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スライム編
赤見 義照 あかみ よしてる
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男性
41歳
鉄筋工
担当女神:ディオーネ
攻撃:8
防御:14
速度:6
知能:10
幸運:6
「……かなり転生が滞った。皆が騒ぎ始めていてやかましい。記録書から犯人捜しをするだの暇なことを言う連中には付き合いきれん。そろそろ潮時であろうな。さあ行け!」
■■■テンセイ■GO■!■■■■■
「えっ!? この銀のクナイ、あんたが置いたの?」
義照が転生すると、ガズの声が部屋に響いていた。
他にいるのはエーミィと黒衣の男だ。
男ふたりが話し、エーミィは黙って成り行きを見守っている。
(いきなりうるさいなあ。揉めるならよそ行ってくれよ)
生前の大半を建設現場という騒音の多い場所で過ごした義照は、今はちょっと静かに過ごしたい気分だった。
部屋の隅に移動して、じっとする。
ガズに驚かれた黒衣の男も、すこし驚いた様子で、
「知っていると思っていたのだが」
「なんでよ!? ちょっとあんた、ちゃんと話してくれって。その、えっと、何て呼べばいいんだ?」
黒衣の男は、登録名はクロカイトだ、と答えた。
「クロはまあ、好みの色というだけなので、カイトで構わん」
「じゃあカイト。順番に話してくれ。……あんたがこの部屋に来たとき、マイラは生きてたのか?」
自分を落ち着かせながら、慎重にガズが言う。
「当然だ。生きていなければ助けようがなかろう」
「順番に話せよ~。もうっ」
ガズは言葉こそ強かったが、もう半分泣きそうになっていた。
助けようがなかろう――希望を感じるその言葉を聞いて。
「我がここに来たとき、マイラというくのいちは、生きてはいたが死にかけていた。ダメージもひどかったが、出血という状態異常を受けていて、あと数歩でHPが0となる状態だったのだ」
「う、うん」
今度は結論を知りたいガズだったが、言った手前、クロカイトが順番に話すのを待つ。
「なので、我が背負って運ぶことにした。自力で動かないかぎりは状態異常はカウントされない。だが――」
「銀のクナイだけは、我は運ぶことができないのだ」
ガズが手の中のクナイに目を落とす。
「我のジョブはいわゆる最上級職なのだが、ゆえに人間から離れつつある存在なのだ。デメリットとして、銀だけは運べない。マイラというくのいちを運ぼうとしたときに動けないことに気がつき、手のひらの中に包まれていた銀のクナイを床に置くことにした。スライムにくれてやるのはもったいない代物なので、浄化陣を置いてな」
「血文字はどういうことだったんだ?」
クロカイトは、一瞬「えっ」という表情を見せ、
「そのままだが」
「『くのいち 風に』……。いやいや、わかんないよ? 風になったと思うじゃん?」
そのガズの言葉を聞いたクロカイトは思わず「ぼはっ」と噴き出す。
「か、風になった? それはポエムすぎる。ポエムすぎるぞ少年っ!」
「うるせー笑うな! 早く意味を教えろっ」
真っ赤になるガズに、
「風のシルフ亭にくのいちを運ぶ、という意味だ。命さえあれば一晩で治るのが冒険者なのだから」
「風のシルフ亭!? そんなマイナーなとこになんで?」
マイナーだからこそだ、クロカイトは言い、
「我は他の冒険者が苦手でな。言ってしまえばコミュ障だ。パーティも組んだことがない。――ゆえに、人がいない宿こそが、我の常宿となる」
「さっき一緒に戦っただろ! もうカイトもオレたちの仲間だ!」
言いながらガズは急いで立ち上がり、扉へ走る。
エーミィも追いかける。
「マイラはまだ生きてるんだ! ありがとうカイト! エーミィ、風のシルフ亭に行こう」
「うん、マイラさんにお礼言わなきゃだもんね」
ふたりは扉の向こうへと駆け出して行った。
(ふう、これで静かになるな)
ジュバッ。
「ふむ……仲間……。ふむ……」
(照れくさいの隠すために攻撃すんなよ……!)
