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第1話 また今度
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ごちゃあと、袋いっぱいにコンビニのおかずが。
「これなら、明日の朝も作らなくていいかもね。」
「だろう?」
コンビニのオーナーさんも、青志の事可愛がってくれている。
本当は高校生なんて雇わないのに、事情を知って働かせてくれているのだ。
そして、たまにこうやって、廃棄になった物を持たせてくれる。
これで食費も浮かせてもらっている。
本当に、有難い事だ。
「今日、どうだった?新しいバイト。」
「うん。斉藤さんっていうおばちゃんと、仲良くなった。窓のサッシの掃除だから、簡単だよ。」
「よかった。時給がいい掃除って、どこ掃除させるんだよって思ってたけど。」
これでも青志は、私の事を心配してくれている。
両親が生きている頃は、何も考えないで生きてきたもんね。
成人式に着る着物も、青志がレンタルしてくれて、何とかなったぐらい。
いろんな人に迷惑かけてるな。
なんとか、自立しなきゃ。青志の為にも。
そんなある日の事だった。
いつものように、38階の清掃をしていた時だ。
窓のサッシを拭き終えて、会議室から出てきた時だ。
「わっ!」
「きゃっ!」
誰かにぶつかってしまった。
「すみません。」
「いや……」
そこには、一目でカッコいいと分かる人がいた。
黒髪のふわふわ髪、鼻が高くて凛々しい顔立ち、特に目が印象的だった。
「濡れませんでしたか?」
「俺は大丈夫だったけれど、書類が……」
「書類?」
見ると、書類がバケツの中に浮いていた。
「きゃああ!すみません!」
「いや、俺が勝手にぶつかったから、君は悪くないんだけど。」
その人は、バケツの中から、ずぶ濡れになった書類を取り出した。
「こりゃあ、乾かすよりも、新しくプリントアウトした方がいいな。」
「本当にすみません。」
私は謝るしかなかった。
「本当、気にしないで。」
そう言っているけれど、その人は困った顔で、うんうん唸っている。
「あの、何かお手伝いできる事、ありますか?」
「えっ?本当?」
「はい。ご迷惑かけたので、ぜひ。」
「そりゃあ助かる。今、秘書が不在なんだ。」
秘書?
この人、いやこの方、秘書を雇えるぐらいの地位の人?
やばい。
私、とんでもない事をやらかしてしまったのでは。
「早速だけど、こっちに来てくれる?」
「はい。」
バケツを廊下の端に置いて、私は掃除のユニフォームのまま、その人に付いて行った。
着いたのは、ひらけたオフィス。
その中でも立派な部屋に通された。
「確か亀山君のパソコンは、ここだここだ。えっとパスは確か……あっ、開いた。」
その人はパソコンを操作して、水に沈んだ書類を出した。
「これを印刷するんだけど、10部冊子を作らなきゃいけないんだ。」
「10部ですか!?」
印刷して10部冊子を作るだなんて、そりゃあ1人じゃ大変だよ。
「これから印刷するから、君は1部ずつホチキスで止めていってくれる?」
「分かりました。」
私は渡されたホチキスを持って、印刷物を待ち構えた。
「えっと、確か設定は……あれ?どうだっけ。1部ずつ印刷する設定が……あれ?」
いつまで経っても、1枚も印刷されない。
私、このままここにいて、怒られないかな。
「おっ、印刷!」
そして出てきたのは、2枚。
「あれ?両面印刷になってない?」
「なってません。」
「おかしいな。」
設定で苦しんでいるを見ると、10部作るのにどれだけ時間がかかるのだろうと、不安になってしまう。
「えっと……全部で何枚印刷ですか?」
「6ページを両面印刷だから、3枚だ。それを10部。」
「ちょっと貸してみて下さい。」
これでも他の日は、事務員として働いている私。
プリンターの設定など、お構いなしだ。
「えっと、両面印刷、モノクロ、1部ずつ印刷と……」
設定を押して、印刷ボタンを押すと、直ぐに印刷が開始された。
そして3枚で、1部ずつ差し出してくれる。
このプリンター、性能いい。
「君、凄いね。ただの掃除のお姉さんじゃないだろ。」
「ははは……」
ここは笑うしかない。
そして次々と出てくる冊子を、ホチキスで止めていく。
しかもこのホチキス、芯なしだ。
お洒落。
ウチの会社でも、導入して欲しい。
そう思っている内に、最後の冊子を止めて、その人に渡した。
「あっという間だったな。」
「そうでしたね。」
いや、単にプリンターの性能がよかったからだよ。
「川畑さーん!」
「あっ!」
斉藤さんが呼んでいる。
途中でいなくなったのが、バレたんだ。
「じゃあ、私行きますね。」
「あっ、ちょっと!また今度……」
