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すれ違う心と体

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そしてしばらく、私は残業が続いた。

もちろん、青川君も残業続きだ。

あれ以来、青川君は一件一件、自分で案件を調べている。

まだ二課のメンバーを頼るようなことはしていない。


「二人とも、今日はそこまでにしたらどうだ?」

柊真に言われ、時計を見ると8時を過ぎていた。

「もう、こんな時間……」

パソコンを見れば、まだ承認待ちの案件が残っている。

「もう少しだけ、やらせてください。」

「僕も、もう少しだけお願いします。」

すると柊真は、手をバチンと叩いた。

「終わりだと言ってるだろ。おまえたちが倒れたら、どうするんだ。」

「すみません。」

私は大人しく、退勤処理をしてパソコンの電源を落とした。

「ほら、青川も。」

柊真が上着を持って、カバンを持つ。

「浅見課長には、結城部長がいますけど、僕には誰にもいないので。」

そう言って青川君は、ひたすらPCとにらめっこだ。

私は立ち上がると、元気を出した。

「そんな事ない!青川君には結城部長も私も、付いてるわよ!そうだ!今日、これから飲みに行きませんか?」

私は、わざとはしゃいで見せた。

「お二人でどうぞ。」

でも青川君は、ノリが悪い。

本当はこんな人じゃないのに。

「じゃあな、青川。先に帰るぞ。」

「えっ?」

「いいから。浅見、行くぞ。」

柊真は何故か、青川君を置いて行ってしまった。


私は柊真の車に乗ると、直ぐにうたた寝を初めてしまった。

やっぱり柊真の運転は、滑らかで優しい。

まるで、柊真の愛に包まれているようだ。

「着いたぞ。」

「はっ!」

気づいたら、私の家だった。

「ありがとう。」

てっきり今日は、私の家に泊まって行くのだと思っていた柊真が、そのまま運転席から降りない。

「柊真?泊まって行かないの?」

「うん。」

今日は一緒にいれないのか。

寂しくて、柊真に抱き着いた。

「俺、この前恭香に言われた事、ずっと考えてるんだ。」

「えっ?」

もしかして、部長がいたらって話?

「本当だよ。俺が部長になってから、企画部上手く回ってない。こんな時、部長だったらどうするんだろうって、毎晩考えてるよ。」

そんなに悩ませていたなんて。

でも、そんな弱い部分を、私に見せてくれた事が嬉しい。

「部長に聞いてみる?」

「は?」

私はスマホを取り出して、夜だというのに部長に電話をかけてしまった。

「夜分遅くにすみません。部長!」

部長は私からの電話を、とても喜んでいてくれた。

「実は、結城が今ものすごく困っていて、部長に相談事があるそうです。」

そう言って私は、柊真にスマホを渡した。

ポツリポツリと話し始めた柊真は、今度ははいはいのオンパレード。

そして、時間はあっという間に過ぎて、部長との電話は終わった。

「どうだった?」

「うん……俺色に染めたらいいじゃん!だって。」

「あははは!部長らしい。」

大声で笑ったら、柊真の視線を感じた。

「柊真?」

「ありがとうな。恭香。」

私も柊真と向かい合った。

「私ね、思うの。柊真が私を助けてくれるように、私も柊真を助けたいって。」

「うん。」

「だって、恋愛って一方的ものじゃないでしょ?」

私達は、見つめ合ってキスを交わした。
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