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第6話 嘘の住みか
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すると青蘭は、黄杏と一緒に、月夜を見上げた。
「黄杏さん。私はね、この国に人質として、来たのよ。」
「人質?王は、一人残されたあなた様を、可哀想に思って連れてきたと。」
「まあ。そんな事を、王はあなたに話しているの?」
青蘭は、怒っているのか、驚いているのかも分からない。
だが、自分の事を新しい妃に話しているのは、どことなく気にかけているようだった。
「……信寧王に会ったのは、父が殺されたと聞いて、自ら敵に向かって行った兄を、探していた時。炎が燃え盛る中、なかなか兄を見つけられなくて……」
それは信志から話を聞いていて、黄杏も知っていた。
「もう、兄も殺されてしまったのかもしれないと、途方に暮れていたの。そこへ、信寧王が現れた。」
そう話す青蘭の表情は、冷たかった。
「もちろん、捕まれば死ぬ覚悟でいたから、王の手を振り払ったのだけど、王は私がついてくるまで、ここを動かないと、炎の中、じっと待っていて……」
青蘭を見て、一目で気に入ってしまった信志の顔が、炎の中に浮かんだ。
「ここに来た時も、死に損ないだと思っていた。生きているのか、死んでいるのか、分からないまま時が過ぎて……王から、妃に迎えたいと言われた時も、何の感情もなかった。王を慕う気持ちはなかったけれど、命を救ってくれたご恩は、返さないといけないなんて、初めは受け入れたけれど。」
そう語る青蘭を見て、黄杏は悔しくなってきた。
信志は、そうだと知っていても、青蘭を想っていたのだ。
叶わなくても、気持ちが通じなくても、この方の元へ通っていたのだ。
「黄杏さん。他の妃の元へ王が行って、寂しくないのかと、お聞きになったわね。」
「はい。」
「答えはいいえよ。もう、寂しいと思う気持ちも、失せてしまった。だから、王が私の元へ来たとしても、それは形式のようなものだから、気にしないで頂戴。」
“はい”とは言えなかった。
信志の気持ちを考えれば、形式だなんて。
言葉を返さない黄杏に、何も言わずに去っていった青蘭。
月明かりの中、愛し合うと言う事は、いかに奇跡的な事なのか。
黄杏は益々、奇跡的に出会った信志に、会いたくて会いたくて仕方がなかった。
だが翌日、信志が寝屋に選んだのは、黄杏の屋敷ではなく、青蘭の屋敷だった。
今日も来ない。
黄杏は、屋敷の窓から、青蘭の屋敷を見てみた。
時間的に、夕食が終わり、屋敷を訪れる頃だった。
青蘭は、久々の王の訪問に、屋敷の玄関で待っていた。
王が玄関の前に立つと、青蘭は嬉しそうに、王に抱きつく。
抱きつかれた王も、満更ではなく、二人はしばらく離れようとはしない。
ー 王を慕う気持ちはなく…… ー
昨日の夜の青蘭の言葉が、黄杏の耳に甦る。
「嘘つき……」
自分は、人質としてやってきたと、王への気持ちが、全くないように言っていた青蘭。
だが今の青蘭は、王と心を通わせているではないか。
黄杏は窓を閉めると、寝台へと倒れ混こんだ。
「嘘つき、嘘つき、嘘つき!」
どんなに愛していても、王は自分だけのものにならない。
なるべく早く戻ると言った信志も、戻ってきてはくれない。
「みんな、嘘つき!」
悔しくて悔しくて、泣き叫んだ黄杏は、そのまま寝入ってしまった。
どれほど経っただろう。
女人達も下がり、静かな夜だけが、黄杏を取り囲んだ。
「水、ないかしら。」
起き上がった黄杏は、隣の部屋に、水がないか探したが、この日だけは女人が用意していなかったのか、机の上になかった。
