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蜜愛

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「ねえ、今更なんだけど。」

「何?」

「本当に、アムジャドなの?」

「これを被っていると、そう見えない?」

アムジャドは、ターバンを外した。

そこには、私が見知ったアムジャドの姿があった。

思わず涙が出る。

「この服も脱いだ方がいいかい?」

「ううん。」

私は改めて、アムジャドの胸にしがみついた。

「ああ、アムジャド。私のアムジャド。」

「そうだよ。僕はチナのモノだよ。」

甘い声が、耳の側で聞こえてくる。

日本にいた頃の、私達を思い出す。


「私の事、忘れていないかったのね。」

「忘れられるものか。僕の愛した人だ。」

私達は、久しぶりに唇を交わした。

「チナは?僕の事忘れていなかった?」

「一日だって、忘れた事はないわ。あなたに会いたくて、たまらなかった。」

もう一度私達はキスすると、アムジャドの唇が、首筋にかかった。

「アムジャド……」

「避けないでくれ。もう抱きたくて、仕方ないんだ。」

服の下から、アムジャドの手が這い上がってくる。

「ああ……」

「チナ……」

すると外から、声が聞こえた。

「殿下、お食事の用意できました。」

「ああ。しばらくしたら行く。」

「かしこまりました。」

外の人の気配が消えた。

「行かなくていいの?」

「ああ。先にチナを味わってからだ。」

そして私は服を脱がされ、アムジャドの手に合わせて、体をくねらせた。

「あぁ……アムジャド……」

「次から次へと蜜が溢れてくるよ。」

耳元でそんな事を言われると、感じてくる。

「僕がいない間、浮気していなかった?」

「していない。アムジャドは?」

「僕もしていないよ。君の面影ばかり抱いていた。」

アムジャドが上半身裸になる。

あの逞しい体は、続行中だ。

「チナ。君を再びこの腕の中に抱けるなんて、嬉しくて仕方がない。」

「アムジャド……」


ベッドの横の明りが消されると、私達は一つに重なり合った。

日本とモルテザー王国。

遠く離れていた想いが、また一緒になる。


そしていつの間にか眠っていた私は、灯された明かりで目が覚めた。

「アムジャド?」

「起きた?宴の時間だよ。」

「宴?」

身体を起こすと、そこには給仕の人や、踊り子達が膝を着いて待っていた。

「えっ……」

「どれもチナを喜ばせる為に用意した人達だ。」

アムジャドがサインを送ると、音楽が鳴りだし、踊り子たちが踊り始めた。

そして女の人達が、私の側に来て、サーとシーツを広げる。

「チナ様。お着替えを。」

「着替え?」

用意されたのは、薄いスカートとチューブトップ。

いくら砂漠で暑いからと言って、肌出し過ぎじゃない?

「さあさあ。遠慮なさらずに。」

女性達はそそくさと、私の体にスカートとチューブトップを巻き付けた。

シーツを降ろされた私は、さぞかし違った人に見えただろう。

「お似合いですわ、チナ様。」

「そう?」

「如何でしょう、殿下。」

振り向いたアムジャドは、にこっと笑った。

「ああ。よく似合う。」

自分の姿に、頬が赤くなる。

「ありがとう。」

「チナ。おいで。」

アムジャドの隣に座ると、肩に腕を回された。

うわー。アムジャドの女って感じがする。

「どう?楽しいだろう?」

「そうね。」

豪華な食事。陽気な音楽。艶めかしい踊り子たち。

どれも夢の中にいる気にさせてくれた。

そして一番、私が夢を見ているのは。

私は、アムジャドの顔を見た。

「ん?」

「ううん。何でもない。」

見つめ合うと、アムジャドは微笑んでくれた。


ー アムジャド皇太子との恋愛は、大変なものになる -


土井先生に言われた言葉。

いいの。アムジャドに会えたから。

もう未練はない。

だってこんなにも、夢みたいな宴。

あとで夢でしたって言われても、信じられるもの。

そしてアムジャドの仲も……

私の目に、涙が溜まった。


「チナ。泣かないで。」

気づいたアムジャドが、私の涙を拭ってくれた。

「これは全部現実だよ。僕がいつも君に見せる事ができる現実だ。」

アムジャドの唇が、私の唇と重なった。
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