「すみませーん!」
私は謝りながら、走ってそのオフィスを抜け出した。
「これなら、明日の朝も作らなくていいかもね。」
「だろう?」
コンビニのオーナーさんも、青志の事可愛がってくれている。
本当は高校生なんて雇わないのに、事情を知って働かせてくれているのだ。
そして、たまにこうやって、廃棄になった物を持たせてくれる。
これで食費も浮かせてもらっている。
本当に、有難い事だ。
「今日、どうだった?新しいバイト。」
「うん。斉藤さんっていうおばちゃんと、仲良くなった。窓のサッシの掃除だから、簡単だよ。」
「よかった。時給がいい掃除って、どこ掃除させるんだよって思ってたけど。」
これでも青志は、私の事を心配してくれている。
両親が生きている頃は、何も考えないで生きてきたもんね。
成人式に着る着物も、青志がレンタルしてくれて、何とかなったぐらい。
いろんな人に迷惑かけてるな。
なんとか、自立しなきゃ。青志の為にも。
そんなある日の事だった。
いつものように、38階の清掃をしていた時だ。
窓のサッシを拭き終えて、会議室から出てきた時だ。
「わっ!」
「きゃっ!」
誰かにぶつかってしまった。
「すみません。」
「いや……」
そこには、一目でカッコいいと分かる人がいた。
黒髪のふわふわ髪、鼻が高くて凛々しい顔立ち、特に目が印象的だった。
「濡れませんでしたか?」
「俺は大丈夫だったけれど、書類が……」
「書類?」
見ると、書類がバケツの中に浮いていた。
「きゃああ!すみません!」
「いや、俺が勝手にぶつかったから、君は悪くないんだけど。」
その人は、バケツの中から、ずぶ濡れになった書類を取り出した。
「こりゃあ、乾かすよりも、新しくプリントアウトした方がいいな。」
「本当にすみません。」
私は謝るしかなかった。
「本当、気にしないで。」
そう言っているけれど、その人は困った顔で、うんうん唸っている。
「あの、何かお手伝いできる事、ありますか?」
「えっ?本当?」
「はい。ご迷惑かけたので、ぜひ。」
「そりゃあ助かる。今、秘書が不在なんだ。」
秘書?
この人、いやこの方、秘書を雇えるぐらいの地位の人?
やばい。
私、とんでもない事をやらかしてしまったのでは。
「早速だけど、こっちに来てくれる?」
「はい。」
バケツを廊下の端に置いて、私は掃除のユニフォームのまま、その人に付いて行った。
着いたのは、ひらけたオフィス。
その中でも立派な部屋に通された。
「確か亀山君のパソコンは、ここだここだ。えっとパスは確か……あっ、開いた。」
その人はパソコンを操作して、水に沈んだ書類を出した。
「これを印刷するんだけど、10部冊子を作らなきゃいけないんだ。」
「10部ですか!?」
印刷して10部冊子を作るだなんて、そりゃあ1人じゃ大変だよ。
「これから印刷するから、君は1部ずつホチキスで止めていってくれる?」
「分かりました。」
私は渡されたホチキスを持って、印刷物を待ち構えた。
「えっと、確か設定は……あれ?どうだっけ。1部ずつ印刷する設定が……あれ?」
いつまで経っても、1枚も印刷されない。
私、このままここにいて、怒られないかな。
「おっ、印刷!」
そして出てきたのは、2枚。
「あれ?両面印刷になってない?」
「なってません。」
「おかしいな。」
設定で苦しんでいるを見ると、10部作るのにどれだけ時間がかかるのだろうと、不安になってしまう。
「えっと……全部で何枚印刷ですか?」
「6ページを両面印刷だから、3枚だ。それを10部。」
「ちょっと貸してみて下さい。」
これでも他の日は、事務員として働いている私。
プリンターの設定など、お構いなしだ。
「えっと、両面印刷、モノクロ、1部ずつ印刷と……」
設定を押して、印刷ボタンを押すと、直ぐに印刷が開始された。
そして3枚で、1部ずつ差し出してくれる。
このプリンター、性能いい。
「君、凄いね。ただの掃除のお姉さんじゃないだろ。」
「ははは……」
ここは笑うしかない。
そして次々と出てくる冊子を、ホチキスで止めていく。
しかもこのホチキス、芯なしだ。
お洒落。
ウチの会社でも、導入して欲しい。
そう思っている内に、最後の冊子を止めて、その人に渡した。
「あっという間だったな。」
「そうでしたね。」
いや、単にプリンターの性能がよかったからだよ。
「川畑さーん!」
「あっ!」
斉藤さんが呼んでいる。
途中でいなくなったのが、バレたんだ。
「じゃあ、私行きますね。」
「あっ、ちょっと!また今度……」
「すみませーん!」
私は謝りながら、走ってそのオフィスを抜け出した。
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