26 / 34
新しい環境
①
しおりを挟む
こうして、半ば社長と企画部部長の公認の仲になった私と柊真。
ある日の事だった。
「恭香。俺、企画部の部長になれるかもしれない。」
「えっ……」
部長に⁉それは、昇進ではないか!
「また一歩、社長に近づいたわね。」
「ああ。」
御曹司って言っても、柊真は御曹司扱いされるのが、ものすごく嫌だった。
― 結城君って、何もしなくても社長になれるんでしょ。いいね。-
同期の仲間は、そう言って御曹司である柊真を冷やかした。
― 俺たちは、君の手足になって働くだけだよ。 -
そんな同期を前に柊真は、はっきりと言った。
「悔しかったら、俺の代わりに社長になってみろよ。俺は実力で社長になる。」
思い出すな。それで今の部長に、付いて回ったんだよね。
柊真、自ら。
「ふふふ。」
思い出したら、笑っちゃった。
「何だよ。」
「ううん。昔の事思い出したら、おかしくて。」
「何?何を思い出したんだよ。」
柊真は、私に顔を近づけた。
「ん?何だか、実力で社長になってやるって、言ってた事。」
「ああ、その事?俺もまさかここまで、実力主義だと思ってなかった。」
「ははは!自分で望んだ事じゃん!」
おかしくて笑ったら、柊真が微笑んでいた。
「柊真?」
「俺、長い間おまえに片思いしてたから、こんなふうに傍で笑ってくれてるおまえを見ると、頑張っててよかったと思うよ。」
「そんな大げさな。」
私なんか、柊真にそんなそこまで言われる女じゃないのに。
「本当だよ。」
柊真は両手で抱き寄せてくれて、キスをくれた。
いつもキスしてくれる柊真は、きっとキス魔だと思う。
「……ところで、柊真が部長になったら、今の部長はどうなるの?」
「ああ、部長は取締役になるらしい。」
「ええっ⁉」
あの部長が、取締役になるの⁉
「じゃあ、柊真が社長になる時って、あの部長が承認しなきゃいけないの?」
「そうなるね。」
「へえ。」
なんであの柊真にペコペコしてる部長が、取締役となるんだろう。
あっ、そんな事言ったら、部長に失礼か。
「まあ、今度の取締役会議で、承認されたらの話だけどね。」
「そっか。」
そんな話もあり、私の部長を見る目が変わった。
「どうしたの?浅見課長?」
「えっ?」
「さっきから俺を見つめて。もしかして、結城課長から鞍替え?」
「そんな訳ないじゃないですか。」
せっかく私を溺愛してくれる人に出会ったのに、簡単に手ばしてたまるか。
「ところで、二人はいつ結婚するの?」
「えっ……まだ、日取りは決まってませんけど。」
「と言う事は、結婚することは決まってるんだね。」
「え、ええ。」
よく考えれば私まだ、プロポーズされてない?
確かに結婚してくれとは、言われてるけれど。
「ああ、思い出すな。御曹司が俺の周りをちょこちょこ動き回っていた時の事。」
「はははっ!」
そう言えば、部長。逆に柊真に気を遣っていたもんね。
「俺、コピーとか書類作成から、教えたんだよ。あの御曹司に。」
「それ、何気に自慢ですね。」
「そうだよ。今となったら、優秀な一課の課長で、俺の出番ないけど。」
「ふふふ。」
笑える。入社当時の柊真って、メモ帳持って部長の一言一言、書いてたんだよね。
だが、事態は別の方向に動いた。
「えっ⁉部長が支社に転勤⁉」
まさか取締役会議で、承認されなかった⁉
「そうなんだよ。でも副支社長だから、栄転と言えば栄転だけど。」
副支社長って、かなり偉いじゃん。
「なかなか本社にも戻って来れなくなるね。」
部長、寂しそうだな。
「そう言えば、俺の後は御曹司を推しておいたよ。」
「ありがとうございます!」
柊真、嬉しそうだ。
よかったね。
「それで一課の課長なんだけど。」
うんうんと私と柊真は、うなづいた。
「浅見ちゃん、やってみない?」
「えっ?私ですか?」
一課と二課の違いは、扱う予算の違い。
二課は、何十万とか何百万とか、比較的小さな規模を扱うけれど、一課は1000万単位で仕事が動く。
ある日の事だった。
「恭香。俺、企画部の部長になれるかもしれない。」
「えっ……」
部長に⁉それは、昇進ではないか!
「また一歩、社長に近づいたわね。」
「ああ。」
御曹司って言っても、柊真は御曹司扱いされるのが、ものすごく嫌だった。
― 結城君って、何もしなくても社長になれるんでしょ。いいね。-
同期の仲間は、そう言って御曹司である柊真を冷やかした。
― 俺たちは、君の手足になって働くだけだよ。 -
そんな同期を前に柊真は、はっきりと言った。
「悔しかったら、俺の代わりに社長になってみろよ。俺は実力で社長になる。」
思い出すな。それで今の部長に、付いて回ったんだよね。
柊真、自ら。
「ふふふ。」
思い出したら、笑っちゃった。
「何だよ。」
「ううん。昔の事思い出したら、おかしくて。」
「何?何を思い出したんだよ。」
柊真は、私に顔を近づけた。
「ん?何だか、実力で社長になってやるって、言ってた事。」
「ああ、その事?俺もまさかここまで、実力主義だと思ってなかった。」
「ははは!自分で望んだ事じゃん!」
おかしくて笑ったら、柊真が微笑んでいた。
「柊真?」
「俺、長い間おまえに片思いしてたから、こんなふうに傍で笑ってくれてるおまえを見ると、頑張っててよかったと思うよ。」
「そんな大げさな。」
私なんか、柊真にそんなそこまで言われる女じゃないのに。
「本当だよ。」
柊真は両手で抱き寄せてくれて、キスをくれた。
いつもキスしてくれる柊真は、きっとキス魔だと思う。
「……ところで、柊真が部長になったら、今の部長はどうなるの?」
「ああ、部長は取締役になるらしい。」
「ええっ⁉」
あの部長が、取締役になるの⁉