「はぁ……」
諦めようとしても、泣きじゃくったせいか、やたら喉が乾く。
「確か外に、井戸があったはず。」
黄杏は、杯を持って外に出た。
白蓮と紅梅の屋敷は、もう灯が落ちていると言うのに、青蘭の屋敷だけは、煌々と明かりが着いていた。
そこへ護衛をしていた兵士が、ニヤニヤしながら歩いてきた。
「今日は久しぶりに、青蘭様の甘い声が聞けたよ。」
「あの方、色気たんまりだから、王もなかなか満足しないよな。」
そう言って、イヒヒヒと下品な笑いをする。
「あーあ。今日も遅くまで、励むなぁ。」
「青蘭様の時は、いつもそうだって。一晩中灯が落ちない時だってあるよ。紅梅様の時はすぐに消えるのになぁ。」
黄杏は青蘭と信志が、一糸纏わぬ状態で目合っているのを想像するだけで、頭がおかしくなりそうだった。
「井戸……早く井戸を探さなきゃ……」
気を確かに持つ為に、さ迷うように井戸を探した。
「あそこだ。」
やっと見つけた井戸の蓋を開け、水を汲むと、一気に飲み干した。
そして、生き返ったような気がした黄杏の耳に、卑猥な声が届く。
「あぁ……いい……もっと……もっと!」
黄杏は、耳を塞いだ。
どこからこの声は、聞こえてくるのか。
辺りを見回すとそこは、他でもない青蘭の屋敷の脇だった。
急いで立ち去ろうとする黄杏の耳に、また卑猥な声が聞こえる。
「もう……だめぇ……信志様ぁあ!」
「青蘭……我慢しなくてもいいよ……」
黄杏はそのまま引かれるように、青蘭の屋敷の窓を覗いた。
そこはちょうど、青蘭の寝台になっているようで、異国のエキゾチックな中に、官能的なお香の臭いがする。
その上で何も纏わぬ信志が座っており、その上に裸の青蘭が乗っている。
青蘭はたわわな胸が揺れる程、激しく体を動かしているが、何よりも許せなかったのは、そんな青蘭の滑らかな肌を貪るように、口付けている信志だった。
黄杏は、近くにあった石を、青蘭の屋敷に投げようとした。
だが当たれば、何事かと大騒ぎになる。
「くっ……うぅ……」
胸が苦しくて、黄杏は拾った石を、地面に強く叩きつけた。
「はぁはぁはぁ……」
あんなに、毎晩情を交わしていたと言うのに。
あの甘美な言葉は、全て嘘だったのだ。
失意の中で、自分の屋敷に戻ろうとした黄杏の目に、今度は、武術の稽古をしている紅梅の姿が写った。
ついこの前、他の妃に行くようにと仕向けろと言われ、それに従ったせいで、今こんなに苦しんでいる。
今だけは、会いたいくない。
黄杏は、紅梅に見つからないように、忍び足で戻ろうとした。
「こんな時間に、何してるの?」
だが黄杏は、あっさり紅梅に、見つかってしまった。
「……水を飲みに。」
「へえ。それでもしかして、井戸に行ったの?」
紅梅は、刀の素振りをしながら、次から次へと質問してくる。
「ええ……」
「お馬鹿さんね。そのついでに、見たくもないものまで見てしまって。」
黄杏は、紅梅のその言葉が、気になって仕方なかった。
「知っているの?」
「知ってるわよ。お妃になって、何年になると思ってるの?」
そんな事は、説明されてないから、分からないとしか言えないが、少なくても自分だけ、このモヤモヤしている気持ちを、持っている訳ではないのだ。
「紅梅さん。」
「何?」
「紅梅さんは、どうして王の妃になったの?」
自分はどんどん、黄杏に質問をするくせに、黄杏の質問には、答えようとしない紅梅。
「……女隊の隊長を、やってらしたんでしょ?辞めるのは、嫌ではなかった?」
「全然。女隊の隊長をしていたのは、王に近づく為だから。」
「えっ!?」
驚いた黄杏は、口を両手で塞ぐが、紅梅ならやりかねないと思った。
「私の父が、王の近臣だと言う事は、知っているんでしょ?」
「……はい。」
