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会ってくれないか
④
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知っていて、会いたいと言っている。
「アムジャド。」
私は立ち眩みがして、その場に座ってしまった。
「チナ。」
直ぐにアムジャドが、ベッドに運んでくれて助かったけれど、一人だったら、どうしたらいいか分からなかった。
「どうなさるんですか?皇太子。」
「父王の望みは、なるべく叶えてやりたい。それが皇太子である僕の仕事だ。だが、肝心のチナはこの通りだ。僕はチナの気持ちも、大切にしたい。」
「かしこまりました。父王様には、直ぐには無理だと申しておきます。」
「宜しく。」
「はい。」
イマードさんは、テントの中から出て行ってしまった。
「イマードさんは今、アムジャドの側にいないのね。」
「僕がこの町に来ている間、宮殿の事を任せているんだ。」
イマードさんは、私をこのモルテザー王国に連れて来たくはなかったはずだ。
それは、私がアムジャドの奥さんになっては、困るから。
「イマードさんは、私達を引き裂いたわ。」
「分かっている。帰国後しばらくは、イマードと話す事はしなかった。」
あんな仲の良かった二人が、口も利かなったなんて。
胸が痛い。
「だがイマードは、私の肩腕なんだ。そこは分かってほしい。」
「うん。」
そして何を血迷ったのか、アムジャドの腕を握った。
「ねえ、イマードさんと私、どっちが大切?」
「チナ……」
「解ってる!イマードさんだって事ぐらい!でも、イマードさんがどうしても私と結婚するのは駄目だって言ったら、どうするの?」
アムジャドは、腕から私の手を取って、逆にその手を握ってくれた。
「その時は、何としてでもイマードを説得するよ。」
「アムジャド。」
「チナは全然わかっていない。僕には、チナしかいないんだって事が。」
私達は微笑み合って、キスをした。
私にも、アムジャドしかいない。
それはアムジャドも同じだってこと、いい加減に気づかないと。
「またアムジャドに、元気貰っちゃった。」
「いつでも言ってくれ。チナに元気を与えるのは、私の役割だ。」
「うん。」
私は体を起こすと、アムジャドの目の前に立った。
「私、アムジャドのお父さんに会うわ。」
「チナ。本当か?」
「うん。だってアムジャドのお父さんだもん。私がアムジャドと結婚するのは、どうしても会わなきゃならない人でしょ?それに、医師として働く事も、認めて貰わなきゃ。」
「その通りだ。」
私とアムジャドは、両手を合わせた。
「さすがだ。」
「えっ?」
「チナは、どんどん強くなっていく。魅力的な女性になっていってるよ。」
「ええ?」
魅力的な女性だなんて、日本の男性は言ってくれないだろうなぁ。
ははは。逆に照れちゃう。
「益々、誰にも渡したくなくなる。」
アムジャドは、私の手の甲にキスを落とした。
「だとしたら、アムジャドの愛のおかげよ。」
「僕の?そうだとしたら、嬉しいな。」
改めて見ると、アムジャドはカッコいいと思う。
こんなカッコいい人に愛されているなんて、私は幸運だと思う。
「じゃあ、いつがいい?あっ、もう2週間しか時間がないんだっけ。」
「そうだな。のん気に考えている時間はない。明日はどうだ?」
「明日!?」
「善は急げというだろう。」
前も思ったけれど、アムジャドって何でそんな難しい言葉、知ってるんだろう。
「よし!明日、宮殿へ行こう。決まりだ。」
アムジャドは、心なしか嬉しそうだった。
そうだよね。自分の好きな人が、父親に会うんだもの。
結婚の第1歩って感じだわ。
「ああ、楽しみだ。きっとチナの事、父王も気に入って下さるはずだ。」
この期待に、何とか応えないとね。
その日の夜は、久しぶりに緊張で眠れなかった。
テントの中でアラブの服に着替えて、途中診療所に立ち寄った。
「なに?父親に会うだと?」
「ヘマするなよ!」
津田先生も土井先生も、励ましてくれているのか、全く解らないひとこと。
「行ってきます。」
「頑張れー!」
