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幸せとは
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圭也さんの部下が、家を訪れてから、1か月後。
私は、カレンダーを見て、ふと思った。
「あれ?今月、生理来た?」
いつも28日周期で、遅れた事もない。
でも……
「まあ、1日くらい遅れるか。」
そんな風に、軽く考えていた。
でも、次の日になっても、次の日になっても、生理は来ない。
ストレス⁉
結婚生活へのストレスが、こんなところにきているの?
そんな時、妹の理良から電話がきた。
『これから、お茶しない?』
「うーん。どうしようかな。」
もし、ストレスで生理が遅れているのであれば、理良に愚痴を言って、ストレス解消してこようかな。
『どうしたの?いつもは直ぐにノッテくるのに。』
「うん。実は、生理が遅れていて。」
『なにそれ、妊娠?』
妊娠⁉
えっ、妊娠⁉
「ええっ!?」
『何、驚いてんの?そういう事してれば、子供できたって、おかしくないでしょ。』
頭の中が真っ白になった。
まさか、あのソファーでの事?
「ごめん、理良。また、連絡する。」
そう言って、電話を切った。
まさか、まさか、まさか!
私は、以前行った事のある、女医の産婦人科に行った。
妊娠検査薬と、内診を受けて、ドキドキで結果を待った。
「妊娠されていますね。」
「はああああ!」
心臓の鼓動が、全身に伝わってくる。
「エコーでは、まだ小さくて見えないのですが、妊娠検査薬で陽性です。」
「子供が……できたんですか。」
「ええ。間違いないでしょう。」
口を開けて、ポカーンとしてしまった。
私が、母親になる。
息を何度も飲んだ。
それからの、先生の説明は、よく聞いてなかった。
また1か月後に、妊婦健診に来て下さいだけで。
そして、帰り道。
不思議な気持ちで、足元がふわふわした。
このお腹の中に、新しい命が宿っている。
「ふふふ。」
ニヤついたら、すれ違う人に可笑しな目で見られた。
圭也さんはどうせ、今日も帰りが遅いだろう。
メールで知らせておけばいいか。
「何て、入れようかな。」
笑っちゃあ、いけないんだけど。
笑みを隠せない。
【圭也さん。来年には、パパになるよ。】
送信ボタンを押して、ふふふと笑った。
その時、突然電話が鳴った。
圭也さんからだ。
「はい、圭也さん?」
『本当に?俺、父親になるの?』
圭也さんも、喜んでくれている。
「そうだよ。今日、病院行って来て、間違いないでしょうって。」
『やった……やったあ!』
電話の奥で、圭也さんが声を上げている。
よかった。
「男の子がいいんだよね。」
『ああ、跡継ぎの件?いいよ、元気で産まれてくれればどちらでも。』
「あれ?跡継ぎが欲しくて、お見合いしたんじゃなかった?」
こんな皮肉を言えるのも、幸せだからだ。
『最初はそうだけど、紗良を見たら、そんな考え吹き飛んだよ。』
「じゃあ、何でそんな事言ったの?」
『そう言わないと、結婚してくれないと思ったから。』
幸せって、やってくるものじゃなくて、内側からじんわり感じるものなんだね。
この歳になって、ようやく分かった。
「家族にも、言っておくね。」
『ああ、俺も両親に、報告しておくよ。』
きっと圭也さんの両親も、喜ぶだろうなぁ。
私はこの時、幸せの絶頂にあった。
数日後。
我が家に、圭也さんのお母さんが、訪ねて来た。
「まずは、妊娠おめでとう。」
「ありがとうございます。」
この日は、圭也さんのお休みで、一緒にお母さんを出迎えた。
「はい、これ。ベビー服に、おむつに、沐浴セット。」
「そんなに買って来たのか?早いんじゃない?」
圭也さんはそう言いながら、お母さんからのプレゼントを開けた。
すると、中身は全部青色ばかりだ。
「他の色はないの?」
「ないわよ。どうせ、男の子でしょ。」
私と圭也さんは、顔を見合わせた。
「まだ、男の子だって、決まったわけじゃないよ。」
「いいえ、男の子です!」
お母さんは、そう言い張った。
「もし、女の子だったら?」
「気合で、男の子にするのよ。」
「はあ?」
圭也さんは、呆れていた。
「私の時だって、お姑さんにそう言われたんだから。気合を入れて男の子!って願ったら、圭也が産まれたのよ。」
静かにお茶を飲むお母さんに、私は半分顔が引きつっていた。
私は、カレンダーを見て、ふと思った。
「あれ?今月、生理来た?」
いつも28日周期で、遅れた事もない。
でも……
「まあ、1日くらい遅れるか。」
そんな風に、軽く考えていた。
でも、次の日になっても、次の日になっても、生理は来ない。
ストレス⁉
結婚生活へのストレスが、こんなところにきているの?