「そのお陰でね。小さい頃から、王の事を知っていたわ。話しかけられる事も多くて。私の事は、親戚の女の子ぐらいにしか思ってなかったようだけど、私は好きだった。私の初恋の人よ。」
あのガサツそうな紅梅の口から、初恋の人という甘酸っぱい言葉が出てくるなんて。
黄杏は、急に紅梅の事が可愛らしく見えて、ニンマリした。
「ある日。王と武術の試合をしたの。勝ったら、お妃にして欲しいと頼んだわ。必死で攻めて、最後の最後で王に勝った。その結果、これよ。」
紅梅は、高そうなシルクの寝間着を、黄杏に見せた。
「私が欲しかったのは、こんな物じゃなかったのに。本当に欲しい物って、手に入らないのね。」
強がっていた紅梅が、ほんの少しだけ、弱い部分を見せた瞬間だった。
黄杏は、勝手に親近感を覚え、紅梅の近くにあった、大きな石に、腰を降ろした。
「紅梅さんは、王のお子が、欲しいのね。」
「王のお子も欲しいけれど、一番欲しいのは、王の愛情だけどね。」
紅梅もため息をつきながら、黄杏の隣に座った。
「青蘭さんは、王にお気持ちは向いていないと、仰っていたけれど、王と情を交わしている姿を見る限りでは、そんなふうに思えなかった。」
慕ってもいない相手に、あんなに激しく求めるだろうか。
「あの人はね。好きものなのよ。」
「す、好きもの?」
「要するに濡れ事が、好きなのよ。」
あの、儚げな青蘭が?
あまりにも衝撃的で、言葉も出ない。
「一説では、男女の交わりができなくなるから、お子をわざと作らないって言う噂もあるくらい。」
「えっ!?」
そんな世界があるなんて、田舎で育った黄杏には、理解できない世界だ。
「あの二人、心は交わらないけど、体の相性はいいみたい。青蘭さんが絶頂に達してるの、何度か聞いた事、あるもの。」
「ぜ、絶頂!?」
「シー!声が大きい!」
黄杏と紅梅は、慌てて周りを見た。
「ったく。子供じゃないんだから、そんな事で驚かないでよ。」
「ごめんなさい……」
「黄杏さん。私はね、この国に人質として、来たのよ。」
「人質?王は、一人残されたあなた様を、可哀想に思って連れてきたと。」
「まあ。そんな事を、王はあなたに話しているの?」
青蘭は、怒っているのか、驚いているのかも分からない。
だが、自分の事を新しい妃に話しているのは、どことなく気にかけているようだった。
「……信寧王に会ったのは、父が殺されたと聞いて、自ら敵に向かって行った兄を、探していた時。炎が燃え盛る中、なかなか兄を見つけられなくて……」
それは信志から話を聞いていて、黄杏も知っていた。
「もう、兄も殺されてしまったのかもしれないと、途方に暮れていたの。そこへ、信寧王が現れた。」
そう話す青蘭の表情は、冷たかった。
「もちろん、捕まれば死ぬ覚悟でいたから、王の手を振り払ったのだけど、王は私がついてくるまで、ここを動かないと、炎の中、じっと待っていて……」
青蘭を見て、一目で気に入ってしまった信志の顔が、炎の中に浮かんだ。
「ここに来た時も、死に損ないだと思っていた。生きているのか、死んでいるのか、分からないまま時が過ぎて……王から、妃に迎えたいと言われた時も、何の感情もなかった。王を慕う気持ちはなかったけれど、命を救ってくれたご恩は、返さないといけないなんて、初めは受け入れたけれど。」
そう語る青蘭を見て、黄杏は悔しくなってきた。
信志は、そうだと知っていても、青蘭を想っていたのだ。
叶わなくても、気持ちが通じなくても、この方の元へ通っていたのだ。
「黄杏さん。他の妃の元へ王が行って、寂しくないのかと、お聞きになったわね。」
「はい。」
「答えはいいえよ。もう、寂しいと思う気持ちも、失せてしまった。だから、王が私の元へ来たとしても、それは形式のようなものだから、気にしないで頂戴。」
