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釣り合わない

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「落ち着いて。私は大丈夫だから。」

アムジャドは、片手で私を抱き寄せた。

「ごめん。チナに寂しい思いをさせたくないんだ。」

「うん。解ってる。でも焦らずに、一つ一つ乗り越えていきましょう。」

するとアムジャドは、クスッと笑った。

「チナの方が年下なのに、僕の方が励まされている。」

「励ますのに、年齢なんて関係ないわよ。」

額にキスを落とされて幸せに浸っていると、側にいた女中の人達がキャーキャー言っていた。

「さすが、皇太子様の選んだお方。未来の王妃に相応しい方だわ。」

「ちょっと!」

「なあに?日本人だからダメだって言うの?私はいいなぁって思うわ。だって皇太子様、日本が好きだもの。」

私は嬉しくなって、その人達に近づいた。

「ありがとう。」

お礼を言うと彼女達の瞳はキラキラしていた。

「私、絶対王妃様付きの女中に立候補します。」

「やだ、私も!」

「私もよ!」

少なくてもここにいる人達には、私は受け入れられているようだ。

「あっ……」

「あらら……」

勝手に涙が溢れてきた。

「未来の王妃、泣かないで下さい。」

「ううん。泣いてしまう程嬉しいの。皆に歓迎されている事が。」

するとアムジャドが私の涙を拭ってくれた。

「皆、この者はチナと言うのだ。宜しく頼む。」

「チナ様!私達の方こそ、宜しくお願いします。」

みんな、初対面の私に頭を下げてくれる。

私は改めて、嬉しくなった。

「こちらこそ。」

私は何度も何度も頭を下げた。


日本人の私を、迎えてくれてありがとう。


そしてイマードさんが現れた。

「アムジャド皇太子、チナ様。昼食会のご準備が整いました。」

「分かった。」

心なしか、アムジャドも緊張しているように見えた。

「昼食会って、誰が来るの?」

「普段は父の友人とか、親戚とかが多いよ。でも今日は誰が来るのだろう。親戚も来ていないし。父の友人が訪ねて来ているとも知らされていない。」

アムジャドの難しい表情に、私も不安になる。

「まあいい。どんな相手が来たって、僕はチナとの結婚を父王に認めて貰う。」

「うん。」

そして私達は、イマードさんと共に、昼食会の会場へと足を運んだ。

「アムジャド皇太子は、この席へ。チナ様は隣にお座り下さい。」

「なぜチナは向かい側の席ではないのだ。」

「アムジャド皇太子の隣の席がよろしいかと思いまして。」

椅子を引かれ、私はその通りにアムジャドの隣の席へ。

「向かい側の席に座るのが、そんなに意味のある事なの?」

私はアムジャドに尋ねた。

「ああ。普段はパートナーが座る席だ。」

私の胸に不安が過る。

という事は、私はアムジャドのパートナーではないと言う事?


そしてアムジャドのお父さんが登場した。

「待たせたか。」

「いえ。我々も今、来たところです。」

そしてお父さんの後ろを見て、身体が凍り付いた。

ジャミレトさんが、家族らしき人を連れて、やって来たからだ。

「ジャミレト様、こちらへ。」

正に座った席は、アムジャドの向かい側の席。

「これは一体!?」

アムジャドは立ち上がった。

「何を驚いている。ジャミレトはおまえの婚約者だろ。」

お父さんの言葉に、唇を噛み締めるアムジャドがいた。

「アムジャド皇太子。どうかお座り下さい。」

ジャミレトさんのお父さんに促され、アムジャドは仕方なさそうに席へ座った。

「さあ、今日はアムジャドとジャミレトの結婚を決める会だ。」

お父さんが優雅に両手を広げる。

「それと併せて、東洋の花を妾妃に迎えるとは。我が息子ながらよくやった。」

えっ……妾妃?

やっぱり私達の結婚は、鼻から認められないの?

「待って下さい。」

アムジャドが、手を挙げた。

「この場を借りて、申し上げたい事があります。」

アムジャドは私を一緒に立ち上がらせた。

「僕はジャミレトとの婚約を破棄します。」
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