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困るんだ
④
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「チナはそれでいいのか!」
初めてアムジャドに、大きな声を出された。
「……ごめん。出会ったばかりで、気持ちが付いてこれないのは、分かるんだ。」
「そんな事ない。私だって、アムジャドがどこにいても、一緒にいたいよ。でもイマードさんがここまで言うのって、何か理由があるんじゃないの?」
アムジャドは、手で顔を押さえて、顔を横に振った。
「アムジャド?」
「ごめん。今は、ごめんしか言えない。」
きっとアムジャドには秘密があって、それは私に言えない事なのね。
「ううん。気にしないで。今は、アムジャドと一緒にいられれば、それでいいから。」
「チナ……」
ふと隣を見ると、イマードさんが消えていた。
「……アムジャド。イマードさんは、ただの友人?」
アムジャドは、黙っていた。
「アムジャド。あなたに秘密があるのは分かるけれど、その本の一部でも、教えてくれない?」
そう言った時のアムジャドは、苦しい顔をしていた。
「教えられないんだ。父上との約束で。」
「父上?」
今時お父さんの事を、父上と呼ぶだなんて。
もしかしてアムジャドは、偉い人の息子さんなのかな。
一流企業の御曹司とか?
「じゃあ、いつ教えてもらえるの?」
「帰国したら。」
アムジャドは、少し泣きながら微笑んで見せた。
「チナと一緒に国へ戻ったら、何もかも洗いざらい話すよ。」
「うん。約束よ。」
私は、小指を差し出した。
「なに?」
「指切り。」
私はアムジャドの小指に、自分の小指を絡ませた。
「指切りげんまん、お国に戻ったら、何もかも教えてくーれる。指切った。」
「チナ……」
「あっ、これ。約束破ったら、針千本飲まなきゃいけないのよ。」
するとアムジャドは、クスッと笑った。
「それは、破れないな。チナとの約束。」
私もクスッと笑った。
「でしょう?」
私がそう言うと、アムジャドは私の両手を握った。
「僕も約束しよう。国に戻ったら、何もかも話す。」
「うん。」
「何があっても、僕がチナを守る。」
「うん。」
身体がくすぐったくなる。
「そして、一生チナだけを見つめて生きると誓う。」
そしてアムジャドは、私の額に口づけをした。
「僕の国の、約束の仕方だ。」
「ありがとう。」
私はアムジャドの両手を、握り返した。
「約束を破ったら、どうなるの?」
「その必要はない。僕は、約束を破らない。」
びっくりしちゃった。
大した自信だと言うのに、アムジャドがそう言うと、本当に思えてくる。
「アムジャド……私、あなたの事が好きなの。」
「僕もだ。チナが大好きだ。」
「私の事、離さないで。」
「ああ。絶対に離さないよ。」
私がアムジャドに寄ると、彼は私を強く抱きしめてくれた。
不安が少しずつ溶けていく。
この愛さえあれば、大丈夫。
何があっても、乗り越えられる。
「イマードさんには、何て言う?」
私はアムジャドを見上げた。
「今後チナには、何も言わないように伝えておく。」
「うん。」
アムジャドは、私の髪を撫でてくれた。
「私も……アムジャドとは離れないって、イマードさんに言うね。」
「ああ。そうしてくれ。」
私達は、愛し合っている。
それは、何にも代えがたい真実だと思った。
「今日はどこに行く?」
アムジャドは、ニコッと笑った。
「私ね。行きたいパフェのお店があるの。」
「パフェ!?」
アムジャドは、子供のように無邪気な笑顔になった。
「初めてだな。パフェを食べるのは。」
「そうなの?」
「一度食べてみたいと思っていたんだ。まさか日本で、チナと一緒に食べられるとは、思っていなかったな。」
そう言われると、私も嬉しい。
「ここを真っすぐ行った、大通りにあるのよ。」
「よし、行こう。」
私はアムジャドと手を繋ぎながら、大学のキャンパスを出た。
その時だった。
車が私の方へ向かって来た。
「危ない、チナ!」
身体を突き飛ばされ、私は前に倒れ込んだ。
「アムジャド?」
車の先には、倒れて血を流しているアムジャドがいた。
「アムジャド!」
私は急いで、彼の元へ走った。
初めてアムジャドに、大きな声を出された。
