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再会
①
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「もの好き?」
「おまえ達が留学生かと聞いてるんだ。」
「はい。」
土井先生は、冷たい目でもなく、温かい目でもない視線で、私達を見た。
「一人は使い物になりそうだが、そこの姉ちゃん。」
「はい。」
直々のご指名に、緊張が走った。
「なぜここに来た。」
「えーっと……」
「即答できないのか。」
鋭い目つきで、土井先生は見て来た。
「……医療が行き届いていない場所で、最善の医療を提供したいと、思ったからです。」
「言う事は立派だな。」
今度は冷たい視線で、私を見た。
「毎年留学生をお願いされて、迎い入れるんだが、どうも使い物にならない者ばかりだ。お前らは違うってところを見せて貰うよ。」
「お願いします。」
頭を下げると、土井先生から肩を叩かれた。
「お姉ちゃんは、まだ学生だろ。無理すんな。」
見透かされた気がして、胸が痛かった。
「ところで我々は、どうすればいいですか?」
津田先生が荷物を降ろすと、今度は先生にも、土井先生は冷たい目線。
「あんたは医者だろ。俺の指示がなくても勝手に患者を治せ。」
「はい。」
厳しい指示。
これは本当に勉強なんだろうか。
「じゃあ、次の患者さんを。」
早速津田先生は、並んでいる患者さんに、手を差し伸べた。
すると患者さんは、首を横に振って、何か言っている。
「Dr,ドイではないと、診てもらいたくないと言っています。」
津田先生は、ガクッときている。
「私は、Dr,ドイと同じ日本の医者です。信じて下さい。」
そう言うと、何とか津田先生の前にやってきた。
「千奈ちゃん、バイタル測ってみる?」
いよいよ私の出番だ。
「はい。」
聴診器を持って、血圧計を探した。
「お姉ちゃん、探し物ならそこだ。」
「はい。」
見ると一つだけ古い血圧計があった。
ゴクンと息を飲んで、その機械を持った。
初めて手動で血圧を測る。
「腕、失礼しますね。」
帯を上腕に巻き付け、関節の太い静脈に聴診器を当てた。
右手で圧をかけて、ちょうどいいところで緩めると、ドクドクと言う音がした。
「110の56です。」
「次は脈と呼吸だ。」
「は、はい。」
落ち着けと自分に言い聞かせる。
手首に右手の人差し指と中指、薬指を当てた。
これもドクンドクンと脈打っている。
「脈を数えるのは、30秒くらいでいいよ。あとでそれを倍にするんだ。残りの30秒で、胸の動きを見る。」
「はい。」
測り終えると、土井先生がこっちを見た。
「実習は終わったか?」
「えっ、は、はい。」
慌てて返事をすると、土井先生は私を見た。
「じゃあ、姉ちゃんは次々とバイタル測って、俺と、あー名前なんだ。」
「森川です。」
「姉ちゃんじゃなくて、そっちの先生。」
「……津田先生です。」
「そう。津田先生に報告しろ。分かったな。」
「はい。」
そして私は、改めて現状を知った。
建物の中を覗いてる人達は、野次馬なんかじゃなくて、みんな患者さんだったのだ。
建物が狭い為、外に並んでいるだけだったのだ。
「こんなに患者さんが……」
よく見ると、老いた人から若い人、子供、乳幼児までいる。
「老人から小児科まで診なきゃいけないんだ。」
私は頭を激しく振った。
ううん。病院って言うか、患者さんを診る場所はここにしかないんだから、迷っている暇はない。
「次の患者さん、どうぞ。」
手招きすると、次は老人の人が来た。
「えーっと、腕を出して下さい。」
日本語で言っても、伝わらない。
「あの……通訳さん。」
「ごめんなさい。Dr,ツダに付いてないと。」
という事は、私は通訳なしか。
迷った挙句私は腕を指差した。
すると患者さんは、腕を出す。
そして私はバイタルを測るのだ。
「シュクラン(ありがとう)」
そう言うと患者さんは、「アフワン(どういたしまして)」と返事してくれた。
次から次へとバイタルを測って、土井先生と津田先生にそれを報告する。
