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生意気なあいつ
③
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「ねえ、原田君。なるべく予算はオーバーしないように、企画してくれる?」
「えっ?相手の予算内に収めろって事ですか?」
「予算内じゃなくても、なるべく近い金額で組み立ててみて。」
「……はい。」
もっと、相手の要望に応えよう。
企画部だって、優秀だって、営業部に知らしめてやりたい。
そして思った。
私はやっぱり仕事が好きだ。
結婚したいけれど、仕事も同じくらい好きだ。
数日後、廊下で住前君に会った。
「お疲れ様です。」
一応社交辞令で、挨拶だけした。
すると住前君は、私の前で立ち止まった。
「浅見課長、俺。お陰様で課長になれました。」
「そう。おめでとうございます。」
そうか。あの案件、契約になったって知らせがあったもんな。
「あの話、覚えていますか?」
「あの……話?」
「昇進したら、奢って貰えますかって言う……話。」
ん?とお互い見つめ合った。
私、そんな約束した?
「あー……」
でも、あの時私にもっと力があれば、住前君にも迷惑かけなかったかも。
「……いいよ。」
「やった!」
住前君は、ガッツポーズをしている。そんなに嬉しいの?
「早速、今日なんかどうですか?」
「ああ、いいけど。」
「じゃあ、定時になったら外で待ってて下さい。」
「うん。」
住前君は、嬉しそうにオフィスに戻って行った。
何だか、可愛い。
問題は、私がオフィスに戻ってから起こった。
何だか皆が騒いでいる。
「どうしたの?」
「あっ、浅見課長。」
原田君が私の傍に寄ってきた。
「すみません。実は、企画書の予算が桁違ってたみたいで。」
「えっ?」
私は原田君のパソコンを見た。
「1,000万?ん?1,000万!」
それは1課で扱う金額では?
「本当はいくらだったの?」
「……100万です。」
「うそっ!」
100万の予算で間に合うところ、1,000万で出した?
しかも承認ボタン押してるし!私が昨日、押してるし!
「それで、何で分かったの?」
「それが……現場で説明している時に、先方が気付いたみたいで……」
「うわーっ!」
一番まずいパターンじゃん!
「ちょっと営業部に行ってくる。」
この前に続いて、2度目の登場だよ。
案の定、営業部のオフィスに入ると、住前君達が部長の前で話している。
「あれ、君は……」
営業部長も私に気付いている。
「2課の課長をしております、浅見です!この度はご迷惑をおかけして、申し訳ございません。」
先に謝った方が勝ち。素直にミスを認める。
「あっ、いや。誰でもミスはするものなんだけど、先方がミスした奴を連れて来いって言ってて……」
うひゃー!
まさか原田君を行かせるわけには行かないでしょ。
「……私が行きます!現場、教えて下さい!」
もう頭下げっぱなしだ。
「いやいや、現場遠いし……」
「タクシーで行きます!」
ああ!経費で落とせるかな。運賃、どのくらいかかるんだろう。
「担当の方には、今から行くとお伝えを……」
「とにかく、浅見課長。落ち着いて。」
「いえ!よく見ないで承認ボタンを押した私のミスです!」
なんでもっとよく見なかったんだろう。
一件一件が、先方の取引先にとっては、大事な案件なのに。
「私が直に謝って来ます!」
そう叫んで頭を上げた時だ。
私の肩を包み込む腕があった。
「落ち着きましょう。浅見課長。」
「住前君……」
そこに私を見つめる瞳があった。
思わずドキっとする。
「部長、俺が行きます。」
「いや、住前君。君、まだ課長になったばかりだし。」
営業部長が、焦っている。
だよね。数日前に課長になったばかりの住前君を、責任者として行かせる訳にはいかない!
