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7章 二人の炭鉱探索

アースの書~炭鉱探索・5~

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「ここだ」

 爺さんの後について行くと、5番と書かれた看板がある炭鉱の入り口前に着いた。
 ここで爺さんの言っていた鉱石が採れるのか。
 簡単に終わればいいが、どうなるかだな。

「さあ、しっかりワシを守ってくれよ」

 爺さんはランプに火をつけ、炭鉱の中へと入って行った。

「はイ、任せて下さイ!」

 俺達も爺さんの後を追いかけて炭鉱の中へと入った。
 鉱石を運ぶだけあって、通路は広めに掘られているな。
 これなら剣を振っても問題はなさそうだ。

『ロックワームが出たら俺が相手をするから、ラティアは力を抜いて身を任せてくれ』

(わかりましタ。お願いしまス)

『エイラはそのままおとなしくついて来てくれよ』

(は~い……つまらないな~)

 さて、護衛を頑張りますか。
 剣を買ったのにまともな戦闘はしていないからな。
 俺の実力の見せ所だ。



『……』

 と思ったんが、かなり入り組んだ炭鉱内を歩いてはや数分。
 全くロックワームが出て来る気配がない。
 本当にこの炭鉱に出没するのだろうか。

『ロックワームなんて出てこないな』

(だね~。あ~しも見た事なかったから、どんな生き物か気になってたのに~)

 エイラはロックワームを見た事がないのか。
 長生きしていてもそんな事があるんだな。

「(そうですネ……一度お爺さんに聞いてみましょうカ)。あノ、すみませン。ここにロックワームは本当に出て来るんですカ? 全然いる気配が無いんですけド……」

「ワシもこの目で見ているから群れでいるのは間違いない……が、どういう訳か全く姿を現さんな」

 ふむ、嘘を付いている様には見えない。
 ロックワームの群れがどこかに行ってしまったのだろうか?

「しかし、それはそれでいいじゃないか。こうして進みやすくなっているし……えーと、次は……こっちだ」

 まぁ確かに爺さんの言う通り、モンスターなんて出てこない方がいいに越したことはないが……なんだろう、この張り合いの無さは。

『……ん?』

 俺はふと地面に落ちている独特な形をしたこぶし大の石に目がいった。
 その石はいびつな星型をしていて、先ほど歩いている時もこれと同じ形の石が落ちていた。
 ここは炭鉱だから、そんな形をした石が落ちていてもおかしくはないとは思う。
 だが、形が瓜二つの石が同じような場所に落ちているとなると話は別だ。
 これはもしかして……。

(……アース様。先ほど、ここを通りませんでしたカ?)

 ラティアも俺と同じ様に思っているらしい。

『俺もそう感じた』

 でも、ここは入り組んだ炭鉱。
 同じ様な景色ばかりで通ったと勘違いしているか、爺さんが誤って同じところをもう一回通ってしまっているかもしれん。
 とはいえ、念には念を入れておくか。

『エイラ、すまないがその木枠に適当な印をつけてくれないか?』

(ん? 印? ……これでいいの?)

 エイラは組んだ木枠に円の形をした印をつけた。
 うん、これなら見分けがつくだろう。

『ああ、ありがとうな』

 俺の嫌な予感が当たらなければいいが……。



 さらに爺さんの後について行く事数分。

「……こっちだ」

(……アース様……あれっテ……)

 ラティアが木枠に顔を向けた。
 嫌な予感が当たってしまったようだ。

『……ああ。3回目だ』

 その木枠にはエイラがつけた円の印、そして地面には星の形をした石が転がっている。
 間違いない、同じところをグルグルと回っている。
 爺さんが先行して歩いているから、てっきり炭鉱内を完全に把握していると思ったんだが……まさか、ロックワームより爺さんの方向感覚に問題があったとはな。

『これは迷っていると思っていいだろうな……』

 狙いの鉱石を探していて同じところを通るのならまだわかる。
 しかし、爺さんの動きは明らかに目的地へ向かっている感じだ。
 そうなると同じところを3回も通るのは迷ってしまっているという事だ。

「(やっぱりそうですよネ……)。あノ~先ほどもここを通ったと思うんですガ……迷ってまス?」

 ラティアの言葉に爺さんは足を止めた。

「………………いいや、気のせいだ」

 長い沈黙の後、爺さんは一言そう言って進み始めた。
 おおい! どう考えても気のせいじゃないっての!
 迷ったのなら迷ったと素直に言えよ!

(どうしましょウ。明らかに嘘を言っていますガ)

『うーん……』

 これは困った。
 恥ずかしいのか、あの感じじゃ爺さんは認めようとしないだろう。
 だからといって、このまま進むのも駄目だよな。
 本当にどうしたものか……んーこの辺に狙いの鉱石が転がっていたりしないのかな?
 例えばこの星型の石とかさ。

「……ん? おーい、何止まって……お? その石は……」

 爺さんは俺が見ていた星型の石を拾い上げ、腰に付けていた袋からルーペと小さいハンマーを取り出した。
 そして、その石を色んな角度から見たり、コンコンと数回叩いたりを繰り返した。

「……うむ、間違いない。これだこれ、この鉱石を探していたんだよ」

『「はあ?」』

 嘘だろ!?
 それが本当ならとっくの前に見つけていたじゃないか!

「君はすごいな。良く見分けられたもんだ」

 いや、これを見落としていたあんたの方がすごいよ。
 本当に見分けられる一人なのか? 信じられなくなってきた。

「よし、さっそく工場に戻って加工をしなければ! おっと、君は宿屋は決まっているのかね?」

 あ、そういえば宿屋をまだ決めていなかったな。

「いエ。まだ決めていませン」

「そうか、ならワシの友人が経営しているサッギに泊まるといい。その方が完成した時にワシも届けやすいからな」

『……そうしようか』

 何故だろう。
 疲れない体のはずなのに、ものすごく疲れた気分だ。

「(そうですネ……)。わかりましタ。そうさせて頂きまス」

(この中を歩き回ったのは何だったんだろうね……)

 エイラ、それを言わないでくれ。
 ますます体が重く感じてしまう。
 俺達は爺さんの言われた通り、サッギへと向かい宿泊する事にした。


 ◇◆アース歴9年 7月8日◇◆

 爺さんをサッギで待つこと1日。
 夕刻頃に、爺さんは宿屋へとやって来た。

「いやー待たせたな。これを届けてほしいんだ」

 爺さんが取り出した物は星型から真ん丸になった石だった。
 確かに見た目的に価値があるものとは到底思えない。
 何でこんな物をオリバーが必要としているんだろう。

「わかりましタ。お預かりしまス」

「で、オリバー様がいる場所はここだ」

 爺さんからメモを渡された。
 この書かれている場所にオリバーが居るのか。

「拝見しまス……えッ!?」

『……おいおい、まじかよ』

 メモの内容で、爺さんが届けに行きたくない本当の理由がわかった。
 オリバーのいる場所は北の大陸にある街【リック】。
 つまり港から船に乗り、海を渡らなければいけないという事だ。
 まさか、オリバーが別の大陸へ行っていたとは……流石にこれは予想外だぞ。
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