それを繰り返して、一日は終わった。
「どうだ、一日目は。」
「おまえ達が留学生かと聞いてるんだ。」
「はい。」
土井先生は、冷たい目でもなく、温かい目でもない視線で、私達を見た。
「一人は使い物になりそうだが、そこの姉ちゃん。」
「はい。」
直々のご指名に、緊張が走った。
「なぜここに来た。」
「えーっと……」
「即答できないのか。」
鋭い目つきで、土井先生は見て来た。
「……医療が行き届いていない場所で、最善の医療を提供したいと、思ったからです。」
「言う事は立派だな。」
今度は冷たい視線で、私を見た。
「毎年留学生をお願いされて、迎い入れるんだが、どうも使い物にならない者ばかりだ。お前らは違うってところを見せて貰うよ。」
「お願いします。」
頭を下げると、土井先生から肩を叩かれた。
「お姉ちゃんは、まだ学生だろ。無理すんな。」
見透かされた気がして、胸が痛かった。
「ところで我々は、どうすればいいですか?」
津田先生が荷物を降ろすと、今度は先生にも、土井先生は冷たい目線。
「あんたは医者だろ。俺の指示がなくても勝手に患者を治せ。」
「はい。」
厳しい指示。
これは本当に勉強なんだろうか。
「じゃあ、次の患者さんを。」
早速津田先生は、並んでいる患者さんに、手を差し伸べた。
すると患者さんは、首を横に振って、何か言っている。
「Dr,ドイではないと、診てもらいたくないと言っています。」
津田先生は、ガクッときている。
「私は、Dr,ドイと同じ日本の医者です。信じて下さい。」
そう言うと、何とか津田先生の前にやってきた。
「千奈ちゃん、バイタル測ってみる?」
いよいよ私の出番だ。
「はい。」
聴診器を持って、血圧計を探した。
「お姉ちゃん、探し物ならそこだ。」
「はい。」
見ると一つだけ古い血圧計があった。
ゴクンと息を飲んで、その機械を持った。
初めて手動で血圧を測る。
「腕、失礼しますね。」
帯を上腕に巻き付け、関節の太い静脈に聴診器を当てた。
右手で圧をかけて、ちょうどいいところで緩めると、ドクドクと言う音がした。
「110の56です。」
「次は脈と呼吸だ。」
「は、はい。」
落ち着けと自分に言い聞かせる。
手首に右手の人差し指と中指、薬指を当てた。
これもドクンドクンと脈打っている。
「脈を数えるのは、30秒くらいでいいよ。あとでそれを倍にするんだ。残りの30秒で、胸の動きを見る。」
「はい。」
測り終えると、土井先生がこっちを見た。
「実習は終わったか?」
「えっ、は、はい。」
慌てて返事をすると、土井先生は私を見た。
「じゃあ、姉ちゃんは次々とバイタル測って、俺と、あー名前なんだ。」
「森川です。」
「姉ちゃんじゃなくて、そっちの先生。」
「……津田先生です。」
「そう。津田先生に報告しろ。分かったな。」
「はい。」
そして私は、改めて現状を知った。
建物の中を覗いてる人達は、野次馬なんかじゃなくて、みんな患者さんだったのだ。
建物が狭い為、外に並んでいるだけだったのだ。
「こんなに患者さんが……」
よく見ると、老いた人から若い人、子供、乳幼児までいる。
「老人から小児科まで診なきゃいけないんだ。」
私は頭を激しく振った。
ううん。病院って言うか、患者さんを診る場所はここにしかないんだから、迷っている暇はない。
「次の患者さん、どうぞ。」
手招きすると、次は老人の人が来た。
「えーっと、腕を出して下さい。」
日本語で言っても、伝わらない。
「あの……通訳さん。」
「ごめんなさい。Dr,ツダに付いてないと。」
という事は、私は通訳なしか。
迷った挙句私は腕を指差した。
すると患者さんは、腕を出す。
そして私はバイタルを測るのだ。
「シュクラン(ありがとう)」
そう言うと患者さんは、「アフワン(どういたしまして)」と返事してくれた。
次から次へとバイタルを測って、土井先生と津田先生にそれを報告する。
それを繰り返して、一日は終わった。
「どうだ、一日目は。」
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