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4章 物作り

7、出来上がり

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 朝日が昇り、辺りが明るくなってきた。
 ああ、もう朝か。
 ……眠い……眠いけど今日も1日頑張らないと。
 僕はベッドからゆっくりと起き上がり、横で寝ているアリサに声を掛けた。

「ア、アリサ……さん、起きて。朝だよ、おーい」

「……んっ……うう……」

 僕の声にアリサが目を覚まし、ゆっくりと上半身を起こした。

「ふあ~…………おはよ~……リョーって、朝早いよね~……」

「そ、そうかな。アハハハ……」

 早いんじゃなくて、ただ寝れていないだけです。
 こればかりは自分の問題だから、アリサに文句を言っても仕方ないのが悲しいところだ。

「え、えと……じゃあ朝の支度しようか」

 今までの野宿とは違って、今日から拠点で生活を開始する。
 となれば朝の支度が当然やらないといけない。

「わかったわ。あ~それにしても、ここから沢まで行って、顔を洗いに行くのは面倒ね」

 確かに朝から歩いて顔を洗いに行くのは面倒だ。
 まぁ水汲みもかねてだから、結局は沢に行かないといけないんだけど……その辺りも考えないといけないか。
 でも、今はその前にやらなければいけない事があるんだよな。

「そ、その前にやらないといけない事があるんだよね……」

「ふえ? 顔を洗うより、先にやる事?」

「そ、外のかまどとシェルターのかまども火が消えている……つまり……」

 僕はひもぎり式道具を手に取り、アリサに見せた。
 そう、真っ先にやる事は火おこしだ。

「……ああ……そっか……そう、だね……」

 道具一式を見たアリサはうんざりした様子。
 その気持ちすごくわかる。
 朝起きて早々に肉体労働をしないといけないんだからな。
 でも、こればかりは必要な事だからやるしかない……。

「そういえばさ、火おこしって、1人でも出来るの?」

「……へっ?」

 火おこしの準備をしていると、アリサが不思議な事を聞いて来た。

「そ、それはできるけど……」

 何でそんな事を聞いてくるんだろう。
 まさか、自分だけ楽したいとか考えているんじゃないだろうな。
 おいおい……無人島でそれは許されないぞ。

「あっ! 誤解しないで! うちが楽したいとか、そういう訳じゃないから!」

 僕の思った事が顔に出てたのか、アリサは慌ててそれを否定して来た。

「リョーが居るから、今は火をおこせるけど……うち、1人だと……」

「あー……なるほど」

 そうか、今までアリサは火の魔法でつけいたんだものな。
 この島に来てからも僕と2人でやっていたし。

「だから、いざって時にうち1人でも、火を起こす方法を知りたいなと」

 確かに……僕が病気や怪我で動けなくなってしまったら、火が無い状態になってしまう。
 それは非常に良くないぞ。水同様に火も重要だからな。
 けど、まいぎり式の道具はまだ作れない……なら、きりもみ式とゆみぎり式の2つを説明しておくか。

「わ、わかったよ。えと、僕が教えられるのはきりもみ式とゆみぎり式の2つだね」

「ふむふむ……きりもみ式と、ゆみぎり式」

「きりもみ式は、この木の棒を両手で回転させて火を起こす方法」

 僕は手にしていたひきり棒を両手に挟み、手を擦ってひきり棒を回転させる所をアリサに見せた。
 ……ちょっと見せただけなのに、もう手のひらが痛いぞ。
 やっぱりこのやり方だと慣れている人がやらないと駄目だな。

「ゆみぎり式は……ちょっと待ってね」

 僕は頑丈そうで少し曲がった枝を拾い上げ、両端に蔓を縛って簡単な弓を作った。

「この弓の蔓をひきり棒に巻き付けて…………こんな感じで、回転させて火を起こす方法」

 弓を前後に動かして、ひきり棒を回転させた。
 うーん……この枝は駄目だな。
 頑丈だけど、しなりがあるからうまくひきり棒を回せない。
 今後やるなやら気を付けないといけないな。
 これは実際にやってみないとわからない問題だった。

