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再会

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「もの好き?」

「おまえ達が留学生かと聞いてるんだ。」

「はい。」

土井先生は、冷たい目でもなく、温かい目でもない視線で、私達を見た。

「一人は使い物になりそうだが、そこの姉ちゃん。」

「はい。」

直々のご指名に、緊張が走った。

「なぜここに来た。」

「えーっと……」

「即答できないのか。」

鋭い目つきで、土井先生は見て来た。

「……医療が行き届いていない場所で、最善の医療を提供したいと、思ったからです。」

「言う事は立派だな。」

今度は冷たい視線で、私を見た。

「毎年留学生をお願いされて、迎い入れるんだが、どうも使い物にならない者ばかりだ。お前らは違うってところを見せて貰うよ。」

「お願いします。」

頭を下げると、土井先生から肩を叩かれた。

「お姉ちゃんは、まだ学生だろ。無理すんな。」

見透かされた気がして、胸が痛かった。

「ところで我々は、どうすればいいですか?」

津田先生が荷物を降ろすと、今度は先生にも、土井先生は冷たい目線。

「あんたは医者だろ。俺の指示がなくても勝手に患者を治せ。」

「はい。」

厳しい指示。

これは本当に勉強なんだろうか。

「じゃあ、次の患者さんを。」

早速津田先生は、並んでいる患者さんに、手を差し伸べた。

すると患者さんは、首を横に振って、何か言っている。

「Dr,ドイではないと、診てもらいたくないと言っています。」

津田先生は、ガクッときている。

「私は、Dr,ドイと同じ日本の医者です。信じて下さい。」

そう言うと、何とか津田先生の前にやってきた。

「千奈ちゃん、バイタル測ってみる?」

いよいよ私の出番だ。

「はい。」

聴診器を持って、血圧計を探した。

「お姉ちゃん、探し物ならそこだ。」

「はい。」

見ると一つだけ古い血圧計があった。

ゴクンと息を飲んで、その機械を持った。

初めて手動で血圧を測る。

「腕、失礼しますね。」

帯を上腕に巻き付け、関節の太い静脈に聴診器を当てた。

右手で圧をかけて、ちょうどいいところで緩めると、ドクドクと言う音がした。

「110の56です。」

「次は脈と呼吸だ。」

「は、はい。」

落ち着けと自分に言い聞かせる。

手首に右手の人差し指と中指、薬指を当てた。

これもドクンドクンと脈打っている。

「脈を数えるのは、30秒くらいでいいよ。あとでそれを倍にするんだ。残りの30秒で、胸の動きを見る。」

「はい。」

測り終えると、土井先生がこっちを見た。

「実習は終わったか?」

「えっ、は、はい。」

慌てて返事をすると、土井先生は私を見た。

「じゃあ、姉ちゃんは次々とバイタル測って、俺と、あー名前なんだ。」

「森川です。」

「姉ちゃんじゃなくて、そっちの先生。」

「……津田先生です。」

「そう。津田先生に報告しろ。分かったな。」

「はい。」

そして私は、改めて現状を知った。

建物の中を覗いてる人達は、野次馬なんかじゃなくて、みんな患者さんだったのだ。

建物が狭い為、外に並んでいるだけだったのだ。

「こんなに患者さんが……」

よく見ると、老いた人から若い人、子供、乳幼児までいる。

「老人から小児科まで診なきゃいけないんだ。」

私は頭を激しく振った。

ううん。病院って言うか、患者さんを診る場所はここにしかないんだから、迷っている暇はない。

「次の患者さん、どうぞ。」

手招きすると、次は老人の人が来た。

「えーっと、腕を出して下さい。」

日本語で言っても、伝わらない。

「あの……通訳さん。」

「ごめんなさい。Dr,ツダに付いてないと。」

という事は、私は通訳なしか。

迷った挙句私は腕を指差した。

すると患者さんは、腕を出す。

そして私はバイタルを測るのだ。

「シュクラン(ありがとう)」

そう言うと患者さんは、「アフワン(どういたしまして)」と返事してくれた。

次から次へとバイタルを測って、土井先生と津田先生にそれを報告する。

それを繰り返して、一日は終わった。

「どうだ、一日目は。」
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