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2章 二人の逃走と追跡
アースの書~逃走・4~
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それにしてもレインのあの眼は本当に怖いな。
今までレインにどつかれたモンスターもこんな恐ろしい気持ちだったんだろうか。
「はあっ!」
レインが持っているメイスを俺の頭に向かって振り下ろし――。
「やめて下さイ!!」
――かけた瞬間、女性の声と共に俺の目の前が真っ暗になった。
「なっ!? くっ!」
今の声、もしかしてラティアか?
「ふぅ~……あぶっな。ちょっと、貴女! 急に出てきたら危ないでしょ!」
「レイン様、駄目でス! 傷付けてはいけませン!」
視界が明るくなり、目の前にはラティアの顔がある。
どうやら俺の頭はラティアの腕に抱きかかえているらしい。
状況から察するにレインのメイスが振り下ろされた瞬間、ラティアが間に入って俺の頭に覆いかぶさった感じかな。
おかげで俺は助かったが……なんて危ない事をするんだ。
レインがメイスを止めたから良かったものの、そのまま殴られたら大怪我じゃすまないぞ。
「はあ? 何で貴女は私の名前を知っているのよ」
「お久しぶりでス、レイン様」
そう言いながらラティアがレインに向かって振り向いた。
ラティアの行動に対してレインは戦闘態勢のまま一瞬俺を睨みつけ、次にラティアを睨みつけた。
まぁレインにとってモンスターは復讐の対象だからこういった感じになるのは仕方ない……仕方ないとは思うが、仲間に敵意をむき出しにされるのは辛いな。
「お久しぶりって……貴女は誰なの?」
あら、レインの奴ラティアを見てもわかっていないようだ。
この10年の間に2人は会ってはいなかったのか。
「ラティア・ストレイトでス」
「ストレイト? ……もしかして、フランクさんの娘さん?」
ストレイトの名前を聞いてレインがメイスを下ろした。
流石にフランクさんの子供だとわかれば落ち着くだろう。
いやはや、一時はどうなるかと思ったぞ。
「はい、そうでス」
「……フランクさんの娘……死霊魔術師……デュラハン……庇う……」
レインが手を口に当てて何やらブツブツと言っている。
何か考え事をしている時の癖だな。
10年経ってもその癖は治ってはいなかったのか。
「……もしかしたら……ねぇラティアちゃん、その頭がナニかわかっているの?」
「無論ですヨ。私が蘇らせましたかラ」
「っ! やっぱり死霊魔術で!」
な、なんだ?
レインがまた恐ろしい眼で俺を睨んできた。
「はい、そうでス。この頭の中にはアー……」
「……全部分かったわ」
「……ス様の……えッ?」
へ? 何が?
「ラティアちゃん、貴女はそのデュラハンに操られている!」
『「はいっ!?」』
俺が操っているだと。
やばい、レインの考えが変な方向に行っちゃっているくさいぞ。
「ちょ、ちょっと待ってくださイ!」
「なんて卑怯な奴なの! ラティアちゃんを盾にして自分を守らせるなんて……!」
俺はそんな事をさせてませんが!?
「あの一体何を言っているのですカ!」
「けど、そんな事でアタシは臆さないわ……必ずラティアちゃんを救うんだから!」
「レイン様!?」
レインがまたメイスを構えた。
駄目だ、全然取り付く島がない。
恐らく俺に対する怒りで頭に血が上っているのだろう。
やばいぞ、このままだとラティアにも危害が出てしまうかもしれん。
ならさっさと俺の頭をレインに差し出してもらおう。
『ラティア、俺の頭をレインに……』
「暴風!」
「――! なにっ!」
いきなりレインが竜巻に包まれた。
何が起こったんだ。
「これハ……もしかしてエイラ!」
空中を見るとエイラの姿があった。
どうやら風魔法を使って俺達を守ってくれたようだ。
「まったく、外にいるなら外にいるって言ってよ。ずっと屋敷の中を探していたわ」
「――から――さい! ――っ!!」
レインが何か叫んでいるが……竜巻の音がうるさくて良く聞こえないな。
「で、この小娘はなんの? とりあえず武器を持っているから動けない様にしたけど」
小娘って……エイラの方がどう見ても小娘なんだが。
いや、今はそんな事を言っている場合じゃないな。
『説明は後だ。ラティア、エイラ、ここから逃げるぞ!』
「えっ? でモ……」
『今のレインに何を言っても無駄だ、操られているからと聞く耳を持ってくれない。だから一度距離を離すんだ。エイラ、悪いが俺の体を運んでくれ!』
「はあ? なんであ~しがあんたの体を運ばないといけないのよ」
そんな嫌そうな顔をしないでくれよ。
何故か動かせないんだからしょうがないだろ。
『俺の体が動かないんだよ!』
「あ~そゆこと。ならもう動けるはずだよ」
『え?』
そう言われて俺の体を動かしてみる。