「じゃあ、柊真が社長になる時って、あの部長が承認しなきゃいけないの?」
「そうなるね。」
「へえ。」
なんであの柊真にペコペコしてる部長が、取締役となるんだろう。
あっ、そんな事言ったら、部長に失礼か。
「まあ、今度の取締役会議で、承認されたらの話だけどね。」
「そっか。」
そんな話もあり、私の部長を見る目が変わった。
「どうしたの?浅見課長?」
「えっ?」
「さっきから俺を見つめて。もしかして、結城課長から鞍替え?」
「そんな訳ないじゃないですか。」
せっかく私を溺愛してくれる人に出会ったのに、簡単に手ばしてたまるか。
「ところで、二人はいつ結婚するの?」
「えっ……まだ、日取りは決まってませんけど。」
「と言う事は、結婚することは決まってるんだね。」
「え、ええ。」
よく考えれば私まだ、プロポーズされてない?
確かに結婚してくれとは、言われてるけれど。
「ああ、思い出すな。御曹司が俺の周りをちょこちょこ動き回っていた時の事。」
「はははっ!」
そう言えば、部長。逆に柊真に気を遣っていたもんね。
「俺、コピーとか書類作成から、教えたんだよ。あの御曹司に。」
「それ、何気に自慢ですね。」
「そうだよ。今となったら、優秀な一課の課長で、俺の出番ないけど。」
「ふふふ。」
笑える。入社当時の柊真って、メモ帳持って部長の一言一言、書いてたんだよね。
だが、事態は別の方向に動いた。
「えっ⁉部長が支社に転勤⁉」
まさか取締役会議で、承認されなかった⁉
「そうなんだよ。でも副支社長だから、栄転と言えば栄転だけど。」
副支社長って、かなり偉いじゃん。
「なかなか本社にも戻って来れなくなるね。」
部長、寂しそうだな。
「そう言えば、俺の後は御曹司を推しておいたよ。」
「ありがとうございます!」
柊真、嬉しそうだ。
よかったね。
「それで一課の課長なんだけど。」
うんうんと私と柊真は、うなづいた。
「浅見ちゃん、やってみない?」
「えっ?私ですか?」
一課と二課の違いは、扱う予算の違い。
二課は、何十万とか何百万とか、比較的小さな規模を扱うけれど、一課は1000万単位で仕事が動く。
23
お気に入りに追加
153
あなたにおすすめの小説

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない
若松だんご
恋愛
――俺には、将来を誓った相手がいるんです。
お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。
――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。
ほげええっ!?
ちょっ、ちょっと待ってください、課長!
あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?
課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。
――俺のところに来い。
オオカミ課長に、強引に同居させられた。
――この方が、恋人らしいだろ。
うん。そうなんだけど。そうなんですけど。
気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。
イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。
(仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???
すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
禁断溺愛
流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。

ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。
イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。
きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。
そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……?
※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。
※他サイトにも掲載しています。

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。
渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!?
合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡――
だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。
「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき……
《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》
二人の甘い夜は終わらない
藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい*
年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる