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王の取り計らい
①
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私が倒れてから三日後、ようやくサハルから薬が届けられた。
「さあ、チナ。薬を飲んで。」
アムジャドから薬を渡されても、喉が痛くて、飲む気がしない。
「チナ。どうした?薬を飲まないと、治らないよ。」
「うん……」
目を半分開け、遠くを見つめる私を、アムジャドは抱き起してくれて、口移しで薬を飲ませてくれた。
「ん?」
ゴクンと薬を飲んだ私を見て、アムジャドのため息が聞こえる。
「よかった。」
アムジャドに抱き寄せられ、彼の匂いが鼻をくすぐる。
「この2,3日。チナの事ばかり考えていた。チナを失ってしまったら、僕は生きていけない。」
私の頬に、アムジャドの涙が落ちてきた。
「チナ。もう僕は、チナのいない世界に戻りたくない。一緒に暮らそう。僕は、皇太子の座を降りるよ。」
「アムジャド……」
「静かな場所に移って、僕達だけで暮らすんだ。その方がいい。」
「待って。アムジャド。」
私はアムジャドの頬に流れる涙を拭った。
「私達には、私達にしかできない仕事があるわ。それを投げだすなんて、できない。」
「僕には、弟がいる。弟に皇太子を譲ればいいんだ。」
「ダメよ。アムジャドにしか、できない事よ。この国の人達の為に、皇太子の座を降りては駄目。」
みんな、アムジャドがこの国の王になる事を、待ち望んでいる。
この国は、アムジャドを必要としている。
それを変えてはいけない。
「私こそ、王妃の座を辞退する。医者をやりながら王妃もやるなんて、私には無理だもの。」
「駄目だ、駄目だ。チナ以外の妻なんて、僕には必要ない!」
こんなに弱々しいアムジャドを見るのは、初めてだった。
まるで、母親に捨てられるのを恐れている子供みたいだ。
「アムジャド。泣かないで。私、必ず病気を治すから。そうしたらまた、一緒にいたい。」
「約束だよ、チナ。僕を一人置いて、逝ってしまったら駄目だ。」
アムジャドの私を抱きしめる力が、強くなる。
「アムジャド。これ以上ここにいたら、病気が移ってしまうわ。」
「チナの移されるのなら、本望だよ。」
アムジャドが私を見つめる。
「チナ。どうして僕は、こんなにもチナを愛しているだろう。」
「えっ?」
「君に会うまで、僕は孤独だった。どんな人と付き合おうと、僕の孤独を満たしてくれる人はいなかった。君だけだ。一緒にいると僕がこの世に生まれてきた意味を思い知らされる。」
アムジャドは、私の額にキスをした。
「チナ。僕はチナと出会う為に、この世に生まれてきたんだよ。チナもそうであって欲しいな。」
私は、クスッと笑った。
「聞くまでもないでしょう?」
「チナ?」
「私もあなたに会う為に、この世に生まれた。じゃなきゃ、日本を離れて、中東に来ないわよ。」
自分が病気である事も忘れ、私達はずっと抱きしめ合っていた。
アムジャドが看病してくれたおかげで、翌日には病気も治っていた。
「どう?チナ。今日の体調は。」
「悪くはないわ。アムジャド。あなたのおかげよ。」
私達は我慢していたキスをしようと、顔を近づけた。
その時だった。
「お邪魔するよ。」
扉が開いて、国王が私の部屋へ現れた。」
「おっ、本当に邪魔をしてしまったか。」
「父上……」
4日振りのキスをお預けされ、アムジャドはムスッとしている。
「今日、この部屋を訪れたのは、他でもない。二人の処遇についてだ。」
「私達の?」
アムジャドが隣に座り、私の手を握ってくれた。
「チナは、この国のお抱え医師を望んでいたな。」
「はい。」
「今回のサハルでの一件、チナ達日本人医師には、心から感謝している。そのお礼をとして、チナとDrツダを、この国のお抱え医師として迎えようと思う。」
「国王……それでは、私達もモルテザー王国公認の医師として、働けるのですね。」
「ああ。こちらこそ、お願いしたいくらいだ。」
私は喜びの涙を流した。
「そしてもう一つ、二人の事だ。」
「はい。」
アムジャドが改めて座り直した。
「チナを、アムジャドの妃に迎え、将来の王妃としての仕事を任せようと思う。」
「父上!」
アムジャドは立ち上がり、顔を覆った。
まるで神に感謝しているようだった。
「チナの、アムジャドへの想い。そしてアムジャドのチナへの愛。二つとも別つ事ができないものだと、判断した。これからは、公に夫婦として一緒に暮らせばよい。」
「ありがとうございます。父上。」
「国王。なんてお礼を申し上げれば……」