すると左右の腕、足が俺の思い通りに動いた。
『本当だ……何でだ?』
確かに動かなくなったのに。
意味が分からん。
まぁ動けるのならそれでいい、今は逃げるのが先決だからな。
『よし、走るぞ!』
「はっはイ!」
俺の頭を持ったラティアと頭のない俺の体が走り出す。
うーん……頭のないプレートアーマーが走っている姿を見ると、レインの言う通りデュラハンにしか見えないな。
逆の立場だったら俺も勘違いしていたかもしれん。
「――――! ど――行――! 逃――な!」
逃げる俺達に向かってレインが叫んでいる。
逃げるな! 的な事を言っているみたいだ。
「ぜぇ~ひぃ~ぜぇ~ひぃ~」
ん? なんかラティアの様子がおかしいぞ。
顔はよく見えないけど、これ絶対は顔色が悪くなってきているよな。
『おっおいラティア、大丈夫か?』
「ぜぇ~ひぃ~……大……丈夫、じゃない……でス……もっもう……限……界……でス……」
やっぱりか。
もう疲れたのかよ、全速力で走っていたとしてもそんなに走っていないのに。
「もう~ラティったら相変わらず体力が無いわね。仕方ないな~……よっと」
「うぇッ!」
エイラがラティアを持ち上げた。
流石ドラゴニュートだな、そのまま運ぶ気か。
「はい、アースは両腕を前に出して」
『? こうか?』
言われた通り両手を前に出したが、これに何の意味があるのだろうか。
俺もついでに運んでくれるのだろうか。
「ほいっと」
「きゃッ!」
『おわっ!』
と思っていたら、俺の両腕にラティアを落としてきた。
ええっ俺が運ぶの?
どう考えても力があって空を飛べるエイラの方がいいと思うんだけどな。
「……こっこここここここれっておひお姫様だっコ!? ア、アース様にお姫様抱っこヲ……!」
とはいえ、落とすわけにもいかない。
このままラティアを運んで走るしかないか。
「ところでさ、逃げるって何処へ行くの?」
『あっ』
そうだ、そこを考えていなかった。
屋敷とは反対側に走って来たし、屋敷に戻ったとしてもすぐ見つかってしまう。
でも、このまま行く当てもなく走り続けても……。
「その感じは考えてなかったのね。じゃあ、あ~しについてきて」
エイラが俺達の前を飛び始めた。
どこに連れていかれるのかわからんが、このまま走るよりかはいいか。
エイラを信じてついて行こう。
「絶――逃が――よ!! ど――でも追い――――るんだからああああああああああああああ!!」
レインの雄たけびが聞こえる。
いや、あれは雄叫びというか咆哮だな。
もしかして逃げるのは愚策だったのだろうか。
今となっては答えがわからん……。
今までレインにどつかれたモンスターもこんな恐ろしい気持ちだったんだろうか。
「はあっ!」
レインが持っているメイスを俺の頭に向かって振り下ろし――。
「やめて下さイ!!」
――かけた瞬間、女性の声と共に俺の目の前が真っ暗になった。
「なっ!? くっ!」
今の声、もしかしてラティアか?
「ふぅ~……あぶっな。ちょっと、貴女! 急に出てきたら危ないでしょ!」
「レイン様、駄目でス! 傷付けてはいけませン!」
視界が明るくなり、目の前にはラティアの顔がある。
どうやら俺の頭はラティアの腕に抱きかかえているらしい。
状況から察するにレインのメイスが振り下ろされた瞬間、ラティアが間に入って俺の頭に覆いかぶさった感じかな。
おかげで俺は助かったが……なんて危ない事をするんだ。
レインがメイスを止めたから良かったものの、そのまま殴られたら大怪我じゃすまないぞ。
「はあ? 何で貴女は私の名前を知っているのよ」
「お久しぶりでス、レイン様」
そう言いながらラティアがレインに向かって振り向いた。
ラティアの行動に対してレインは戦闘態勢のまま一瞬俺を睨みつけ、次にラティアを睨みつけた。
まぁレインにとってモンスターは復讐の対象だからこういった感じになるのは仕方ない……仕方ないとは思うが、仲間に敵意をむき出しにされるのは辛いな。
「お久しぶりって……貴女は誰なの?」
あら、レインの奴ラティアを見てもわかっていないようだ。
この10年の間に2人は会ってはいなかったのか。
「ラティア・ストレイトでス」
「ストレイト? ……もしかして、フランクさんの娘さん?」
ストレイトの名前を聞いてレインがメイスを下ろした。
流石にフランクさんの子供だとわかれば落ち着くだろう。
いやはや、一時はどうなるかと思ったぞ。
「はい、そうでス」
「……フランクさんの娘……死霊魔術師……デュラハン……庇う……」
レインが手を口に当てて何やらブツブツと言っている。
何か考え事をしている時の癖だな。
10年経ってもその癖は治ってはいなかったのか。
「……もしかしたら……ねぇラティアちゃん、その頭がナニかわかっているの?」
「無論ですヨ。私が蘇らせましたかラ」
「っ! やっぱり死霊魔術で!」
な、なんだ?
