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今更あいつと
②
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アラフォーになって、花柄のスカートはきつかったかな。
「……似合う。」
そして結城は、私の耳元で囁いた。
「キレイだよ。」
カァーっと顔が熱くなった。
「はい、どうぞ。」
そして助手席のドアを開けてくれる結城が、王子様に見えて仕方なかった。
「ありがと。」
助手席に乗ると、ドアまで閉めてくれる。
結城って、女に対していつもこんな事やってるの?
それはそれで、逆にすごいけれど。
車に乗った結城は、シートベルトを締めると、車を動かした。
「映画行く前に、家に帰って着替えていい?」
「いいよ。」
まさか休み取ってくれたのに、スーツで過ごせだなんて言えないもんね。
そしてこの前も思ったけれど、結城の運転はとても優しい。
「結城って、運転が丁寧ね。いつもなの?」
「いや。今日はおまえを乗せてるから。」
「えっ……」
「大事な女乗せてて、危ない目には遭わせませんよ。」
大事な女。胸のトクントクンという音が聞こえてくる。
「いつから?」
結城、どうしてそんなに私の事、大切にしてくれるの?
「いつから、私の事。そんな目で見てたの?」
私は少なくても、結城の事同期だとしか思ってなかったよ。
その時、車が停まった。
「車の中で待ってて。」
そう言うと結城は、車から降りて家に行ってしまった。
返事は聞けないまま。いつから私を特別に見てたのか、わからないまま。
しばらくして、運転席のドアが開いた。
結城が戻ってきたのだ。
「ううん。」
そして結城を見て、胸がキュンとした。
ジーンズにグレーのTシャツ。シンプルな服装なのに、オシャレに見えるのは、結城の体のラインをキレイに見せてるから?
Tシャツの上からでも分かる、細身の締まった体。長い手足。高価な時計にスニーカー。
どれもが結城のカッコよさを、際立たせる物だった。
「どうした?」
「あっ、ううん。何だか、カッコよくて見とれちゃって……」
そう言うと結城は、髪をかき上げてハンドルに両手を乗せた。
「その言葉、ズルい。」
私は思わず結城から目を反らした。
結城が照れてる。あの結城が!
「行くよ。」
車が発進して、私達は映画館に向かった。
何も話さない。でも、居心地のいい空間。
隣に結城がいる。
それだけなのに、私は幸せを感じていた。
映画館に行くと、案外席は埋まっていた。
結構ガラガラだと思っていたのに。
おかげで結城と隣同士に座っても、違和感がない。
ちなみに映画のチケットも、ポップコーンもコーラも。結城が奢ってくれた。
私も出すと言っているのに、いいと言って。
そして映画が始まる前に、スマホの電源をOFFにしようとしていた時だ。
スマホにメールが来てたらしい。
「ああ、会社からだ。」
そう言って結城は、席を立ち一旦ホールを抜け出して行った。
「あの人、カッコいいね。」
「一人かな。あとで声掛けてみようか。」
近くにいた女の子達が、結城を見てはしゃいでる。
他の女の子から見ても、結城はカッコいいと思う。
どうして私なんかと、結婚しようと思ったのだろうか。
まったくもって不思議だ。
しばらくして、結城が帰って来た。
「ごめん、恭香。」
私に手を挙げる勇気を見て、さっきの女の子達ががっかりしてる。
「なんだ、彼女と来てるの?」
「相手の女、ちょっとオバサンじゃない?」
おいおい、聞こえてますよ。悪かったわね、オバサンで。
その時、結城が私の肩を抱き寄せた。
「言わせておけ。」
「結城……」
「俺の恭香は、いい女だよ。」
結城を見ると、微笑んでいる。結城にも聞こえていたんだ。
聞こえていて、無視してた?
そんなにも、私に夢中なの?
それからずっと、結城の肩の中で映画を見ていた。
やっぱり仕事や恋愛に悩む主人公を見ていると、ものすごく共感するのは、私もそうだから?
