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第1話 また今度
①
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幼い頃、夢中になって読んだシンデレラ。
自分にも、きっと王子様がやってきて、幸せにしてくれるんだと思っていた。
そんな気持ちも、大人になると消えていく。
この世に王子様なんていなくて、幸せは自分で掴むものだって、知ったから。
そして私も大人になり、自分の夢を掴む為に、大学へ。
と、意気込んでいた時だ。
突然、両親が事故で死んだ。
「姉ちゃん、大学どうすんの?」
私の弟は、高校でも優秀な成績を取っていた。
「行かないよ。これからの生活、私がなんとかするから。」
そう。
幸せは、自分の力で掴むものだ。
「今日から、ここの清掃かぁ。」
両親が死んで私は、事務系の派遣会社に入った。
でもそれだけじゃあ、弟との生活はままならない。
私はWワークの為、清掃会社にバイト契約。
この日先輩のおばちゃん達と向かったビルは、58Fまである高層オフィスビルだ。
何でも、隣に見えるショッピングセンターや向こうに見える病院、そしてこのオフィスビル界隈は、ヒルズビレッジと呼ばれ、お金持ちの為の生活場所なんだそう。
「立派なオフィスビルでしょ。」
「はい。」
「だからこそ、私達が毎日綺麗にしなきゃね。」
「はい。宜しくお願いします。」
と言っても、私は水・木しか入らないバイトなんだけどね。
先輩のおばちゃん、斉藤さんと一緒に向かったのは、オフィスビルゾーンの最上階の48F。
「ここから1階1階下に下がりながら、清掃していくんだよ。」
「分かりました。」
清掃は主にフロアに掃除機をかけるのと、窓のサッシの水拭きだ。
「もし来客があって、ほこりなんかがあったら、その会社の印象が悪くなるでしょう?だから、自分の会社の掃除だと思ってやるんだよ。」
「はい。」
最初は、サッシの水拭きから。
大変だけど、結構時給がいいんだよね、この仕事。
弟の大学進学の為にも、頑張らなきゃ。
「大丈夫だよ。他にも人がいるから、ここと下の階だけ掃除すればいいんだし。」
「はい。頑張ります。」
パートナーを組む斉藤さんが、いい人でよかった。
そして仕事は、午前中で終了。
12時には、解散。
午後には、のんびりできる。
「お疲れ様ね。」
「はい。明日も宜しくお願いします。」
斉藤さんにぺこっとお辞儀をして、私はオフィスビルを出た。
道を曲がるところで、改めてオフィスビルを見た。
「高いなぁ。」
こんな場所で働いている人、凄いと思う。
きっと、お金持ちなんだろうなぁ。
そう言えば、ここ一帯ってヒルズになっているから、隣の商業施設とかも、お金持ちが買い物する場所なんだろう。
私には、全く関係のない場所。
掃除に来るのだって、週二日だけだし。
ここで、新しい出会いなんて、期待しちゃいけない。
私は、オフィスビルに背中を向けた。
帰って来たのは、1時過ぎ。
両親が残してくれた家があったけれど、家のローンが払えずに、手放して今は、アパートに住んでいる。
せっかくの休みでも、掃除や洗濯、やる事があって忙しい。
「あら、結野ちゃん。元気?」
「こんにちは。」
この人はアパートの隣の人で、両親のいない私達を、何かと心配してくれている。
「そう言えば今日は仕事お休みだったのに、午前中いなかったわね。」
たまに干渉が過ぎるけれど、まあまあいい人だ。
「新しくバイト始めたので……」
「まあ、また仕事するの?」
「はい。」
するとまた、心配そうな顔をされた。
「こんな事言ったら、間違っているかもしれないけれど。」
お隣さんは、私の顔を覗き込んだ。
「結野ちゃん、綺麗なんだから仕事ばかりしていないで、恋愛したら?」
「は、はあ……」
何を言われるのかと思ったら、恋愛の話か。
「それかいい人とお見合いして、結婚したら?若いうちから仕事仕事って、いつか倒れてしまうわよ。」
「はい……」
「結婚したら、旦那さんに養って貰えるんですもの。そこまで働かなくてもよくなるでしょ?」
「そ、そうですね。」
「そうだわ、そうしないさいよ。いい人がいたら、紹介するわね。」
「あの、でも……」
「任せなさい。結野ちゃんと青志君はもう、私の子供みたいなもんなんだから。」
お隣さんはそう言って、手を振って行ってしまった。
家の中に入ると、私はリビングに仰向けになった。
「結婚かぁ……」
まだ二十歳の私には、結婚なんて想像もできない。
それに、いい人がいたからって、弟の面倒まで見てくれる人なんていないわ。
何もかも救ってくれる王子様は、この世にいないんだから。
そう思ったら、あっという間に夢の世界に、引きずり込まれた。
「……ちゃん、姉ちゃん!」
「ん……」
目を開けると、そこには弟の青志の顔があった。
起き上がって、窓の外を見ると、もう暗かった。
「ええっ?もうそんな時間?」
「そうだよ。いつから寝てたんだよ。」
青志は学校が終わると、コンビニでバイトをしている。
それも、生活費の足しになっているのだけど。