レインがまた恐ろしい眼で俺を睨んできた。
「はい、そうでス。この頭の中にはアー……」
「……全部分かったわ」
「……ス様の……えッ?」
へ? 何が?
「ラティアちゃん、貴女はそのデュラハンに操られている!」
『「はいっ!?」』
俺が操っているだと。
やばい、レインの考えが変な方向に行っちゃっているくさいぞ。
「ちょ、ちょっと待ってくださイ!」
「なんて卑怯な奴なの! ラティアちゃんを盾にして自分を守らせるなんて……!」
俺はそんな事をさせてませんが!?
「あの一体何を言っているのですカ!」
「けど、そんな事でアタシは臆さないわ……必ずラティアちゃんを救うんだから!」
「レイン様!?」
レインがまたメイスを構えた。
駄目だ、全然取り付く島がない。
恐らく俺に対する怒りで頭に血が上っているのだろう。
やばいぞ、このままだとラティアにも危害が出てしまうかもしれん。
ならさっさと俺の頭をレインに差し出してもらおう。
『ラティア、俺の頭をレインに……』
「暴風!」
「――! なにっ!」
いきなりレインが竜巻に包まれた。
何が起こったんだ。
「これハ……もしかしてエイラ!」
空中を見るとエイラの姿があった。
どうやら風魔法を使って俺達を守ってくれたようだ。
「まったく、外にいるなら外にいるって言ってよ。ずっと屋敷の中を探していたわ」
「――から――さい! ――っ!!」
レインが何か叫んでいるが……竜巻の音がうるさくて良く聞こえないな。
「で、この小娘はなんの? とりあえず武器を持っているから動けない様にしたけど」
小娘って……エイラの方がどう見ても小娘なんだが。
いや、今はそんな事を言っている場合じゃないな。
『説明は後だ。ラティア、エイラ、ここから逃げるぞ!』
「えっ? でモ……」
『今のレインに何を言っても無駄だ、操られているからと聞く耳を持ってくれない。だから一度距離を離すんだ。エイラ、悪いが俺の体を運んでくれ!』
「はあ? なんであ~しがあんたの体を運ばないといけないのよ」
そんな嫌そうな顔をしないでくれよ。
何故か動かせないんだからしょうがないだろ。
『俺の体が動かないんだよ!』
「あ~そゆこと。ならもう動けるはずだよ」
『え?』
そう言われて俺の体を動かしてみる。
すると左右の腕、足が俺の思い通りに動いた。
『本当だ……何でだ?』
確かに動かなくなったのに。
意味が分からん。
まぁ動けるのならそれでいい、今は逃げるのが先決だからな。
『よし、走るぞ!』
「はっはイ!」
俺の頭を持ったラティアと頭のない俺の体が走り出す。
うーん……頭のないプレートアーマーが走っている姿を見ると、レインの言う通りデュラハンにしか見えないな。
逆の立場だったら俺も勘違いしていたかもしれん。
「――――! ど――行――! 逃――な!」
逃げる俺達に向かってレインが叫んでいる。
逃げるな! 的な事を言っているみたいだ。
「ぜぇ~ひぃ~ぜぇ~ひぃ~」
ん? なんかラティアの様子がおかしいぞ。
顔はよく見えないけど、これ絶対は顔色が悪くなってきているよな。
『おっおいラティア、大丈夫か?』
「ぜぇ~ひぃ~……大……丈夫、じゃない……でス……もっもう……限……界……でス……」
やっぱりか。
もう疲れたのかよ、全速力で走っていたとしてもそんなに走っていないのに。
「もう~ラティったら相変わらず体力が無いわね。仕方ないな~……よっと」
「うぇッ!」
エイラがラティアを持ち上げた。
流石ドラゴニュートだな、そのまま運ぶ気か。
「はい、アースは両腕を前に出して」
『? こうか?』
言われた通り両手を前に出したが、これに何の意味があるのだろうか。
俺もついでに運んでくれるのだろうか。
「ほいっと」
「きゃッ!」
『おわっ!』
と思っていたら、俺の両腕にラティアを落としてきた。
ええっ俺が運ぶの?
どう考えても力があって空を飛べるエイラの方がいいと思うんだけどな。
「……こっこここここここれっておひお姫様だっコ!? ア、アース様にお姫様抱っこヲ……!」
とはいえ、落とすわけにもいかない。
このままラティアを運んで走るしかないか。
「ところでさ、逃げるって何処へ行くの?」
『あっ』
そうだ、そこを考えていなかった。
屋敷とは反対側に走って来たし、屋敷に戻ったとしてもすぐ見つかってしまう。
でも、このまま行く当てもなく走り続けても……。
「その感じは考えてなかったのね。じゃあ、あ~しについてきて」
エイラが俺達の前を飛び始めた。
どこに連れていかれるのかわからんが、このまま走るよりかはいいか。
エイラを信じてついて行こう。
「絶――逃が――よ!! ど――でも追い――――るんだからああああああああああああああ!!」
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