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新しい環境

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「一課は企画部の要って言ったら、語弊があるかもしれないけれど、御曹司が企画部の部長になるなら、要の課長は気心知れた人の方がいいでしょ。」

体が武者振るいする。私も遂に、1000万単位の予算を扱う事になるのか。

「それで、二課の課長なんだけど、二課の係長達にはまだ早いかな。」

「そう、ですよね。」

寺谷君はこの前係長になったばかりだし。

もう一人の係長の湯沢君は、明るくて頼もしいけれど、課長にはどうかな。

「それで思い切って、青川君を二課の課長にしようと思うんだ。」

「青川君……ですか?」

私はキョトンとした。

「ああ、浅見は青川の事、知らないのか。」

「ちょっと……前からいた子?」

「いや、一年前に営業部から来た奴なんだけど、とにかく物静かで淡々と仕事をこなす奴だよ。」

淡々と。物静か。あのアットホームな二課に入って大丈夫かな。

「係長にはいつなったんですか?」

「異動してきて直ぐにだよ。仕事を覚えるのは早い。」

「そうなんだ。」

確かに、部長がいなくなったら、柊真は企画部を一人で支えなければならない。

私もきっと、一課の仕事で新しい事を覚えなければならないし。

そんな時の新しい課長は、仕事ができる人の方がいいのかな。

「大丈夫だよ、浅見ちゃん。青川係長、物静かなだけで悪い子じゃないから。」

「ですね。さすが部長、よく人を見てますね。」

「いやあ、御曹司に言われるとはな。」

すっかり二人は、昇進の話で盛り上がっている。


そんな時、休憩室で青川係長を見つけた。

眼鏡を掛けいて、前髪で半分隠れている。

大勢の中にいるよりは、一人で隅っこにいる方が好きって感じかな。

「青川!」

そんな青川係長に、営業部の人が数名声を掛けた。

「今度、こいつが主任に上がるから、昇進祝いしようってなったんだけど、青川も来ない?」

「いいね。いつ?」

「明後日。」

「分かった。了解。」

手を挙げて応えてるのを見ると、そんな暗い子でもない。

「おっ、青川。」

「やあ。元気?」

同僚とも声掛け合ってるし。

私も青川係長に、声掛けてみようかな。

体を動かした私は、青川係長の肩を叩いた。

「お疲れ様。」

「浅見課長。珍しいですね。僕に話しかけてくるなんて。」

「そうね。座ってる島が違うから、なかなか声掛けられなくて、ごめんね。」

青川係長は、私をじーっと見ている。

「何?」

「いや、お噂はかねがね。」

「噂?」

「未来の社長を射止めた、バリキャリアのシンデレラってね。」

「あははっ!」

バリキャリアって、何よ。私は結婚しない派じゃないわよ。

「ところで、一つ意見があります。」

「えっ?何?」

初めて一対一で会話したのに、もう意見?

いや、これは二課の課長として、仕事の話かもしれないし。

その時、青川係長が鋭い目で私に近づいた。

「仕事中、公然に交際相手とイチャイチャするのは、どうかと思います。」

「え。」

「仕事において、恋愛は切り離されなければなりません。しかしながら、上司達がそれに気づいてないというのは、企画部においてマイナスにしかなりません。」

私は唖然とした。

「……青川係長は、彼女いるの?」

「交際相手はいます。ですが、会社では関係を秘密にしています。」

なるほど。私達の熱々振りが、見るに耐え難いと言うのね。

「分かったわ。結城とも話みる。」

「ぜひ、お願いします。」

そう言うと青川係長は、にっこりと笑った。


それを早速、柊真に話すと彼は大笑いした。

「俺らの公然交際が、企画部のマイナス点!言ってくれるな、青川!」

「そんなノリじゃないでしょ。」

私は久しぶりに柊真と飲みに来て、悩みを打ち明けた。

「確かに悪い子じゃないわよ。皆に声掛けられて、ノリの悪い訳でもないし。」

「へえ。青川のいいところ、もう発見したのか。」

私はワインを一口飲んだ。

「それに、ちゃんとお付き合いしている彼女もいるみたいだし。」

「へえ。ちなみにその彼女、誰だか分かる?」

「知らない。」

「同じ一課の斉藤柚希。」

私はワインを口から吹きそうになった。
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