私は二人の声援を背に、モルテザー王国の宮殿に向かった。
「アムジャド。」
私は立ち眩みがして、その場に座ってしまった。
「チナ。」
直ぐにアムジャドが、ベッドに運んでくれて助かったけれど、一人だったら、どうしたらいいか分からなかった。
「どうなさるんですか?皇太子。」
「父王の望みは、なるべく叶えてやりたい。それが皇太子である僕の仕事だ。だが、肝心のチナはこの通りだ。僕はチナの気持ちも、大切にしたい。」
「かしこまりました。父王様には、直ぐには無理だと申しておきます。」
「宜しく。」
「はい。」
イマードさんは、テントの中から出て行ってしまった。
「イマードさんは今、アムジャドの側にいないのね。」
「僕がこの町に来ている間、宮殿の事を任せているんだ。」
イマードさんは、私をこのモルテザー王国に連れて来たくはなかったはずだ。
それは、私がアムジャドの奥さんになっては、困るから。
「イマードさんは、私達を引き裂いたわ。」
「分かっている。帰国後しばらくは、イマードと話す事はしなかった。」
あんな仲の良かった二人が、口も利かなったなんて。
胸が痛い。
「だがイマードは、私の肩腕なんだ。そこは分かってほしい。」
「うん。」
そして何を血迷ったのか、アムジャドの腕を握った。
「ねえ、イマードさんと私、どっちが大切?」
「チナ……」
「解ってる!イマードさんだって事ぐらい!でも、イマードさんがどうしても私と結婚するのは駄目だって言ったら、どうするの?」
アムジャドは、腕から私の手を取って、逆にその手を握ってくれた。
「その時は、何としてでもイマードを説得するよ。」
「アムジャド。」
「チナは全然わかっていない。僕には、チナしかいないんだって事が。」
私達は微笑み合って、キスをした。
私にも、アムジャドしかいない。
それはアムジャドも同じだってこと、いい加減に気づかないと。
「またアムジャドに、元気貰っちゃった。」
「いつでも言ってくれ。チナに元気を与えるのは、私の役割だ。」
「うん。」
私は体を起こすと、アムジャドの目の前に立った。
「私、アムジャドのお父さんに会うわ。」
「チナ。本当か?」
「うん。だってアムジャドのお父さんだもん。私がアムジャドと結婚するのは、どうしても会わなきゃならない人でしょ?それに、医師として働く事も、認めて貰わなきゃ。」
「その通りだ。」
私とアムジャドは、両手を合わせた。
「さすがだ。」
「えっ?」
「チナは、どんどん強くなっていく。魅力的な女性になっていってるよ。」
「ええ?」
魅力的な女性だなんて、日本の男性は言ってくれないだろうなぁ。
ははは。逆に照れちゃう。
「益々、誰にも渡したくなくなる。」
アムジャドは、私の手の甲にキスを落とした。
「だとしたら、アムジャドの愛のおかげよ。」
「僕の?そうだとしたら、嬉しいな。」
改めて見ると、アムジャドはカッコいいと思う。
こんなカッコいい人に愛されているなんて、私は幸運だと思う。
「じゃあ、いつがいい?あっ、もう2週間しか時間がないんだっけ。」
「そうだな。のん気に考えている時間はない。明日はどうだ?」
「明日!?」
「善は急げというだろう。」
前も思ったけれど、アムジャドって何でそんな難しい言葉、知ってるんだろう。
「よし!明日、宮殿へ行こう。決まりだ。」
アムジャドは、心なしか嬉しそうだった。
そうだよね。自分の好きな人が、父親に会うんだもの。
結婚の第1歩って感じだわ。
「ああ、楽しみだ。きっとチナの事、父王も気に入って下さるはずだ。」
この期待に、何とか応えないとね。
その日の夜は、久しぶりに緊張で眠れなかった。
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「なに?父親に会うだと?」
「ヘマするなよ!」
津田先生も土井先生も、励ましてくれているのか、全く解らないひとこと。
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「頑張れー!」
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