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第3章 嫉妬じゃない、悔しいのよ
④
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の、はずだった。
知らぬ間に、部長の動きは激しくなって、私は受け止められなくなる。
「部……長…………」
「なんだ?」
「もう……駄目………」
快楽の海に溺れた私は、こんなにも激しく求められている事に、幸せを感じていた。
付き合っていなくてもいい。
愛し合っていなくてもいい。
女として、求めてくれれば、それだけで私の存在価値は、あるのだと思っていた。
そして、部長の欲求も果て、私達はベッドに寝そべった。
ピロートークなんて、するはずもなかったのに、いつもよりも激しかったせいか、部長の体に顔を寄せてしまった。
「今日はなんだか、いつもりも情熱的でしたね、部長。」
私がそう言うと、部長は背中を向けた。
「何か、あったんですか?」
それでペラペラと話し出す部長じゃない事は、私は知っていたのに。
「もしかして、また女に、振られたとか?」
尚も黙っている部長に、女の勘が働く。
「心だ。」
否定しない部長に呆れてた私は、同じように彼に背中を向けた。
「なあ、質問は終わりか?」
部長と同じように、私は黙り込んだ。
「じゃあ、こっちから聞くが……高杉は、俺に抱かれていて、俺に気持ちが動くか?」
「いいえ。」
否定したのは、これからも体の関係を、続けたかったからだ。
「そうか。女って、そう言う生き物なのかな。」
少し元気のない部長に、私は体を起こした。
「心と、セックスしたんですか?」
「いいや。」
「じゃあ、未遂?」
「ああ。抱いてもいいけれど、気持ちはやれないと言われた。」
ショックだった。
今日、私をあんなに激しく抱いたのは、心を抱けなかったから?
だから、だから……
私は、ベッドから出た。
「高杉?」
返事もせずに、服を着た。
「泊っていかないのか?」
ベッドから出た部長が、私の腕を掴んだ。
「放して!」
すると後ろから、部長が抱きしめてくれた。
「悪かった。」
いつもの釈明。
部長は、女に責められると、直ぐに謝る。
「高杉を抱いている時は、他の女なんて、一切考えているつもりはなかったんだが……」
「えっ?」
私は振り返って、部長を見上げた。
今、何て言った?
心を、他の女って言った?
「高杉がそう感じるのなら、どこか気づかないうちに、倉本を意識していたのかもしれない。」
私はカッとなって、部長の頬を打った。
茫然と立ち尽くす部長は、ずっと下を向いている。
仕事だったら、絶対に許されないと思う。
それなのに、部長は一言も私を責めない。
「ううっ……」
声を出しながら、床に崩れ落ちた。
私が最初から体だけの関係を望んだのは、誰も私を愛してくれないから。
最初から気持ちがないと、分かっているのなら、相手にいざそう言われても、傷つかないと思ったから。
でも、ダメだったみたい。
やっぱりどうしても、私の方が傷つく。
それは私自身が誰よりも、愛されたいと願っているからだ。
知らぬ間に、部長の動きは激しくなって、私は受け止められなくなる。
「部……長…………」
「なんだ?」
「もう……駄目………」
快楽の海に溺れた私は、こんなにも激しく求められている事に、幸せを感じていた。
付き合っていなくてもいい。
愛し合っていなくてもいい。
女として、求めてくれれば、それだけで私の存在価値は、あるのだと思っていた。
そして、部長の欲求も果て、私達はベッドに寝そべった。
ピロートークなんて、するはずもなかったのに、いつもよりも激しかったせいか、部長の体に顔を寄せてしまった。
「今日はなんだか、いつもりも情熱的でしたね、部長。」
私がそう言うと、部長は背中を向けた。
「何か、あったんですか?」
それでペラペラと話し出す部長じゃない事は、私は知っていたのに。
「もしかして、また女に、振られたとか?」
尚も黙っている部長に、女の勘が働く。
「心だ。」
否定しない部長に呆れてた私は、同じように彼に背中を向けた。
「なあ、質問は終わりか?」
部長と同じように、私は黙り込んだ。
「じゃあ、こっちから聞くが……高杉は、俺に抱かれていて、俺に気持ちが動くか?」
「いいえ。」
否定したのは、これからも体の関係を、続けたかったからだ。
「そうか。女って、そう言う生き物なのかな。」
少し元気のない部長に、私は体を起こした。
「心と、セックスしたんですか?」
「いいや。」
「じゃあ、未遂?」
「ああ。抱いてもいいけれど、気持ちはやれないと言われた。」
ショックだった。
今日、私をあんなに激しく抱いたのは、心を抱けなかったから?
だから、だから……
私は、ベッドから出た。
「高杉?」
返事もせずに、服を着た。
「泊っていかないのか?」
ベッドから出た部長が、私の腕を掴んだ。
「放して!」
すると後ろから、部長が抱きしめてくれた。
「悪かった。」
いつもの釈明。
部長は、女に責められると、直ぐに謝る。
「高杉を抱いている時は、他の女なんて、一切考えているつもりはなかったんだが……」
「えっ?」
私は振り返って、部長を見上げた。
今、何て言った?
心を、他の女って言った?
「高杉がそう感じるのなら、どこか気づかないうちに、倉本を意識していたのかもしれない。」
私はカッとなって、部長の頬を打った。
茫然と立ち尽くす部長は、ずっと下を向いている。
仕事だったら、絶対に許されないと思う。
それなのに、部長は一言も私を責めない。
「ううっ……」
声を出しながら、床に崩れ落ちた。
私が最初から体だけの関係を望んだのは、誰も私を愛してくれないから。
最初から気持ちがないと、分かっているのなら、相手にいざそう言われても、傷つかないと思ったから。
でも、ダメだったみたい。
やっぱりどうしても、私の方が傷つく。
それは私自身が誰よりも、愛されたいと願っているからだ。
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