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新たな生活

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しばらくして、私は生理が来ていない事を確信した。

「じゃじゃーん。」

事前に買っていた妊娠検査薬を出し、トイレに向かう。

「できてるといいなぁ。」

検査薬に尿をかけ、結果を待つ。

結果は見事、陽性だった。

「やったあ!」

トイレの中で、私は万歳をしてしまった。


「あー、明日には産婦人科に行こうかな。」

トイレから出てくると、スマホが鳴っているのが聞こえた。

「はいはい、どなたでしょう。」

見れば、画面に圭也さんの文字が。

私はウキウキした。

どうしよう。まだ言わない方がいいよね。


「はい、圭也さん。」

だが、雰囲気は違った。

『一条圭也さんの奥様ですね。』

「……はい。」

『塚田病院の看護師の丸山と申します。』

「看護師さん?」

『一条圭也さんが、お仕事中に怪我をされて、病院に運ばれています。』

「えっ……」

『できれば、こちらに来て頂きたいのですが……』

「はい、今すぐ行きます!」

私は小さなバッグに、必要な物を詰め込むと、急いで家を出た。


怪我って何?

どんな容体?

自転車を漕いでいる時に、隣の奥さんの言葉を思い出した。

「ううん。大丈夫。」

私は、首を横に振った。

きっと、圭也さんは大丈夫。


病院に着いて、受付に病室を聞いた。

「一条圭也さんは、集中治療室にいます。こちらへどうぞ。」

「集中治療室……」

ただの怪我じゃないの?

不安が過る。

途中で看護師さんにバトンタッチされ、集中治療室に入った。

そこには、何本も管が入っている圭也さんの姿があった。

「圭也さん?」

ゆっくりと、圭也さんに近づく。

顔色が悪い。

「ねえ、圭也さん。起きて。」

圭也さんを揺らしてみる。

「圭也さん!」

すると、看護師さんが私の背中をそっと、撫でてくれた。

「目が覚まされましたら、教えて下さい。」

「えっ……」

看護師さんはうんと頷くと、行ってしまった。


私は椅子に座ると、圭也さんの手を握った。

胸の辺りからちらっと見える包帯。

腕にも、頭にも巻いてある。

良く見れば、痛々しい。


「圭也さん、今日ね。妊娠検査薬を試してみたの。」

目を閉じている圭也さんに、話しかけた。

「そうしたらね、陽性だって。赤ちゃん、また私達の間に来てくれたのよ。」

そんな話をしたら、涙が出て来た。

「だからお願い、目を覚まして。」

必死に圭也さんに訴えた。

「死なないで!圭也さん!」

このまま、赤ちゃんができた事も知らずに死ぬなんて、ダメだよ!

「誰が死ぬって?」

私は圭也さんの目を見た。

目が開いている。

「圭也さん?」

「ちょっと眠くて寝てただけだよ。」

でも、少し話しただけでも、辛そうだ。


「それで?赤ちゃんができたんだって?」

「うん、うん。そうだよ。圭也さん。」

「紗良と子供がいるのに、こんなところで、死んでたまるか。」

すると圭也さんは、ニコッと笑った。

「結婚する時、言っただろ。紗良を守るって。」

「圭也さん……」


その後、看護師さんを呼んだ。

看護師さんは、半ば疲労で寝ている事が、分かっていたらしい。

「まあ、1カ月もあれば退院できるでしょ。」

呑気に言っていた看護師さん。

妊娠おめでとうございますと言われた。


その後、産婦人科に行って、妊娠は確定。

母子手帳も発行してもらった。


お義母さんはと言うと。

「もう何も言わないわ。女の子でもいいわよ。でも、男の子ができるまで、何人でも産んで頂戴。」

あくまで、孫を警視総監にしたいらしい。


そして妊娠中。

時間があると、いつも圭也さんと散歩をした。

退院したばかりの頃は、リハビリも兼ねて。

「でも、よかった。無事退院できて。」

「ご心配かけました。」

今でもあの怪我は、圭也さんの弱点になっている。

「本当に死ぬかと思ったんだからね。」

すると圭也さんは、私を抱き寄せた。

「だから、死なないよ。紗良を置いて。」


お見合いをした時は、なんでこんな人となんかと思ったけれど。

今は、圭也さんと結婚してよかった。


「早く、産まれてくればいいな。」

「まだまだだよ。」

これからもずっと、圭也さんとの甘く切ない結婚生活は、続いていくのだろう。


ー End -

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