“はい”とは言えなかった。
信志の気持ちを考えれば、形式だなんて。
言葉を返さない黄杏に、何も言わずに去っていった青蘭。
月明かりの中、愛し合うと言う事は、いかに奇跡的な事なのか。
黄杏は益々、奇跡的に出会った信志に、会いたくて会いたくて仕方がなかった。
だが翌日、信志が寝屋に選んだのは、黄杏の屋敷ではなく、青蘭の屋敷だった。
今日も来ない。
黄杏は、屋敷の窓から、青蘭の屋敷を見てみた。
時間的に、夕食が終わり、屋敷を訪れる頃だった。
青蘭は、久々の王の訪問に、屋敷の玄関で待っていた。
王が玄関の前に立つと、青蘭は嬉しそうに、王に抱きつく。
抱きつかれた王も、満更ではなく、二人はしばらく離れようとはしない。
ー 王を慕う気持ちはなく…… ー
昨日の夜の青蘭の言葉が、黄杏の耳に甦る。
「嘘つき……」
自分は、人質としてやってきたと、王への気持ちが、全くないように言っていた青蘭。
だが今の青蘭は、王と心を通わせているではないか。
黄杏は窓を閉めると、寝台へと倒れ混こんだ。
「嘘つき、嘘つき、嘘つき!」
どんなに愛していても、王は自分だけのものにならない。
なるべく早く戻ると言った信志も、戻ってきてはくれない。
「みんな、嘘つき!」
悔しくて悔しくて、泣き叫んだ黄杏は、そのまま寝入ってしまった。
どれほど経っただろう。
女人達も下がり、静かな夜だけが、黄杏を取り囲んだ。
「水、ないかしら。」
起き上がった黄杏は、隣の部屋に、水がないか探したが、この日だけは女人が用意していなかったのか、机の上になかった。
「はぁ……」
諦めようとしても、泣きじゃくったせいか、やたら喉が乾く。
「確か外に、井戸があったはず。」
黄杏は、杯を持って外に出た。
白蓮と紅梅の屋敷は、もう灯が落ちていると言うのに、青蘭の屋敷だけは、煌々と明かりが着いていた。
そこへ護衛をしていた兵士が、ニヤニヤしながら歩いてきた。
「今日は久しぶりに、青蘭様の甘い声が聞けたよ。」
「あの方、色気たんまりだから、王もなかなか満足しないよな。」
そう言って、イヒヒヒと下品な笑いをする。
「あーあ。今日も遅くまで、励むなぁ。」
「青蘭様の時は、いつもそうだって。一晩中灯が落ちない時だってあるよ。紅梅様の時はすぐに消えるのになぁ。」
黄杏は青蘭と信志が、一糸纏わぬ状態で目合っているのを想像するだけで、頭がおかしくなりそうだった。
「井戸……早く井戸を探さなきゃ……」
気を確かに持つ為に、さ迷うように井戸を探した。
「あそこだ。」
やっと見つけた井戸の蓋を開け、水を汲むと、一気に飲み干した。
そして、生き返ったような気がした黄杏の耳に、卑猥な声が届く。
「あぁ……いい……もっと……もっと!」
黄杏は、耳を塞いだ。
どこからこの声は、聞こえてくるのか。
辺りを見回すとそこは、他でもない青蘭の屋敷の脇だった。
急いで立ち去ろうとする黄杏の耳に、また卑猥な声が聞こえる。
「もう……だめぇ……信志様ぁあ!」
「青蘭……我慢しなくてもいいよ……」
黄杏はそのまま引かれるように、青蘭の屋敷の窓を覗いた。
そこはちょうど、青蘭の寝台になっているようで、異国のエキゾチックな中に、官能的なお香の臭いがする。
その上で何も纏わぬ信志が座っており、その上に裸の青蘭が乗っている。
青蘭はたわわな胸が揺れる程、激しく体を動かしているが、何よりも許せなかったのは、そんな青蘭の滑らかな肌を貪るように、口付けている信志だった。
黄杏は、近くにあった石を、青蘭の屋敷に投げようとした。
だが当たれば、何事かと大騒ぎになる。
「くっ……うぅ……」
胸が苦しくて、黄杏は拾った石を、地面に強く叩きつけた。
「はぁはぁはぁ……」
