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4章 二人の修理と盗賊

アースの書~修理・2~

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 アルガムの街を少し歩くと鍛冶屋を発見する事が出来た。
 良かった、これで俺の頭の凹みを直せるぞ。

「鍛冶屋さんがありましたネ」

『そうだな。じゃあ中に入るとしようか』

「はいでス。こんにちハ~」

 鍛冶屋の中に入ると数多くの武具が陳列されている。
 物もよさそうだし、ここの店主は期待できそうだな。

「……いらっしゃい」

 ラティアの声で店の奥から前掛けをつけた50歳前後の男が出て来た。
 見た感じだとこの人が店主みたいだな。

「あの、このアーメットの凹みを直してほしいのですが出来ますカ?」

 ラティアが俺の頭を外し男に見せた。
 あんなに人前で顔を出すのを嫌がっていたのに躊躇が無い。
 本当にラティアの心境に何があったのだろうか。

「どれ、見せてみな……ふむ……」

 男は俺の頭を手に取り、ながめ回した。
 アーメットとはいえこんなジロジロと見られるのは恥ずかしいな。

「……この凹み具合からして、鈍器みたいなもので殴られたみたいだな」

 その通り。
 メイスの一撃を食らいました。

「この位の凹みなら直せるが……嬢ちゃん、今着けているプレートアーマーはサイズが全然合っていないんじゃないか?」

「え? ア~……」

 この鎧はラティアに合わせて作られた物じゃないからな。
 ブカブカでサイズが合っていないのは仕方ない事だ。

「防具のサイズを合わせるのも身を守るためには大事な事だ。凹みを直すより、一式新しくして自分のサイズに合ったものを着けた方がいいと俺は思うぞ」

 確かに言う通りだけど、それは勘弁してくれ。
 体の部分は代えられるがアーメットはこれしか無理なんだよ。
 ラティアのサイズに合わせたら頭でっかちになってしまって、すごくバランスが悪い上にめちゃくちゃ目立ってしまう!

「えト、そのアーメットを含めてこのプレートアーマーはとても大事なものなのデ……」

「大事ねぇ……ならこんな風に凹ますなよ」

「うッ……」

 いや、ラティアが凹ませたんじゃないんだ。
 と言って俺の声は聞こえないからフォローは出来ん、すまないラティア。

「まあいい、これ以上は聞かねぇよ。修理を引き受けて良いんだが、ただ明日の昼頃まで待ってもらう事になるぞ。今やっている奴を今日中に仕上げないといけないんだ」

「明日のお昼ですカ……」

 ラティアがどうしましょうって感じで俺を見ている。

『問題ないよ、明日迎えに来てくれないか』

 どの道いつ先に進めるかわからないし、別に焦る必要もないしな。

「……うう、わかりましタ……」

 何故そんなに残念そうにしているのだろうか。

「しょうがないよネ……では、明日のお昼にまた伺いまス」

 寂し気にラティアが店から出て行った。
 1人が寂しのかな? でもエイラもいるし……うーん、わからん。

「何だったんだ、今のは? ……にしても、どんな奴に殴られたらこんな凹みになるんだか」

 店主が俺の頭を手に持ち、またマジマジと見て来る。
 だからそんなに見ないでくれー。

「この凹みだとこうして……」

「じゃあ宿屋よろしくね。アタシも用事が済んだら戻るから」

『……へっ?』

 今聞き覚えのある声が店の入り口から聞こえた。
 え……この声って……まさか……。

「お邪魔するわよ~」

 店に入ってきたのはやっぱりレインだ!!
 そいつです! そいつが俺をどついた奴です!
 というか、なんでここにレインが居るんだよ!?

「久しぶり、元気してた?」

「レイン、久しぶりだな。今日はどうしたんだ?」

 レインと店主は知り合いだったのか。

「どうもこうも無いわよ、盗賊のせいで通行止めを食らったの。それでメイスの手入れをお願いしようと思って来たわけ」

 レインも俺達と同じ状況だったのか。
 まさかアカニ村へ向かっているとかないよ……な……?

「なら、お前が盗賊を討伐してくれよ。こっちは討伐隊が来るまで街を守らないといけないから武具の生産が大変なんだよ」

 なるほど、今日中にやらないといけないというのは盗賊関係の事だったのか。
 というか店主の言う通り、レインが盗賊の討伐をすればいいのに。
 レインの実力なら簡単に出来ると思うんだが……。

「アタシも先を急いでいるし、盗賊を討伐したい気持ちはあるわ。でも、通行止めにしていたのは帝国の兵だった。帝国が関わっている以上、所属していない今のアタシが関与するとロクな事にならないわ」

 へぇレインはもう帝国と関係がなくなっているのか。
 まぁ10年も経てばそうなっていてもおかしくはないか。

「あー手柄を横取りとかいちゃもんをつけられちゃたまらんものな」

「そういう事……ん? そのアーメットって……」

 うぐっレインと目が合ってしまった。

「あん? このアーメットがどうかしたのか?」

 店主が俺の頭をポンポンと叩いて来た。
 やめてくれ、感触はないがなんか嫌な気分になる。

「もしかして、持って来たのは左右の眼の色が違う薄紫色の髪の女性?」

「ああ、そうだ。レインの知り合いか?」

「あ~ちょっとね……そっか、アイリスさんもこの街に居たのか。なら見かけたら挨拶位はしないといけないわね」

 まずい、ラティアはレインがこの街に居る事を知らないはず。
 レインに声を掛けられてボロを出さなければいいんだが。
 どうか宿屋に引きこもっていますように!

「じゃあアタシはもう行かないと、このメイスの手入れお願いね」

「構わないが、取りに来るなら明日の昼以降だからな」

「わかったわ。じゃあまた明日ね」

 レインが自分のメイスを俺の目の前に置いて店から出て行った。
 店主、早く俺からそのメイスをどかして下さい!
 このメイスは見ていたくないんです!!
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