そんな時、妹の理良から電話がきた。
『これから、お茶しない?』
「うーん。どうしようかな。」
もし、ストレスで生理が遅れているのであれば、理良に愚痴を言って、ストレス解消してこようかな。
『どうしたの?いつもは直ぐにノッテくるのに。』
「うん。実は、生理が遅れていて。」
『なにそれ、妊娠?』
妊娠⁉
えっ、妊娠⁉
「ええっ!?」
『何、驚いてんの?そういう事してれば、子供できたって、おかしくないでしょ。』
頭の中が真っ白になった。
まさか、あのソファーでの事?
「ごめん、理良。また、連絡する。」
そう言って、電話を切った。
まさか、まさか、まさか!
私は、以前行った事のある、女医の産婦人科に行った。
妊娠検査薬と、内診を受けて、ドキドキで結果を待った。
「妊娠されていますね。」
「はああああ!」
心臓の鼓動が、全身に伝わってくる。
「エコーでは、まだ小さくて見えないのですが、妊娠検査薬で陽性です。」
「子供が……できたんですか。」
「ええ。間違いないでしょう。」
口を開けて、ポカーンとしてしまった。
私が、母親になる。
息を何度も飲んだ。
それからの、先生の説明は、よく聞いてなかった。
また1か月後に、妊婦健診に来て下さいだけで。
そして、帰り道。
不思議な気持ちで、足元がふわふわした。
このお腹の中に、新しい命が宿っている。
「ふふふ。」
ニヤついたら、すれ違う人に可笑しな目で見られた。
圭也さんはどうせ、今日も帰りが遅いだろう。
メールで知らせておけばいいか。
「何て、入れようかな。」
笑っちゃあ、いけないんだけど。
笑みを隠せない。
【圭也さん。来年には、パパになるよ。】
送信ボタンを押して、ふふふと笑った。
その時、突然電話が鳴った。
圭也さんからだ。
「はい、圭也さん?」
『本当に?俺、父親になるの?』
圭也さんも、喜んでくれている。
「そうだよ。今日、病院行って来て、間違いないでしょうって。」
『やった……やったあ!』
電話の奥で、圭也さんが声を上げている。
よかった。
「男の子がいいんだよね。」
『ああ、跡継ぎの件?いいよ、元気で産まれてくれればどちらでも。』
「あれ?跡継ぎが欲しくて、お見合いしたんじゃなかった?」
こんな皮肉を言えるのも、幸せだからだ。
『最初はそうだけど、紗良を見たら、そんな考え吹き飛んだよ。』
「じゃあ、何でそんな事言ったの?」
『そう言わないと、結婚してくれないと思ったから。』
幸せって、やってくるものじゃなくて、内側からじんわり感じるものなんだね。
この歳になって、ようやく分かった。
「家族にも、言っておくね。」
『ああ、俺も両親に、報告しておくよ。』
きっと圭也さんの両親も、喜ぶだろうなぁ。
私はこの時、幸せの絶頂にあった。
数日後。
我が家に、圭也さんのお母さんが、訪ねて来た。
「まずは、妊娠おめでとう。」
「ありがとうございます。」
この日は、圭也さんのお休みで、一緒にお母さんを出迎えた。
「はい、これ。ベビー服に、おむつに、沐浴セット。」
「そんなに買って来たのか?早いんじゃない?」
圭也さんはそう言いながら、お母さんからのプレゼントを開けた。
すると、中身は全部青色ばかりだ。
「他の色はないの?」
「ないわよ。どうせ、男の子でしょ。」
私と圭也さんは、顔を見合わせた。
「まだ、男の子だって、決まったわけじゃないよ。」
「いいえ、男の子です!」
お母さんは、そう言い張った。
「もし、女の子だったら?」
「気合で、男の子にするのよ。」
「はあ?」
圭也さんは、呆れていた。
「私の時だって、お姑さんにそう言われたんだから。気合を入れて男の子!って願ったら、圭也が産まれたのよ。」
静かにお茶を飲むお母さんに、私は半分顔が引きつっていた。
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