「なるほど、わかったわ。とにかく、木の棒を回転させればいいのね」

 厳密には、燃えやすい火口とか木の種類とかも関係あるんだけど……まぁあながちそれも間違いじゃないからいいか。

「でも、きりもみ式は、うちには無理ね」

 アリサが両手を挙げてヒラヒラと羽根を動かした。

「……確かに」

 半分以上羽になっているアリサの手だと、火きり棒を回すというのは無理だ。
 となると、ゆみぎり式にむいている枝を探さないといけないな。
 で、まいぎり式の道具作りも考えた方がいいか……。

「……ま、まぁ今日の所はひもぎり式で火を起こそうか」

 どちらにせよ、今火おこしをするのが先だ。

「うん。教えてくれて、ありがとうね」

 その後、2人して必死に火を付けた。
 アリサ1人でも火を起こせるようになるのは大切だけど、ひもぎり式で素早く安定して火おこしが出来るのも重要だよな……問題は山積みだ。



「じゃあ、行ってくるね」

「う、うん。気を付けて」

 火おこしも無事に終わり、アリサが先に沢へと行く事になった。
 僕は火の番で残り、アリサが戻って来たら交代という流れだ。

「さて、朝ご飯の準備をするか……とは言っても、今から卵芋の蒸し焼きを作る時間は無い……もう焼き卵芋でいいか」

 残っていた卵芋の殻を割り、木の棒を刺して火の傍へ置いた。

「これで良し。後は、土器がどうなったのか確認をしないと」

 シェルターの中へ入り、火が消えたかまどの炭を退かして土器を拾い上げた。

 まずは比率A……は底の部分しかない。
 縁の部分が無くなっていて、皿みたいになってる。
 その皿の部分も手に持つと粉々になった。
 予想通りと言えば予想通りだけど、なんか悔しいな。

 そして、比率B。
 これは器の形も残っているし、うまく焼けている感じだ。
 指ではじいてみるとカンカンと音が鳴っているから、十分に固まっている。
 ただ、あちこちヒビが入っているから水は入れられないな。

 最後、比率C。
 器の形がぐにゃぐにゃに変わっちゃっている。
 柔らかかったから焚火の炭の重みで変形したっぽい。
 これも失敗……と言いたいところだけど、指ではじいてみるとカンカンと音が鳴る。
 ヒビもなく比率Bよりもきれいに固まっている感じ。

 比率Bは大量のヒビ割れ、比率Cは型が無いと形が変わる。
 となると、比率Bと比率Cの間が良さそうだな。
 ……うん、アリサが戻ったらさっそくそれで土器を作ってみよう。



 アリサが戻り、火の番を交代した僕は沢には向かわず粘樹の所まで向かった。
 流石に粘樹の樹液はもう出ておらず、鱗で新しい傷をつけて採取する事にした。

「んー今後の事も考えると、毎回傷をつけて採取っていうのは良くないよな」

 それで粘樹が弱って枯れてしまっては大問題だ。
 採取方法も何かしら考えないといけないぞ。
 なんか色々やる事が増えて来てばかりだ……。

「っと、今は土器づくりに集中集中」

 比率はともかく作った粘土が火で固まる事はわかった。
 なら、今度は大き目の土器にチャレンジだ。
 比率Bと比率Cの間の比率で作った粘土に、強度をあげる為繊維状の葉を砕いて混ぜる。
 そして皿を作って、ひも状にした粘土をその周り乗せていって側面を作っていく。

「…………出来たっ!」

 サッカーボール位の大きさの器が完成。
 うーん……自分でいうのもなんだけど、これは素晴らしい物が出来たぞ。
 この縁なんて荒々しい波の様な感じですごく迫力がある。
 あれ、もしかして僕って陶芸の才能があるのでは……?

 そう思った僕は2個目、3個目と器を作った。
 どれもこれも素晴らしい出来に僕は酔いしれ、スキップをしながら拠点へと戻った。
 こんな才能があるなら有名な陶芸家になれちゃうんじゃないかな?
 もしかしたら、1個数百万円で売れちゃうかも!?
 と本気で思っていた。

 僕の作品を見て、アリサがお腹を抱えて大爆笑する……その時までは……。
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