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今更あいつと

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アラフォーになって、花柄のスカートはきつかったかな。

「……似合う。」

そして結城は、私の耳元で囁いた。

「キレイだよ。」

カァーっと顔が熱くなった。

「はい、どうぞ。」

そして助手席のドアを開けてくれる結城が、王子様に見えて仕方なかった。

「ありがと。」

助手席に乗ると、ドアまで閉めてくれる。

結城って、女に対していつもこんな事やってるの?

それはそれで、逆にすごいけれど。

車に乗った結城は、シートベルトを締めると、車を動かした。

「映画行く前に、家に帰って着替えていい?」

「いいよ。」

まさか休み取ってくれたのに、スーツで過ごせだなんて言えないもんね。

そしてこの前も思ったけれど、結城の運転はとても優しい。

「結城って、運転が丁寧ね。いつもなの?」

「いや。今日はおまえを乗せてるから。」

「えっ……」

「大事な女乗せてて、危ない目には遭わせませんよ。」

大事な女。胸のトクントクンという音が聞こえてくる。

「いつから?」

結城、どうしてそんなに私の事、大切にしてくれるの?

「いつから、私の事。そんな目で見てたの?」

私は少なくても、結城の事同期だとしか思ってなかったよ。

その時、車が停まった。

「車の中で待ってて。」

そう言うと結城は、車から降りて家に行ってしまった。


返事は聞けないまま。いつから私を特別に見てたのか、わからないまま。


しばらくして、運転席のドアが開いた。

結城が戻ってきたのだ。

「ううん。」

そして結城を見て、胸がキュンとした。

ジーンズにグレーのTシャツ。シンプルな服装なのに、オシャレに見えるのは、結城の体のラインをキレイに見せてるから?

Tシャツの上からでも分かる、細身の締まった体。長い手足。高価な時計にスニーカー。

どれもが結城のカッコよさを、際立たせる物だった。

「どうした?」

「あっ、ううん。何だか、カッコよくて見とれちゃって……」

そう言うと結城は、髪をかき上げてハンドルに両手を乗せた。

「その言葉、ズルい。」

私は思わず結城から目を反らした。

結城が照れてる。あの結城が!

「行くよ。」

車が発進して、私達は映画館に向かった。

何も話さない。でも、居心地のいい空間。

隣に結城がいる。

それだけなのに、私は幸せを感じていた。

映画館に行くと、案外席は埋まっていた。

結構ガラガラだと思っていたのに。

おかげで結城と隣同士に座っても、違和感がない。

ちなみに映画のチケットも、ポップコーンもコーラも。結城が奢ってくれた。

私も出すと言っているのに、いいと言って。


そして映画が始まる前に、スマホの電源をOFFにしようとしていた時だ。

スマホにメールが来てたらしい。

「ああ、会社からだ。」

そう言って結城は、席を立ち一旦ホールを抜け出して行った。

「あの人、カッコいいね。」

「一人かな。あとで声掛けてみようか。」

近くにいた女の子達が、結城を見てはしゃいでる。

他の女の子から見ても、結城はカッコいいと思う。

どうして私なんかと、結婚しようと思ったのだろうか。

まったくもって不思議だ。

しばらくして、結城が帰って来た。

「ごめん、恭香。」

私に手を挙げる勇気を見て、さっきの女の子達ががっかりしてる。

「なんだ、彼女と来てるの?」

「相手の女、ちょっとオバサンじゃない?」

おいおい、聞こえてますよ。悪かったわね、オバサンで。

その時、結城が私の肩を抱き寄せた。

「言わせておけ。」

「結城……」

「俺の恭香は、いい女だよ。」

結城を見ると、微笑んでいる。結城にも聞こえていたんだ。

聞こえていて、無視してた?

そんなにも、私に夢中なの?

それからずっと、結城の肩の中で映画を見ていた。


やっぱり仕事や恋愛に悩む主人公を見ていると、ものすごく共感するのは、私もそうだから?

それとも、今にも始まりそうな恋に悩んでいるから?
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