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第七章:決戦は土曜0時

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 学生ボクサー崩れであり、新興勢力の野槌会のづちかいの中ではケンカの腕で今の地位にのし上がったパンチパーマの若頭は、手下が完全に相手のペースに呑まれていることに気付き、悔しげに唾を吐いた。
 素手ゴロなら、普通なら人数で簡単に圧倒できる。どんな格闘のプロが相手でも、同時に前後から組付けばたいがい地面に倒せる。倒してしまえば、後はどうにでも料理出来る。素人相手なら一対二で充分、同業者やプロ相手でも一対三ならまず勝てる。素手ゴロなら。
 だが。手下共は、真っ先に、相手が得物を持っているのを見た。そして、自分たちも適当な得物を手に取った。反射的な行動だろうが、まずそこが失敗だった。何故なら。
 得物のリーチがある分、どうしても間合いが遠くなる。そうすると、同時に飛びかかっても、相手に対応させる距離と時間の余裕が出来てしまうし、振り回す得物での同士討ちを恐れて手下同士も接近しきれない。
 だから、結局、相手に一対一で対応する隙を与えてしまう。
 そして。目の前の二人の女は、コンビネーションが絶妙に良い。囲めば背中合わせになって背後を取らせないし、押しても引くどころかわざわざ一番厚いところを二人で切り崩しに来る。それだけならまだしも。
 こいつら、とどめを刺してこない。傷みを与えるだけで倒そうとしない。だから、手下共は一撃食らうと次からどうしても腰が退けてしまう。間合いがさらに遠くなる。
 鉄パイプで殴りかかっても全く意に介さず、むしろ全力の木刀とトンファーで打ち返してくる栗毛の女二人に業を煮やしたパンチパーマは、すぐ隣に居る若いのを捕まえて、怒鳴る。
「ハジキだ!ハジキもってこい!」

「え!いや、はい!」
 一瞬その命令に躊躇した若いのは、だがすぐに肯定の返事をして倉庫に向かって走り出す。こんな所で発砲沙汰を起こしたら一大事だが、どうやらそれどころじゃないし、第一責任は若頭に行く。運良くこの鉄砲玉だろう女共を仕留められれば、しばらくムショを喰らいこんでもその分箔が付く。狡っ辛い計算尽くで、若いのは倉庫右手入ってすぐの事務棟事務所の玄関を玄関マット下に隠した鍵で解錠し、社長席の脇のロッカーのダイアル錠をみんな知ってる番号で解錠、さらにその中のアタッシュケースを引き出して社長席の机の上に置き、社長席の引き出しの裏にガムテープで貼ってある鍵を剥がす。
 慌てて震える手でアタッシュケースを開き、中に詰め込まれている派手な銀色の中型拳銃と、フルロードされた弾倉を二つずつ取り出す。弾倉をジャージのポケットに詰め込み、拳銃は両手に一丁ずつもって事務所を飛び出した若いのは、あまりに慌てていたため、奥の仮眠室の明かりが付いていることに気付いていなかった。

 若いのと、若いのが咄嗟に二階のタコ部屋から呼んだ応援の若い衆三人の計四人が戻ってきたのを見て、パンチパーマは安堵の表情と追い詰められた顔の両方を見せつつ、怒鳴る。
「は、早くよこせ!早く!」
「へ、へいっ!」
 若いのが右手の拳銃を差し出す……なり、パンチはそれをもぎ取り、比較的近い方の木刀を持った女に向けて引き金を引く……何も起こらない。
「何だこりゃ!壊れてんじゃねぇか!」
「アニキ、タマ、タマ込めないと!」
 言いながら若いのが弾倉を差し出す。
「は、早く出せバカヤロウ!」
 怒鳴りながら、弾倉を若いのからもぎ取り、震える手で装填しようとし、何度か失敗しつつやっとの思いで弾倉を叩き込んだ拳銃をもう一度構えて引き金を引く……何も起こらない。
「な、何だこりゃ!」
 いきなり拳銃を渡された素人がやりそうなポカを連続でやったパンチに、若いのが、
「アニキ!こうです、こう!」
 マガジンを叩き込んだトカレフのスライドを引いて初弾を装填し、意外に決まってるアイソセレススタンスで構えた。
 乾いた発射音が、有限会社グリーンリサイクル興業の敷地内に響いた。

 何でもないことのようにスパスに載せたダットサイトの電源を入れ、フォアエンドを引いて空チャンバーを確認すると、信仁は誰もいない壁に向けて一度ドライファイアをして作動を確認する。誰しもが映画などで見覚えのあるだろう、スパスと言えばの折り畳みの金属製ストックではなく、日本の法規に合せるための木製ストックに交換されているその外連味たっぷりのショットガンを一旦窓際の角に立てかけると、カラフルなショットシェルが詰まったガンベルトをガンケースから取り出し、着ける。
 そこまでやってから、回りの全員、特に酒井と蒲田が剣呑な目でこちらを見ていることに気付いた信仁は、
「安心してください、ゴム弾です。こっちはドアブリーチャー。人間相手に実弾は控えてますから大丈夫ですよ」
 笑いながら言い切る。
「……酒井さん……」
「……ああ……」
 武装したヤクザ十人より、多分、信仁君一人の方がよっぽどヤバイ。生身の人間のはずだが、「栗色の狼」の異名を取る一族と行動を共に出来る青年はやはり普通ではないと、薄々思ってはいたが酒井と蒲田は心底理解した。