それとも、今にも始まりそうな恋に悩んでいるから?
「……似合う。」
そして結城は、私の耳元で囁いた。
「キレイだよ。」
カァーっと顔が熱くなった。
「はい、どうぞ。」
そして助手席のドアを開けてくれる結城が、王子様に見えて仕方なかった。
「ありがと。」
助手席に乗ると、ドアまで閉めてくれる。
結城って、女に対していつもこんな事やってるの?
それはそれで、逆にすごいけれど。
車に乗った結城は、シートベルトを締めると、車を動かした。
「映画行く前に、家に帰って着替えていい?」
「いいよ。」
まさか休み取ってくれたのに、スーツで過ごせだなんて言えないもんね。
そしてこの前も思ったけれど、結城の運転はとても優しい。
「結城って、運転が丁寧ね。いつもなの?」
「いや。今日はおまえを乗せてるから。」
「えっ……」
「大事な女乗せてて、危ない目には遭わせませんよ。」
大事な女。胸のトクントクンという音が聞こえてくる。
「いつから?」
結城、どうしてそんなに私の事、大切にしてくれるの?
「いつから、私の事。そんな目で見てたの?」
私は少なくても、結城の事同期だとしか思ってなかったよ。
その時、車が停まった。
「車の中で待ってて。」
そう言うと結城は、車から降りて家に行ってしまった。
返事は聞けないまま。いつから私を特別に見てたのか、わからないまま。
しばらくして、運転席のドアが開いた。
結城が戻ってきたのだ。
「ううん。」
そして結城を見て、胸がキュンとした。
ジーンズにグレーのTシャツ。シンプルな服装なのに、オシャレに見えるのは、結城の体のラインをキレイに見せてるから?
Tシャツの上からでも分かる、細身の締まった体。長い手足。高価な時計にスニーカー。
どれもが結城のカッコよさを、際立たせる物だった。
「どうした?」
「あっ、ううん。何だか、カッコよくて見とれちゃって……」
そう言うと結城は、髪をかき上げてハンドルに両手を乗せた。
「その言葉、ズルい。」
私は思わず結城から目を反らした。
結城が照れてる。あの結城が!
「行くよ。」
車が発進して、私達は映画館に向かった。
何も話さない。でも、居心地のいい空間。
隣に結城がいる。
それだけなのに、私は幸せを感じていた。
映画館に行くと、案外席は埋まっていた。
結構ガラガラだと思っていたのに。
おかげで結城と隣同士に座っても、違和感がない。
ちなみに映画のチケットも、ポップコーンもコーラも。結城が奢ってくれた。
私も出すと言っているのに、いいと言って。
そして映画が始まる前に、スマホの電源をOFFにしようとしていた時だ。
スマホにメールが来てたらしい。
「ああ、会社からだ。」
そう言って結城は、席を立ち一旦ホールを抜け出して行った。
「あの人、カッコいいね。」
「一人かな。あとで声掛けてみようか。」
近くにいた女の子達が、結城を見てはしゃいでる。
他の女の子から見ても、結城はカッコいいと思う。
どうして私なんかと、結婚しようと思ったのだろうか。
まったくもって不思議だ。
しばらくして、結城が帰って来た。
「ごめん、恭香。」
私に手を挙げる勇気を見て、さっきの女の子達ががっかりしてる。
「なんだ、彼女と来てるの?」
「相手の女、ちょっとオバサンじゃない?」
おいおい、聞こえてますよ。悪かったわね、オバサンで。
その時、結城が私の肩を抱き寄せた。
「言わせておけ。」
「結城……」
「俺の恭香は、いい女だよ。」
結城を見ると、微笑んでいる。結城にも聞こえていたんだ。
聞こえていて、無視してた?
そんなにも、私に夢中なの?
それからずっと、結城の肩の中で映画を見ていた。
やっぱり仕事や恋愛に悩む主人公を見ていると、ものすごく共感するのは、私もそうだから?
それとも、今にも始まりそうな恋に悩んでいるから?
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