泣きじゃくる私に、国王は微笑んでくれた。
「礼は、これからの役目を果たしてくれれば、それでいい。それよりも一人の親として、アムジャドを愛してくれた事。感謝しても感謝しきれない。」
「さあ、チナ。薬を飲んで。」
アムジャドから薬を渡されても、喉が痛くて、飲む気がしない。
「チナ。どうした?薬を飲まないと、治らないよ。」
「うん……」
目を半分開け、遠くを見つめる私を、アムジャドは抱き起してくれて、口移しで薬を飲ませてくれた。
「ん?」
ゴクンと薬を飲んだ私を見て、アムジャドのため息が聞こえる。
「よかった。」
アムジャドに抱き寄せられ、彼の匂いが鼻をくすぐる。
「この2,3日。チナの事ばかり考えていた。チナを失ってしまったら、僕は生きていけない。」
私の頬に、アムジャドの涙が落ちてきた。
「チナ。もう僕は、チナのいない世界に戻りたくない。一緒に暮らそう。僕は、皇太子の座を降りるよ。」
「アムジャド……」
「静かな場所に移って、僕達だけで暮らすんだ。その方がいい。」
「待って。アムジャド。」
私はアムジャドの頬に流れる涙を拭った。
「私達には、私達にしかできない仕事があるわ。それを投げだすなんて、できない。」
「僕には、弟がいる。弟に皇太子を譲ればいいんだ。」
「ダメよ。アムジャドにしか、できない事よ。この国の人達の為に、皇太子の座を降りては駄目。」
みんな、アムジャドがこの国の王になる事を、待ち望んでいる。
この国は、アムジャドを必要としている。
それを変えてはいけない。
「私こそ、王妃の座を辞退する。医者をやりながら王妃もやるなんて、私には無理だもの。」
「駄目だ、駄目だ。チナ以外の妻なんて、僕には必要ない!」
こんなに弱々しいアムジャドを見るのは、初めてだった。
まるで、母親に捨てられるのを恐れている子供みたいだ。
「アムジャド。泣かないで。私、必ず病気を治すから。そうしたらまた、一緒にいたい。」
「約束だよ、チナ。僕を一人置いて、逝ってしまったら駄目だ。」
アムジャドの私を抱きしめる力が、強くなる。
「アムジャド。これ以上ここにいたら、病気が移ってしまうわ。」
「チナの移されるのなら、本望だよ。」
アムジャドが私を見つめる。
「チナ。どうして僕は、こんなにもチナを愛しているだろう。」
「えっ?」
「君に会うまで、僕は孤独だった。どんな人と付き合おうと、僕の孤独を満たしてくれる人はいなかった。君だけだ。一緒にいると僕がこの世に生まれてきた意味を思い知らされる。」
アムジャドは、私の額にキスをした。
「チナ。僕はチナと出会う為に、この世に生まれてきたんだよ。チナもそうであって欲しいな。」
私は、クスッと笑った。
「聞くまでもないでしょう?」
「チナ?」
「私もあなたに会う為に、この世に生まれた。じゃなきゃ、日本を離れて、中東に来ないわよ。」
自分が病気である事も忘れ、私達はずっと抱きしめ合っていた。
アムジャドが看病してくれたおかげで、翌日には病気も治っていた。
「どう?チナ。今日の体調は。」
「悪くはないわ。アムジャド。あなたのおかげよ。」
私達は我慢していたキスをしようと、顔を近づけた。
その時だった。
「お邪魔するよ。」
扉が開いて、国王が私の部屋へ現れた。」
「おっ、本当に邪魔をしてしまったか。」
「父上……」
4日振りのキスをお預けされ、アムジャドはムスッとしている。
「今日、この部屋を訪れたのは、他でもない。二人の処遇についてだ。」
「私達の?」
アムジャドが隣に座り、私の手を握ってくれた。
「チナは、この国のお抱え医師を望んでいたな。」
「はい。」
「今回のサハルでの一件、チナ達日本人医師には、心から感謝している。そのお礼をとして、チナとDrツダを、この国のお抱え医師として迎えようと思う。」
「国王……それでは、私達もモルテザー王国公認の医師として、働けるのですね。」
「ああ。こちらこそ、お願いしたいくらいだ。」
私は喜びの涙を流した。
「そしてもう一つ、二人の事だ。」
「はい。」
アムジャドが改めて座り直した。
「チナを、アムジャドの妃に迎え、将来の王妃としての仕事を任せようと思う。」
「父上!」
アムジャドは立ち上がり、顔を覆った。
まるで神に感謝しているようだった。
「チナの、アムジャドへの想い。そしてアムジャドのチナへの愛。二つとも別つ事ができないものだと、判断した。これからは、公に夫婦として一緒に暮らせばよい。」
「ありがとうございます。父上。」
「国王。なんてお礼を申し上げれば……」
泣きじゃくる私に、国王は微笑んでくれた。
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