「様子が全く分からないから出たとこ勝負ですので、スピードで片付けてさっさとここ制圧しちゃいましょう。俺が前に出ますから、バックアップお願いします……酒井さん、これどうぞ」
 言って、信仁は酒井にハラガンツールを渡す。一応ショルダーホルスターからP230JPを抜いた蒲田と一瞬目をあわせた酒井は、
「……まあ、警棒より頼りになる、のか?」
 言って、軽くその剣呑なバールを振ってみる。
「じゃあ、北条さんと西条さんは後から来て下さい、熊川さんは北条さん達をお願いします」
 言いながら、信仁はチャンバーにドアブリーチャーを放り込んでフォアエンドを戻し、チューブマガジンにゴム弾を詰める。ドアノブの横、ロック機構があるあたりを上から斜めに撃ち下ろすようにスパスを肩付けした信仁は、
「用意良いですか?三二一で行きます、耳塞いで下さい。……三、二、一、!」
 ゼロとは言わず、そのタイミングでスパスが火を噴く。

 ドアロックを撃ち抜かれた衝撃で、外開きのドアはゆるりと開く。それを蹴り開け、信仁は、クイックピークで一旦進路方向を確認すると、スパスを肩付けしたまま短い廊下に飛び出す。酒井、蒲田の順でその後に続いた警官達がドアの外に消えるのを待って、柾木は身を固くして耳を押さえている玲子に言う。
「……じゃあ、俺たちも行きましょう」
「……はい……」
 聞いたことのない轟音に、やや放心気味の玲子がそれでも気丈に答える。その答えに頷いて返した柾木は、熊川に、
「……刑事さん、お願いします」
 声をかけて、玲子を抱くようにしてドアを出る。
 熊川が、おっかなびっくり持った二インチ銃身のニューナンブを構えてそれに続く。

 廊下と事務室を仕切るドアのガラス越しに室内を確認すると、鍵のないドアを開けて警官二人と信仁は事務室に飛び込む。さっきの誰かが点けたのだろう、明かりが点けっぱなしの室内をパッと見渡した三人は顔を見合わせる。
「捜索は後回しで、先に上を制圧しましょう」
「そうだな、熊川警部補、ここを頼めるか?」
「は、はい、わかりました」
 信仁の提案に酒井は頷き、事務所の確保を熊川に任せる。
「ヤバイ物が無いか一応調べてくれ、行こう」
 熊川に注文し、酒井は蒲田と信仁に促す。躊躇なく事務室を飛び出した三人を見送る熊川は、
「調べるって……」
 呆然と言って、事務室の中をゆっくり見渡す。
「手伝います。俺や玲子さんのスマホとかもどっかにあるはずなんで」
 そう声をかけると、柾木は、部屋の隅の最も怪しげな開きっぱなしのロッカーに向かう。その柾木と、ちょっとおっかなげに柾木について行く玲子を見て、熊川も「えーっと、そうですね」かなにか言いながら反対側の棚を見に行く。

 流石に階下で銃声がすれば、そこそこの酔っ払いでも目を醒ます。酒井達三人が外階段の下に取り付いた時、既に階段の上には比較的足取りの確かなチンピラ風の男が居た。
 間髪も容赦もなく、再びスパスが火を噴く。太腿に被弾したチンピラは、小さく短く呻くとそのまま倒れ込み、階段を五段ほど滑り落ちる。
 ちらりと酒井と蒲田に目配せした信仁は、そのまま一気に階段を駆け上る。駆け上る途中で銃を左にスイッチし、階段を上りきったところで右に折れて外廊下に繋がる角で一旦停止、腰を落としたカットパイで進行方向を確認、続けざまに銃声が三回。一瞬だけ右手をフォアエンドから離して階段下の二人に合図すると、信仁は角の向こうに消える。
「行こう」
 蒲田を見ずに酒井は言い、右手でハラガンツールを握り、左手は手すりに添えて階段を駆け上がる。
 酒井が階段を上りきり、外廊下の先を視野に収めるのとほぼ同時に、スパスを左に構えたままの信仁は、室内から見るとドアの外に体の大半を隠したシッティングで、開けっぱなしのドアから二階の室内に銃口を向ける。
「動くなよ、動くと死ぬほど痛ぇぞ」
 低めの声で、ゆっくりはっきりそう言い切った信仁は、ゆっくりと立ち上がる。まだ室内に入らず、自分から死角になっている右側を確認する為、わずかにドアから身を離しつつドアの左側に移動する。
 外廊下に倒れて呻いているチンピラ三人を踏み越えて信仁の側に来た酒井は、信仁がスパスを右にスイッチして部屋の左側を抑える姿勢になったのを見て、部屋の右側に入る。
「警察だ、全員そのまま床に伏せろ、手は頭の後ろだ」
 のろのろと動く、比較的酒量が多くて即座に動けなかったチンピラ十人ほどを見ながら、酒井は思う。
 手錠……は取られてたっけ、ロープでも探してこないと駄目だなこりゃ……
「……こりゃ、ロープでも探して来ないとダメですね、はい」
 同じ事を思ったらしい蒲田が、部屋の中を覗いて呟く。
「……したら、俺、外のバックアップに行きます。ついでに下から誰かに何か持ってきてくれるよう頼んどきましょうか?」
 倉庫の外からは、散発的に銃声が聞こえてくる。室内の全員が伏せたのを確認して、スパスをハイレディに構えた信仁が聞く。
「そうだな、熊川警部補に何か持ってきてくれるよう頼んでくれるか?」
「了解です。じゃあ」
 パッと踵を返して信仁は小走りに外廊下を駆けていく。階段を降りる角で再度カットパイでクリアリングしてから姿が見えなくなる。
「……なんでしょう、はい、あの手慣れてる感……」
「……SATより良い動きしてるんじゃないか?」
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