■■■ザンネン■マタ■ライセ■■■
41歳
鉄筋工
担当女神:ディオーネ
攻撃:8
防御:14
速度:6
知能:10
幸運:6
「……かなり転生が滞った。皆が騒ぎ始めていてやかましい。記録書から犯人捜しをするだの暇なことを言う連中には付き合いきれん。そろそろ潮時であろうな。さあ行け!」
■■■テンセイ■GO■!■■■■■
「えっ!? この銀のクナイ、あんたが置いたの?」
義照が転生すると、ガズの声が部屋に響いていた。
他にいるのはエーミィと黒衣の男だ。
男ふたりが話し、エーミィは黙って成り行きを見守っている。
(いきなりうるさいなあ。揉めるならよそ行ってくれよ)
生前の大半を建設現場という騒音の多い場所で過ごした義照は、今はちょっと静かに過ごしたい気分だった。
部屋の隅に移動して、じっとする。
ガズに驚かれた黒衣の男も、すこし驚いた様子で、
「知っていると思っていたのだが」
「なんでよ!? ちょっとあんた、ちゃんと話してくれって。その、えっと、何て呼べばいいんだ?」
黒衣の男は、登録名はクロカイトだ、と答えた。
「クロはまあ、好みの色というだけなので、カイトで構わん」
「じゃあカイト。順番に話してくれ。……あんたがこの部屋に来たとき、マイラは生きてたのか?」
自分を落ち着かせながら、慎重にガズが言う。
「当然だ。生きていなければ助けようがなかろう」
「順番に話せよ~。もうっ」
ガズは言葉こそ強かったが、もう半分泣きそうになっていた。
助けようがなかろう――希望を感じるその言葉を聞いて。
「我がここに来たとき、マイラというくのいちは、生きてはいたが死にかけていた。ダメージもひどかったが、出血という状態異常を受けていて、あと数歩でHPが0となる状態だったのだ」
「う、うん」
今度は結論を知りたいガズだったが、言った手前、クロカイトが順番に話すのを待つ。
「なので、我が背負って運ぶことにした。自力で動かないかぎりは状態異常はカウントされない。だが――」
「銀のクナイだけは、我は運ぶことができないのだ」
ガズが手の中のクナイに目を落とす。
「我のジョブはいわゆる最上級職なのだが、ゆえに人間から離れつつある存在なのだ。デメリットとして、銀だけは運べない。マイラというくのいちを運ぼうとしたときに動けないことに気がつき、手のひらの中に包まれていた銀のクナイを床に置くことにした。スライムにくれてやるのはもったいない代物なので、浄化陣を置いてな」
「血文字はどういうことだったんだ?」
クロカイトは、一瞬「えっ」という表情を見せ、
「そのままだが」
「『くのいち 風に』……。いやいや、わかんないよ? 風になったと思うじゃん?」
そのガズの言葉を聞いたクロカイトは思わず「ぼはっ」と噴き出す。
「か、風になった? それはポエムすぎる。ポエムすぎるぞ少年っ!」
「うるせー笑うな! 早く意味を教えろっ」
真っ赤になるガズに、
「風のシルフ亭にくのいちを運ぶ、という意味だ。命さえあれば一晩で治るのが冒険者なのだから」
「風のシルフ亭!? そんなマイナーなとこになんで?」
マイナーだからこそだ、クロカイトは言い、
「我は他の冒険者が苦手でな。言ってしまえばコミュ障だ。パーティも組んだことがない。――ゆえに、人がいない宿こそが、我の常宿となる」
「さっき一緒に戦っただろ! もうカイトもオレたちの仲間だ!」
言いながらガズは急いで立ち上がり、扉へ走る。
エーミィも追いかける。
「マイラはまだ生きてるんだ! ありがとうカイト! エーミィ、風のシルフ亭に行こう」
「うん、マイラさんにお礼言わなきゃだもんね」
ふたりは扉の向こうへと駆け出して行った。
(ふう、これで静かになるな)
ジュバッ。
「ふむ……仲間……。ふむ……」
(照れくさいの隠すために攻撃すんなよ……!)
■■■ザンネン■マタ■ライセ■■■
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