上 下
22 / 34
御曹司と言う立場

しおりを挟む
「いい相手がいないかと、相談されてな。」

「そんなんで、自分の息子を勝手に薦めるな。」

柊真は立ち上がると、会議室を出た。

「俺も行く。」

「えっ?社長も⁉」

部長達は飛び上がるように驚く。

だよね。えっ?これって、婚約破棄を白紙撤回⁉

すると社長は、私に手招きをした。

「浅見課長は、来なくていいのか?」

「私もですか?」

「関係者だよね。一応。」

あの社長が、一気にキャラ変更?私の事、柊真にふさわしくないみたいな事、言ってたくせに。


「何で、浅見課長が?」

部長の一人が首を傾げる。

すると企画部の部長が、余計な事を言った。

「彼女、社長夫人候補なんです。」

「はあ?あの社長の?」

「いえいえ、御曹司のですよ。」

私は部長の背中を叩いた。

「あっ、まだ内緒だった?」

部長を睨みながら、私も会議室を出た。

何なの⁉婚約者が会社に来るなんて、全然婚約破棄になってないんですけど!


私はエレベーターの上から、社長と柊真が、藤高コーポレーションのご令嬢を連れてくるのを見た。

エレベーターを上がってくる。

社長も柊真も、ご令嬢をもてなす気満々だ。

私は急いで、応接室のドアを開けに行った。

「どうぞ。」

「あら、先ほどの。」

さすがはご令嬢。顔を覚えるのが早い。

「申し遅れました。結城課長と同じく企画部の課長をしております、浅見恭香と申します。」

「よろしく。」

「はい。」

私は深々と、頭を下げた。

それで?私はどうしろと?何気なく応接室に一歩入る。

「浅見課長がどうしてここに?」

いや、鋭いよ。さすがは社長令嬢。

「浅見課長はね、柊真の交際相手なんですよ。」

「はあ?柊真さんの⁉」

そしてさっきは、そんな名前だったはずと言っていた柊真の名前を、習得したお嬢様。

能力は最高だよ。いや、演技力って言うんでしょうか。

そして社長と柊真は、下座に座った。

「ええっと、藤高コーポレーションのご令嬢が、足を運んで頂き、ありがとうございます。」

柊真が場を仕切る。

「やはり、婚約破棄の件ですよね。」

「他に、何かご用件がありますか?」

「いえ。その通りです。」

柊真、もうお嬢様のペースに乗せられてるじゃない。

「ええーっと、」

そして肝心の名前を、柊真は知らない。

社長もにっこり笑って、知らない素振りだ。

思わず私が、柊真の耳元で囁いた。

「藤高……リマさんです。」

「利夏よっ!」

「失礼しましたっ!」

やばい!初っ端から名前を間違えるという失態。

「……利夏さん。結婚の件、利夏さんはどのようにお考えですか?」

柊真が切り出す。

「どのようにって、私は結婚すると決めてましたけど?」

えっ⁉名前もうろ覚えの人と?

びっくりだわ。このお嬢様。

「利夏さんには、交際相手はいらっしゃらないのですか?」

「はい。現在お付き合いしている方は、いません。」

「……失礼ですが、年齢はいくつでしょうか。」

「28です。何ですか?歳は関係ありますか?私達の結婚は、両家が望んでいたはず。」

柊真は社長を見た。

「ええ。ですが、柊真には真剣に結婚を考えている相手がいましてね。」

社長、はっきり言ってくれた。

「それがそこにいる浅見課長だと言うのですか?」

「その通りです。」

「はあ?」

利夏さんは、顔を歪ませながら不思議な表情。

「柊真さん。逆に私達の結婚をどうお考えでしたか?」

逆に質問されてる。

「正直、あまり考えてはいませんでした。」

「結婚するのにですか?」

「僕からはっきりと、プロポーズをした覚えもありません。逆になぜ利夏さんは、逆に僕との結婚を考える事ができたのですか?」

「父親が、結婚相手だと写真を見せてくれたんです。」

「写真ですか?」

「はい。」

利夏さんは、スマホから柊真の写真を差し出した。

「これ……今年の春に撮った写真。なぜこれを利夏さんが?」

すると社長は、柊真から離れて行った。

社長、柊真に黙って写真を提供したな。

「私は幼い頃から、結婚相手は父親が決めてくれると教わってきたんです。初めてなんです。父が結婚相手だよって、写真を見せてくれたのは。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

二人の甘い夜は終わらない

藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい* 年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

森でオッサンに拾って貰いました。

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
恋愛
アパートの火事から逃げ出そうとして気がついたらパジャマで森にいた26歳のOLと、拾ってくれた40近く見える髭面のマッチョなオッサン(実は31歳)がラブラブするお話。ちと長めですが前後編で終わります。 ムーンライト、エブリスタにも掲載しております。

一夜限りのお相手は

栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

社長はお隣の幼馴染を溺愛している

椿蛍
恋愛
【改稿】2023.5.13 【初出】2020.9.17 倉地志茉(くらちしま)は両親を交通事故で亡くし、天涯孤独の身の上だった。 そのせいか、厭世的で静かな田舎暮らしに憧れている。 大企業沖重グループの経理課に務め、平和な日々を送っていたのだが、4月から新しい社長が来ると言う。 その社長というのはお隣のお屋敷に住む仁礼木要人(にれきかなめ)だった。 要人の家は大病院を経営しており、要人の両親は貧乏で身寄りのない志茉のことをよく思っていない。 志茉も気づいており、距離を置かなくてはならないと考え、何度か要人の申し出を断っている。 けれど、要人はそう思っておらず、志茉に冷たくされても離れる気はない。 社長となった要人は親会社の宮ノ入グループ会長から、婚約者の女性、扇田愛弓(おおぎだあゆみ)を紹介され――― ★宮ノ入シリーズ第4弾

とろける程の甘美な溺愛に心乱されて~契約結婚でつむぐ本当の愛~

けいこ
恋愛
「絶対に後悔させない。今夜だけは俺に全てを委ねて」 燃えるような一夜に、私は、身も心も蕩けてしまった。 だけど、大学を卒業した記念に『最後の思い出』を作ろうなんて、あなたにとって、相手は誰でも良かったんだよね? 私には、大好きな人との最初で最後の一夜だったのに… そして、あなたは海の向こうへと旅立った。 それから3年の時が過ぎ、私は再びあなたに出会う。 忘れたくても忘れられなかった人と。 持ちかけられた契約結婚に戸惑いながらも、私はあなたにどんどん甘やかされてゆく… 姉や友人とぶつかりながらも、本当の愛がどこにあるのかを見つけたいと願う。 自分に全く自信の無いこんな私にも、幸せは待っていてくれますか? ホテル リベルテ 鳳条グループ 御曹司 鳳条 龍聖 25歳 × 外車販売「AYAI」受付 桜木 琴音 25歳

若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~

雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」 夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。 そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。 全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載

処理中です...