「ごめんね。急いでご飯の用意するから。」
「ああ、いい。廃棄貰ってきたから。」
自分にも、きっと王子様がやってきて、幸せにしてくれるんだと思っていた。
そんな気持ちも、大人になると消えていく。
この世に王子様なんていなくて、幸せは自分で掴むものだって、知ったから。
そして私も大人になり、自分の夢を掴む為に、大学へ。
と、意気込んでいた時だ。
突然、両親が事故で死んだ。
「姉ちゃん、大学どうすんの?」
私の弟は、高校でも優秀な成績を取っていた。
「行かないよ。これからの生活、私がなんとかするから。」
そう。
幸せは、自分の力で掴むものだ。
「今日から、ここの清掃かぁ。」
両親が死んで私は、事務系の派遣会社に入った。
でもそれだけじゃあ、弟との生活はままならない。
私はWワークの為、清掃会社にバイト契約。
この日先輩のおばちゃん達と向かったビルは、58Fまである高層オフィスビルだ。
何でも、隣に見えるショッピングセンターや向こうに見える病院、そしてこのオフィスビル界隈は、ヒルズビレッジと呼ばれ、お金持ちの為の生活場所なんだそう。
「立派なオフィスビルでしょ。」
「はい。」
「だからこそ、私達が毎日綺麗にしなきゃね。」
「はい。宜しくお願いします。」
と言っても、私は水・木しか入らないバイトなんだけどね。
先輩のおばちゃん、斉藤さんと一緒に向かったのは、オフィスビルゾーンの最上階の48F。
「ここから1階1階下に下がりながら、清掃していくんだよ。」
「分かりました。」
清掃は主にフロアに掃除機をかけるのと、窓のサッシの水拭きだ。
「もし来客があって、ほこりなんかがあったら、その会社の印象が悪くなるでしょう?だから、自分の会社の掃除だと思ってやるんだよ。」
「はい。」
最初は、サッシの水拭きから。
大変だけど、結構時給がいいんだよね、この仕事。
弟の大学進学の為にも、頑張らなきゃ。
「大丈夫だよ。他にも人がいるから、ここと下の階だけ掃除すればいいんだし。」
「はい。頑張ります。」
パートナーを組む斉藤さんが、いい人でよかった。
そして仕事は、午前中で終了。
12時には、解散。
午後には、のんびりできる。
「お疲れ様ね。」
「はい。明日も宜しくお願いします。」
斉藤さんにぺこっとお辞儀をして、私はオフィスビルを出た。
道を曲がるところで、改めてオフィスビルを見た。
「高いなぁ。」
こんな場所で働いている人、凄いと思う。
きっと、お金持ちなんだろうなぁ。
そう言えば、ここ一帯ってヒルズになっているから、隣の商業施設とかも、お金持ちが買い物する場所なんだろう。
私には、全く関係のない場所。
掃除に来るのだって、週二日だけだし。
ここで、新しい出会いなんて、期待しちゃいけない。
私は、オフィスビルに背中を向けた。
帰って来たのは、1時過ぎ。
両親が残してくれた家があったけれど、家のローンが払えずに、手放して今は、アパートに住んでいる。
せっかくの休みでも、掃除や洗濯、やる事があって忙しい。
「あら、結野ちゃん。元気?」
「こんにちは。」
この人はアパートの隣の人で、両親のいない私達を、何かと心配してくれている。
「そう言えば今日は仕事お休みだったのに、午前中いなかったわね。」
たまに干渉が過ぎるけれど、まあまあいい人だ。
「新しくバイト始めたので……」
「まあ、また仕事するの?」
「はい。」
するとまた、心配そうな顔をされた。
「こんな事言ったら、間違っているかもしれないけれど。」
お隣さんは、私の顔を覗き込んだ。
「結野ちゃん、綺麗なんだから仕事ばかりしていないで、恋愛したら?」
「は、はあ……」
何を言われるのかと思ったら、恋愛の話か。
「それかいい人とお見合いして、結婚したら?若いうちから仕事仕事って、いつか倒れてしまうわよ。」
「はい……」
「結婚したら、旦那さんに養って貰えるんですもの。そこまで働かなくてもよくなるでしょ?」
「そ、そうですね。」
「そうだわ、そうしないさいよ。いい人がいたら、紹介するわね。」
「あの、でも……」
「任せなさい。結野ちゃんと青志君はもう、私の子供みたいなもんなんだから。」
お隣さんはそう言って、手を振って行ってしまった。
家の中に入ると、私はリビングに仰向けになった。
「結婚かぁ……」
まだ二十歳の私には、結婚なんて想像もできない。
それに、いい人がいたからって、弟の面倒まで見てくれる人なんていないわ。
何もかも救ってくれる王子様は、この世にいないんだから。
そう思ったら、あっという間に夢の世界に、引きずり込まれた。
「……ちゃん、姉ちゃん!」
「ん……」
目を開けると、そこには弟の青志の顔があった。
起き上がって、窓の外を見ると、もう暗かった。
「ええっ?もうそんな時間?」
「そうだよ。いつから寝てたんだよ。」
青志は学校が終わると、コンビニでバイトをしている。
それも、生活費の足しになっているのだけど。
「ごめんね。急いでご飯の用意するから。」
「ああ、いい。廃棄貰ってきたから。」
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