っている、どこかの映画のヒロインみたいに、もうどうなってもいいと思った。
このまま、何も悩みのない世界に、連れて行ってほしい。
その瞬間、周りはスローモーション。
周りには、お花畑が飛んでいた。
「ここにしましょう。」
「は、はい!」
ハッと気が付くと、歩いた距離はほんの1m。
そんな短い間に、あんな逃避行していたなんて。
どんな想像力だよ。
「何がいいですか?」
「えーっと……」
メニューを見て、愕然とした。
パスタだけで、800円。
中には、1,000円を超えるモノもある。
そんなパスタ、食べた事ない。
「……えっと、ミートスースありますか、ね。」
「分かりました。ミートソースですね。」
折橋さんはあっさり返事し、店員さんを呼んだ。
「ボロネーゼを二つ、お願いします。」
「畏まりました。」
ほう、ボロネーゼって言うのか。
私は、もう一度メニュー表を見た。
ボロネーゼは、960円。
はっははぁー、ギリ払える。
「あのっ!」
「はい?」
私は、右手を少し挙げた。
「ここ、私にご馳走させて下さい。」
折橋さんが、目をぱちくりさせている。
「さっきの、お礼をしたくて。」
「はははっ、気にしなくていいのに。」
「いえ。」
ドキドキしながら待つと、折橋さんはあの優しそうな笑顔を返してくれた。
「じゃあ、お言葉に甘えて。」
私は、ほっとした。
「よかった。」
これで、貸し借り無しで、別れられる。
「そっか。」
「えっ?」
「そう言う人なんだぁって、つむぎさんは。」
折橋さんはそう言うと、私をまた柔らかい表情で、じっと見つめてくれた。
なんだろう、この感じ。
「決めた。」
「はい?」
私が前のめりになると、折橋さんも前のめりになった。
「僕と、結婚しませんか?」
頭の中が真っ白になった。
はっ?なに?
私、今、折橋さんにプロポーズされたの?
「もちろん、急なお話ですから、今直ぐなんていいません。一緒に住むのも、週末だけでいい。平日はつむぎさんの自由にしていいですから。あっ、住むところは僕が提供します。」
いろんな情報が一気に入ってきたけれど、一回整理した。
1、結婚は今直ぐではない。
2、一緒に住むのは週末だけ。
3、平日は私の勝手にしていい。
4、家は折橋さんが、用意してくれる。
ん?
一緒に住むのは、週末だけ?
あれ?なんだ、それ。
「あの……週末だけ一緒に住むって……」
「今、流行ってるでしょ?週末婚って。」
週末婚!?
そんなの流行ってるの!?
私の辞書に、そんな言葉、載ってないんですけど!?
「返事はいつでもいいから。考えてみて。」
「はあ……」
そして私は、やってきたボロネーゼを食べてる間も、”週末婚”と言うワードが気になって気になって、仕方なかった。
だからかな。
960円もしたボロネーゼの味、全く覚えていなくて、そんな覚えていないパスタに、今の全財産を使ってしまった。
しかも帰りの景色も、全くただ流れていくだけで、どこを通って帰って来たのか、全く分からなかった。
「今日は、ご馳走様でした。」
「……はい。」
「また、会って貰えますか?」
「……はい。」
「その時は、僕がご馳走しますね。」
「……はい。」
なぜか茫然としていたら、折橋さんに抱きしめられていた。
「えっ?えっ?」
「突然で、驚いたかもしれないけれど、君と結婚したいって言う気持ちは、本当だから。」
心臓が、トクントクンと波打つ。
「一生、君だけだと誓うよ。だから、この話受けて欲しい。」
嬉しくて嬉しくて、私は幸せを感じていた。
「大丈夫。俺、君よりも14歳年上だけど、夜も頑張るから。」
「えっ、あの……」
14歳も年上だったんだ。
若く見えるから、そんなの感じなかった。
しかも、夜も頑張るって……
やだ私、そんな事に、期待して。
「週末だけどね。」
私は思いっきり、折橋さんの体を突き放した。
「いや、やっぱり週末だけって、可笑しいと思うんです。」
「何が?お互い、縛られなくていいじゃん。」
「そう言う問題じゃ、ないと思うんです。」
「じゃあ、どう言う問題?」
どう言う問題って、結婚って毎日、一緒にいたいからするものなんじゃ……
「ああ、週末だけじゃ足りないって事。」
「そ、そうです。」
「やだなぁ、つむぎさん。意外と欲しがり?大丈夫。週末にまとめて愛してあげるから。」
「そっちの話じゃありません!」
そう言っているのに、折橋さんはもうリムジンに乗っている。
「そうだ。これ、俺の連絡先。」
スケジュール帳のメモ用紙に、携帯の番号を書いて渡してくれた折橋さん。
「ちょ、ちょっと!」
「結婚したくなったら、いつでも連絡して。」
「そんな用事で電話するなんて、有り得る訳ないでしょ!」
「じゃあね、つむぎさん!」
そして折橋さんは、リムジンで走り去ってしまった。
「はぁ?」
ただ一人、家の前で取り残された私がいた。
私が結婚?
しかも、来月には無職になるって言うのに、IT会社の社長と?
「有り得ない、有り得ない!」
いくら頭を振っても、折橋さんの優しそうな笑顔が、目の前から離れない。
「週末婚かぁ。」
私は、ため息をついた。
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私は、折橋さんから貰った携帯番号の紙を、カバンの中に押し込んだ。
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