「でしたら、」
その瞬間、私の横を通る姿があった。
「案件をコピーして俺に下さい。あと、場所も。」
私の目の前に、結城の背中がある。
「部長。俺が住前課長と一緒に行きますよ。」
「本当ですか?御曹司。」
御曹司だと知っている営業部長は、役職が上だって言うのに、結城にペコペコしている。
その間に、女子社員が場所と案件を、結城に渡した。
「ああ、この会社なら何度も行った事がある。先方の担当者とも知り合いだ。」
「結城……」
何で営業でもない結城が、先方の担当者と知り合いなのよ。
「えっ?相手の予算内に収めろって事ですか?」
「予算内じゃなくても、なるべく近い金額で組み立ててみて。」
「……はい。」
もっと、相手の要望に応えよう。
企画部だって、優秀だって、営業部に知らしめてやりたい。
そして思った。
私はやっぱり仕事が好きだ。
結婚したいけれど、仕事も同じくらい好きだ。
数日後、廊下で住前君に会った。
「お疲れ様です。」
一応社交辞令で、挨拶だけした。
すると住前君は、私の前で立ち止まった。
「浅見課長、俺。お陰様で課長になれました。」
「そう。おめでとうございます。」
そうか。あの案件、契約になったって知らせがあったもんな。
「あの話、覚えていますか?」
「あの……話?」
「昇進したら、奢って貰えますかって言う……話。」
ん?とお互い見つめ合った。
私、そんな約束した?
「あー……」
でも、あの時私にもっと力があれば、住前君にも迷惑かけなかったかも。
「……いいよ。」
「やった!」
住前君は、ガッツポーズをしている。そんなに嬉しいの?
「早速、今日なんかどうですか?」
「ああ、いいけど。」
「じゃあ、定時になったら外で待ってて下さい。」
「うん。」
住前君は、嬉しそうにオフィスに戻って行った。
何だか、可愛い。
問題は、私がオフィスに戻ってから起こった。
何だか皆が騒いでいる。
「どうしたの?」
「あっ、浅見課長。」
原田君が私の傍に寄ってきた。
「すみません。実は、企画書の予算が桁違ってたみたいで。」
「えっ?」
私は原田君のパソコンを見た。
「1,000万?ん?1,000万!」
それは1課で扱う金額では?
「本当はいくらだったの?」
「……100万です。」
「うそっ!」
100万の予算で間に合うところ、1,000万で出した?
しかも承認ボタン押してるし!私が昨日、押してるし!
「それで、何で分かったの?」
「それが……現場で説明している時に、先方が気付いたみたいで……」
「うわーっ!」
一番まずいパターンじゃん!
「ちょっと営業部に行ってくる。」
この前に続いて、2度目の登場だよ。
案の定、営業部のオフィスに入ると、住前君達が部長の前で話している。
「あれ、君は……」
営業部長も私に気付いている。
「2課の課長をしております、浅見です!この度はご迷惑をおかけして、申し訳ございません。」
先に謝った方が勝ち。素直にミスを認める。
「あっ、いや。誰でもミスはするものなんだけど、先方がミスした奴を連れて来いって言ってて……」
うひゃー!
まさか原田君を行かせるわけには行かないでしょ。
「……私が行きます!現場、教えて下さい!」
もう頭下げっぱなしだ。
「いやいや、現場遠いし……」
「タクシーで行きます!」
ああ!経費で落とせるかな。運賃、どのくらいかかるんだろう。
「担当の方には、今から行くとお伝えを……」
「とにかく、浅見課長。落ち着いて。」
「いえ!よく見ないで承認ボタンを押した私のミスです!」
なんでもっとよく見なかったんだろう。
一件一件が、先方の取引先にとっては、大事な案件なのに。
「私が直に謝って来ます!」
そう叫んで頭を上げた時だ。
私の肩を包み込む腕があった。
「落ち着きましょう。浅見課長。」
「住前君……」
そこに私を見つめる瞳があった。
思わずドキっとする。
「部長、俺が行きます。」
「いや、住前君。君、まだ課長になったばかりだし。」
営業部長が、焦っている。
だよね。数日前に課長になったばかりの住前君を、責任者として行かせる訳にはいかない!
「でしたら、」
その瞬間、私の横を通る姿があった。
「案件をコピーして俺に下さい。あと、場所も。」
私の目の前に、結城の背中がある。
「部長。俺が住前課長と一緒に行きますよ。」
「本当ですか?御曹司。」
御曹司だと知っている営業部長は、役職が上だって言うのに、結城にペコペコしている。
その間に、女子社員が場所と案件を、結城に渡した。
「ああ、この会社なら何度も行った事がある。先方の担当者とも知り合いだ。」
「結城……」
何で営業でもない結城が、先方の担当者と知り合いなのよ。
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