不誠実なカラダ 【R18】

日下奈緒

文字の大きさ
上 下
9 / 12
第3章 嫉妬じゃない、悔しいのよ

しおりを挟む
の、はずだった。

知らぬ間に、部長の動きは激しくなって、私は受け止められなくなる。

「部……長…………」

「なんだ?」

「もう……駄目………」

快楽の海に溺れた私は、こんなにも激しく求められている事に、幸せを感じていた。


付き合っていなくてもいい。

愛し合っていなくてもいい。

女として、求めてくれれば、それだけで私の存在価値は、あるのだと思っていた。


そして、部長の欲求も果て、私達はベッドに寝そべった。

ピロートークなんて、するはずもなかったのに、いつもよりも激しかったせいか、部長の体に顔を寄せてしまった。

「今日はなんだか、いつもりも情熱的でしたね、部長。」

私がそう言うと、部長は背中を向けた。

「何か、あったんですか?」

それでペラペラと話し出す部長じゃない事は、私は知っていたのに。


「もしかして、また女に、振られたとか?」

尚も黙っている部長に、女の勘が働く。

「心だ。」

否定しない部長に呆れてた私は、同じように彼に背中を向けた。


「なあ、質問は終わりか?」

部長と同じように、私は黙り込んだ。

「じゃあ、こっちから聞くが……高杉は、俺に抱かれていて、俺に気持ちが動くか?」

「いいえ。」

否定したのは、これからも体の関係を、続けたかったからだ。

「そうか。女って、そう言う生き物なのかな。」

少し元気のない部長に、私は体を起こした。


「心と、セックスしたんですか?」

「いいや。」

「じゃあ、未遂?」

「ああ。抱いてもいいけれど、気持ちはやれないと言われた。」


ショックだった。

今日、私をあんなに激しく抱いたのは、心を抱けなかったから?

だから、だから……

私は、ベッドから出た。

「高杉?」

返事もせずに、服を着た。

「泊っていかないのか?」

ベッドから出た部長が、私の腕を掴んだ。


「放して!」

すると後ろから、部長が抱きしめてくれた。

「悪かった。」

いつもの釈明。

部長は、女に責められると、直ぐに謝る。

「高杉を抱いている時は、他の女なんて、一切考えているつもりはなかったんだが……」

「えっ?」

私は振り返って、部長を見上げた。


今、何て言った?

心を、他の女って言った?

「高杉がそう感じるのなら、どこか気づかないうちに、倉本を意識していたのかもしれない。」

私はカッとなって、部長の頬を打った。

茫然と立ち尽くす部長は、ずっと下を向いている。


仕事だったら、絶対に許されないと思う。

それなのに、部長は一言も私を責めない。


「ううっ……」

声を出しながら、床に崩れ落ちた。

私が最初から体だけの関係を望んだのは、誰も私を愛してくれないから。

最初から気持ちがないと、分かっているのなら、相手にいざそう言われても、傷つかないと思ったから。

でも、ダメだったみたい。

やっぱりどうしても、私の方が傷つく。



それは私自身が誰よりも、愛されたいと願っているからだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鬼上官と、深夜のオフィス

99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」 間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。 けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……? 「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」 鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。 ※性的な事柄をモチーフとしていますが その描写は薄いです。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

私を溺愛してくれたのは同期の御曹司でした

日下奈緒
恋愛
課長としてキャリアを積む恭香。 若い恋人とラブラブだったが、その恋人に捨てられた。 40歳までには結婚したい! 婚活を決意した恭香を口説き始めたのは、同期で仲のいい柊真だった。 今更あいつに口説かれても……

優しい紳士はもう牙を隠さない

なかな悠桃
恋愛
密かに想いを寄せていた同僚の先輩にある出来事がきっかけで襲われてしまうヒロインの話です。

絶体絶命!!天敵天才外科医と一夜限りの過ち犯したら猛烈求愛されちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
絶体絶命!!天敵天才外科医と一夜限りの過ち犯したら猛烈求愛されちゃいました

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

一夜限りのお相手は

栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月

処理中です...