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婚約者
①
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車の運転手の人がすぐに救急車を呼んでくれて、私とアムジャドは病院に向かった。
「アムジャド……私よ、千奈よ。分かる?」
薄っすらと目を開けたアムジャドは、うんと頷いた。
「ご家族の方?」
救急隊の人に、声を掛けられた。
「いいえ。恋人です。」
「彼女さん、家族の連絡先知っている?」
「すみません。私、分からなくて……」
こんな時、どうすればいいんだろう。
その時、イマードさんの顔が浮かんだ。
彼は、アムジャドの友人……ううん、それ以上の関係なのかもしれない。
”アムジャト様”
そう呼んだイマードさんに、連絡しなければならない気がした。
「彼、留学生なんです。大学に連絡してみてもいいですか?」
「はい。」
私はスマホから、大学の留学生会館に連絡し、イマードさんに来てくれるように頼んだ。
1時間後、イマードさんは病院に駆け付けてくれた。
「チナ様!」
「イマードさん、こっち!」
「アムジャト様の様子は?」
「まだ、手術中で。」
その時だった。
手術室が開いて、アムジャドを乗せたベッドが出て来た。
「アムジャト様!」
「まだ麻酔が効いていますから。」
看護師に言われ、イマードさんと私は、そのままアムジャドに付いて行った。
「しばらくはICUに入院して頂きますから。」
「はい。」
私はアムジャドが眠るベッドの側に座った。
「……何があったんですか?」
「私が車に轢かれそうになって、アムジャドが助けてくれたんです。」
するとイマードさんは、唇を噛み締めた。
「助けてくれたって……アムジャト様に何かあったら、どうなるか分かっているんですか?」
「すみません。」
「すみませんで、済む事ではないんですよ!?」
興奮したイマードさんを、周りの看護師さんが宥める。
きっとアムジャドは偉い人で、私とは身分が違う人で、何かあったら代わりのきかない人なんだわ。
「私がそのまま、車に轢かれればよかったんでしょうか。」
「そうですね。」
涙が出そうになったけれど、奥歯を噛み締めて、我慢した。
「……万が一、それで私が亡くなっても?」
「そうなったら、アムジャド様は悲しむでしょうね。ですが悲しみはいつか癒えます。大事なのは、アムジャド様がご無事でいられる事です。」
私はアムジャドのベッドに、顔を埋めた。
「誤解しないでください。そのくらいの覚悟ではないと、アムジャド様の側には、いられないと言う事です。」
その時、アムジャドの指がピクッと動いた。
「チナ……」
「アムジャド!」
私はアムジャドの手を握った。
「僕は大丈夫だ。心配させた。」
「ううん。私の方こそ、守ってくれてありがとう。」
「当たり前だ。チナに何かあったら、僕は生きていけない。」
「アムジャド……」
イマードさんから責められた今、アムジャドの言葉が何よりも、私の心を癒してくれた。
「アムジャド様。」
イマードさんが、アムジャドの側に寄った。
「このような行動、今後はお控え下さい。」
「分かっている。おまえが言いたい事は。」
「本当に分かっていらっしゃるんですか?あなた様が亡くなりでもしたら、私達は……」
あの冷たいイマードさんの目に、涙が薄っすらと光った。
「一体誰を頼りに、生きていけばよいのか、分からなくなります。」
「ごめん。イマード。」
イマードさんが涙を浮かべているのを見て、本当はアムジャドの事を、心から大切にしているのを知った。
イマードさんに、あそこまで言わせたアムジャドは、やっぱり大事な人なんだわ。
「アムジャド……私、あなたの側にいるって言う覚悟が、足りなかったわ。」
「チナ?」
「これからは、あなたの事。自分以上に大切にする。」
そうじゃないと、イマードさんやその後ろにいる人達を、納得させられない。
「チナ。いいんだ。」
アムジャドは、私の手を握り返した。
「チナは、自分を大切にしてほしい。そうじゃないと、僕が悲しむ。」
