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波乱の幕開け

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それから数日後。

圭也さんが、仕事から早く帰って来た。


「お帰りなさい、今日は早かったのね。」

玄関で出迎えると、圭也さんの後ろに人が立っていた。

「実は、部下が遊びに来たいと言い出して。」

「ええっ⁉」

急に?という事は、この時間だから、夕食も食べて行く?

献立は?材料ある?そもそも何人?


「えっと、何人くらい?」

「男二人に女一人。」

「三人だったら、大丈夫かも。」

「ごめんな。」

圭也さんは、後ろ三人に入れと言った。


「こんばんは。ご主人には、いつもお世話になっています。部下の近藤です。」

「早坂です。」

そして、私の事を上から下まで嘗め回している女性がいた。

「佐藤です。」

「主人がいつもお世話になっています。さあ、どうぞ。入って下さい。」

ちょっと引っかかる事はあるけれど、大丈夫大丈夫。

「適当に座っててくださいね。今、夕食準備しますから。」

「うわー、やったぁ!」

何だ、嬉しそうじゃん。

「最初、ビールある?」

「あっ、あるかも。」

本当は私が飲もうと思って買っておいた、缶ビール。

仕方ない!いいところ、見せる為だ。

私は、思い切って冷蔵庫の扉を開けて、缶ビールを取り出した。


「これ、飲んで下さい。」

「ありがとうございます!」

嬉しそうに缶ビールを開ける皆。

あー、私の缶ビールが。

そして、そんな事を思っている場合ではない。

献立。どうするよ。


再び冷蔵庫を開けて、目についたのは、お肉。

よし、これを焼こう。

付け合わせにする野菜も取り出して、適当にカット。

よかった。肉は焼くだけだから、簡単だった。

とは言っても、一品だけじゃ足りないか。

他はと。

冷蔵庫とにらめっこしながら、肉を焼いている間に、次々と料理をしていく。

「お待たせしました!」

出来上がった料理を、テーブルの上に置くと、皆から歓声の声が上がる。

「美味しそう!」

「いただきまーす。」

「あっ、ご飯とかありますか?」

「はい、ご飯ね。」

自分用に炊いていてよかった。


ビール飲みながら、肉とご飯。

皆、食べ盛りのように食べている。

こうして見ると、可愛いな。


「皆さんは、おいくつなんですか?」

「23です。」

「警察官になって、2年目です。」

明るいな。

圭也さんから伝わる責任の重さとか、感じない。

憧れの職業に就いて、ウキウキしてんのかな。


「美味い!さすがです!奥さん。」

奥さん!あまり言われた事のないワードに、ニヤッとする。

「いいですね。毎日、こんな夕食食べれるなんて。」

「ははは。」

何がはははだ。

夕食は、はっきり言って、どうしているのか分からない。

ゴミ箱には、コンビニのレシートが大量に捨ててあったから、たぶんコンビニ弁当で済ませているんだろうけど。


「奥さん、ご飯おかわりできますか?」

「はい。」

お茶碗を回収し、キッチンへと向かった。

「俺、トイレ行ってくる。」

圭也さんが立ち上がり、テーブルには3人だけになった。


「奥さん、いい人だな。」

「そう?思ったよりも普通じゃない?」

佐藤さんという女性の言葉に、ピクッとなった。

「あの一条さんの奥さんだから、もっと綺麗な人だと思ってた。」

おいおい、美人じゃなくて悪かったな!

「料理もとりわけ、美味しいってものじゃないし。」

はあああ?

何なの?あの佐藤って言う子。

どこまで私の文句を言うの?


私、何かした?

初対面のはずですけど⁉


すると他の男性二人が、笑い合っている。

「佐藤は、一条さんの事好きだからな。」


その瞬間、頭が真っ白になった。

「何がお見合いよ。愛情もないくせによく奥様面できるわ。」

私はしゃもじを、勢いよくご飯の中に突き刺した。


何?圭也さんを好きだと?

愛情もないのに、奥様面?

言いたい放題、言ってくれるわね。


その時、圭也さんがトイレから帰って来た。

私も、おかわりのご飯を、三人に渡す。

そしてちらっと佐藤さんを見ると、嬉しそうに圭也さんを見つめている。


あーあ。圭也さんを好きか。

そんな人がいても、仕方ないよね。

だって、こんなに素敵な人なんだもん。


「ところで奥さん、一条さんのどこに惚れたんですか!」

「ほっほーい!」

ビールに酔いしれたのか、男二人が悪酔いし始めた。

「どこって……頼りになるところです。」

「イエーイ!」

この日の夜は、皆の陽気に負けて、質問攻めにあった。
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