「……ごめん。出会ったばかりで、気持ちが付いてこれないのは、分かるんだ。」
「そんな事ない。私だって、アムジャドがどこにいても、一緒にいたいよ。でもイマードさんがここまで言うのって、何か理由があるんじゃないの?」
アムジャドは、手で顔を押さえて、顔を横に振った。
「アムジャド?」
「ごめん。今は、ごめんしか言えない。」
きっとアムジャドには秘密があって、それは私に言えない事なのね。
「ううん。気にしないで。今は、アムジャドと一緒にいられれば、それでいいから。」
「チナ……」
ふと隣を見ると、イマードさんが消えていた。
「……アムジャド。イマードさんは、ただの友人?」
アムジャドは、黙っていた。
「アムジャド。あなたに秘密があるのは分かるけれど、その本の一部でも、教えてくれない?」
そう言った時のアムジャドは、苦しい顔をしていた。
「教えられないんだ。父上との約束で。」
「父上?」
今時お父さんの事を、父上と呼ぶだなんて。
もしかしてアムジャドは、偉い人の息子さんなのかな。
一流企業の御曹司とか?
「じゃあ、いつ教えてもらえるの?」
「帰国したら。」
アムジャドは、少し泣きながら微笑んで見せた。
「チナと一緒に国へ戻ったら、何もかも洗いざらい話すよ。」
「うん。約束よ。」
私は、小指を差し出した。
「なに?」
「指切り。」
私はアムジャドの小指に、自分の小指を絡ませた。
「指切りげんまん、お国に戻ったら、何もかも教えてくーれる。指切った。」
「チナ……」
「あっ、これ。約束破ったら、針千本飲まなきゃいけないのよ。」
するとアムジャドは、クスッと笑った。
「それは、破れないな。チナとの約束。」
私もクスッと笑った。
「でしょう?」
私がそう言うと、アムジャドは私の両手を握った。
「僕も約束しよう。国に戻ったら、何もかも話す。」
「うん。」
「何があっても、僕がチナを守る。」
「うん。」
身体がくすぐったくなる。
「そして、一生チナだけを見つめて生きると誓う。」
そしてアムジャドは、私の額に口づけをした。
「僕の国の、約束の仕方だ。」
「ありがとう。」
私はアムジャドの両手を、握り返した。
「約束を破ったら、どうなるの?」
「その必要はない。僕は、約束を破らない。」
びっくりしちゃった。
大した自信だと言うのに、アムジャドがそう言うと、本当に思えてくる。
「アムジャド……私、あなたの事が好きなの。」
「僕もだ。チナが大好きだ。」
「私の事、離さないで。」
「ああ。絶対に離さないよ。」
私がアムジャドに寄ると、彼は私を強く抱きしめてくれた。
不安が少しずつ溶けていく。
この愛さえあれば、大丈夫。
何があっても、乗り越えられる。
「イマードさんには、何て言う?」
私はアムジャドを見上げた。
「今後チナには、何も言わないように伝えておく。」
「うん。」
アムジャドは、私の髪を撫でてくれた。
「私も……アムジャドとは離れないって、イマードさんに言うね。」
「ああ。そうしてくれ。」
私達は、愛し合っている。
それは、何にも代えがたい真実だと思った。
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アムジャドは、ニコッと笑った。
「私ね。行きたいパフェのお店があるの。」
「パフェ!?」
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「初めてだな。パフェを食べるのは。」
「そうなの?」
「一度食べてみたいと思っていたんだ。まさか日本で、チナと一緒に食べられるとは、思っていなかったな。」
そう言われると、私も嬉しい。
「ここを真っすぐ行った、大通りにあるのよ。」
「よし、行こう。」
私はアムジャドと手を繋ぎながら、大学のキャンパスを出た。
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「危ない、チナ!」
身体を突き飛ばされ、私は前に倒れ込んだ。
「アムジャド?」
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「アムジャド!」
私は急いで、彼の元へ走った。
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