「アムジャド。どうしてあなたは、私の事をそこまで。」
「決まっているだろう。愛しているからだ。」
「アムジャド……私よ、千奈よ。分かる?」
薄っすらと目を開けたアムジャドは、うんと頷いた。
「ご家族の方?」
救急隊の人に、声を掛けられた。
「いいえ。恋人です。」
「彼女さん、家族の連絡先知っている?」
「すみません。私、分からなくて……」
こんな時、どうすればいいんだろう。
その時、イマードさんの顔が浮かんだ。
彼は、アムジャドの友人……ううん、それ以上の関係なのかもしれない。
”アムジャト様”
そう呼んだイマードさんに、連絡しなければならない気がした。
「彼、留学生なんです。大学に連絡してみてもいいですか?」
「はい。」
私はスマホから、大学の留学生会館に連絡し、イマードさんに来てくれるように頼んだ。
1時間後、イマードさんは病院に駆け付けてくれた。
「チナ様!」
「イマードさん、こっち!」
「アムジャト様の様子は?」
「まだ、手術中で。」
その時だった。
手術室が開いて、アムジャドを乗せたベッドが出て来た。
「アムジャト様!」
「まだ麻酔が効いていますから。」
看護師に言われ、イマードさんと私は、そのままアムジャドに付いて行った。
「しばらくはICUに入院して頂きますから。」
「はい。」
私はアムジャドが眠るベッドの側に座った。
「……何があったんですか?」
「私が車に轢かれそうになって、アムジャドが助けてくれたんです。」
するとイマードさんは、唇を噛み締めた。
「助けてくれたって……アムジャト様に何かあったら、どうなるか分かっているんですか?」
「すみません。」
「すみませんで、済む事ではないんですよ!?」
興奮したイマードさんを、周りの看護師さんが宥める。
きっとアムジャドは偉い人で、私とは身分が違う人で、何かあったら代わりのきかない人なんだわ。
「私がそのまま、車に轢かれればよかったんでしょうか。」
「そうですね。」
涙が出そうになったけれど、奥歯を噛み締めて、我慢した。
「……万が一、それで私が亡くなっても?」
「そうなったら、アムジャド様は悲しむでしょうね。ですが悲しみはいつか癒えます。大事なのは、アムジャド様がご無事でいられる事です。」
私はアムジャドのベッドに、顔を埋めた。
「誤解しないでください。そのくらいの覚悟ではないと、アムジャド様の側には、いられないと言う事です。」
その時、アムジャドの指がピクッと動いた。
「チナ……」
「アムジャド!」
私はアムジャドの手を握った。
「僕は大丈夫だ。心配させた。」
「ううん。私の方こそ、守ってくれてありがとう。」
「当たり前だ。チナに何かあったら、僕は生きていけない。」
「アムジャド……」
イマードさんから責められた今、アムジャドの言葉が何よりも、私の心を癒してくれた。
「アムジャド様。」
イマードさんが、アムジャドの側に寄った。
「このような行動、今後はお控え下さい。」
「分かっている。おまえが言いたい事は。」
「本当に分かっていらっしゃるんですか?あなた様が亡くなりでもしたら、私達は……」
あの冷たいイマードさんの目に、涙が薄っすらと光った。
「一体誰を頼りに、生きていけばよいのか、分からなくなります。」
「ごめん。イマード。」
イマードさんが涙を浮かべているのを見て、本当はアムジャドの事を、心から大切にしているのを知った。
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「アムジャド……私、あなたの側にいるって言う覚悟が、足りなかったわ。」
「チナ?」
「これからは、あなたの事。自分以上に大切にする。」
そうじゃないと、イマードさんやその後ろにいる人達を、納得させられない。
「チナ。いいんだ。」
アムジャドは、私の手を握り返した。
「チナは、自分を大切にしてほしい。そうじゃないと、僕が悲しむ。」
「アムジャド。どうしてあなたは、私の事をそこまで。」
「決まっているだろう。愛しているからだ。」
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