あんなに、毎晩情を交わしていたと言うのに。
あの甘美な言葉は、全て嘘だったのだ。
失意の中で、自分の屋敷に戻ろうとした黄杏の目に、今度は、武術の稽古をしている紅梅の姿が写った。
ついこの前、他の妃に行くようにと仕向けろと言われ、それに従ったせいで、今こんなに苦しんでいる。
今だけは、会いたいくない。
黄杏は、紅梅に見つからないように、忍び足で戻ろうとした。
「こんな時間に、何してるの?」
だが黄杏は、あっさり紅梅に、見つかってしまった。
「……水を飲みに。」
「へえ。それでもしかして、井戸に行ったの?」
紅梅は、刀の素振りをしながら、次から次へと質問してくる。
「ええ……」
「お馬鹿さんね。そのついでに、見たくもないものまで見てしまって。」
黄杏は、紅梅のその言葉が、気になって仕方なかった。
「知っているの?」
「知ってるわよ。お妃になって、何年になると思ってるの?」
そんな事は、説明されてないから、分からないとしか言えないが、少なくても自分だけ、このモヤモヤしている気持ちを、持っている訳ではないのだ。
「紅梅さん。」
「何?」
「紅梅さんは、どうして王の妃になったの?」
自分はどんどん、黄杏に質問をするくせに、黄杏の質問には、答えようとしない紅梅。
「……女隊の隊長を、やってらしたんでしょ?辞めるのは、嫌ではなかった?」
「全然。女隊の隊長をしていたのは、王に近づく為だから。」
「えっ!?」
驚いた黄杏は、口を両手で塞ぐが、紅梅ならやりかねないと思った。
「私の父が、王の近臣だと言う事は、知っているんでしょ?」
「……はい。」
「そのお陰でね。小さい頃から、王の事を知っていたわ。話しかけられる事も多くて。私の事は、親戚の女の子ぐらいにしか思ってなかったようだけど、私は好きだった。私の初恋の人よ。」
あのガサツそうな紅梅の口から、初恋の人という甘酸っぱい言葉が出てくるなんて。
黄杏は、急に紅梅の事が可愛らしく見えて、ニンマリした。
「ある日。王と武術の試合をしたの。勝ったら、お妃にして欲しいと頼んだわ。必死で攻めて、最後の最後で王に勝った。その結果、これよ。」
紅梅は、高そうなシルクの寝間着を、黄杏に見せた。
「私が欲しかったのは、こんな物じゃなかったのに。本当に欲しい物って、手に入らないのね。」
強がっていた紅梅が、ほんの少しだけ、弱い部分を見せた瞬間だった。
黄杏は、勝手に親近感を覚え、紅梅の近くにあった、大きな石に、腰を降ろした。
「紅梅さんは、王のお子が、欲しいのね。」
「王のお子も欲しいけれど、一番欲しいのは、王の愛情だけどね。」
紅梅もため息をつきながら、黄杏の隣に座った。
「青蘭さんは、王にお気持ちは向いていないと、仰っていたけれど、王と情を交わしている姿を見る限りでは、そんなふうに思えなかった。」
慕ってもいない相手に、あんなに激しく求めるだろうか。
「あの人はね。好きものなのよ。」
「す、好きもの?」
「要するに濡れ事が、好きなのよ。」
あの、儚げな青蘭が?
あまりにも衝撃的で、言葉も出ない。
「一説では、男女の交わりができなくなるから、お子をわざと作らないって言う噂もあるくらい。」
「えっ!?」
そんな世界があるなんて、田舎で育った黄杏には、理解できない世界だ。
「あの二人、心は交わらないけど、体の相性はいいみたい。青蘭さんが絶頂に達してるの、何度か聞いた事、あるもの。」
「ぜ、絶頂!?」
「シー!声が大きい!」
黄杏と紅梅は、慌てて周りを見た。
「ったく。子供じゃないんだから、そんな事で驚かないでよ。」
「ごめんなさい……」
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