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1章 無人島生活開始

3、物は使いよう

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 水を飲み落ち着いた僕は沢の辺りを見わたした。
 今流れている水量のわりに、大小の石が多く転がっている。
 という事は、ここって谷になってて雨が降れば水量が増えるっぽいな。
 だとしたら雨が降った後には気を付けないと。

「やっぱ、水源がどの辺りにあるのか確認した方が良いよな……はぁまた山登りか……」

 ぼやきつつも近くにあった大き目の石にバツ印をつけ、上流へと向かう事にした。
 10分ほど歩いただろうか。
 水が溜まっていて、底の砂がボコボコと巻き上がっている場所を発見。
 ここがこの沢の始まりか。
 だとすれば、水を飲むとすればこの辺りからの方が良さそうなんだが……水源の場所が悪い。
 喉が渇いたら一々ここへと歩かないといけない事になる。
 それはかなり効率が悪い。
 何か水を貯められる物が欲しいな。
 けど今、そんな入れ物を持っていない。

「うーん……とりあえず、今は置いておくか」

 水を貯める手段も重要だけど、今すぐってわけでもない。
 今優先されるのはシェルターと火だ。
 でも、腹も減ったんだよな。
 水を手にしたのだから、多少空腹を我慢してでもシェルターを作って火を起こすのが正解だと思う。
 思うけど……目の前に食べ物があったと思うと……。

「うう……どうしたものか……うーん…………決めた!」

 腹が減っては戦ができぬって言葉もある。
 カラフルな実がある木の場所もそこまで離れていない。
 という訳で、腹ごしらえからだ!
 そう考えた僕はバツ印をつけた場所へと戻り、カラフルな実をつけている木に向かってまた山を登る事にした。


「ぜぇー……ひぃー……」

 カラフルな実の木の場所まで到着。
 結局、汗で飲んだ分の水分が無くなって喉が渇いた。
 もしかして、僕の判断は間違って……いや、今は目の前にあるカラフルな実を手に入れる事だけを考えよう。

「……あー……さっきはあの実だけにしか目がいっていなくて、ちゃんと周りを見てなかったのが失敗だったな」

 カラフルな実の木は主張が強いのか、他の木の枝があってもお構いなしに横へ広がっている。
 そのおかげで木登りがしやすい木から登れば、簡単にカラフルな実を取れる。
 最初からこうしておけば……でも、実を追いかけて水を見つけたわけだし……何とも言えないな。
 まぁいいや、食べ物食べ物っと。

「よっ……よし、ゲット!」

 なんか、カラフルな色のせいでヨーヨー風船みたいだな。

「くんくん……けど、匂いはリンゴに近いな」

 リンゴの匂いがするヨーヨー風船。
 ……なんか食欲が……駄目だ駄目だ、そんな見た目で判断しちゃあ。
 問題は味、そして食べれるか、だ。
 拭く物がないから仕方なく今着ている服で実を拭いて、僕はヨーヨー風船にかぶりついた。

「はむっ」

 ふむ、食感は桃っぽ――っ!?

「――しゅっぱっ!!」

 なんだこれ!? ものすごく酸っぱいぞ!
 まるでレモンを皮ごと口に入れたような感じだ!

「んんっ! ――ごっくん」

 不意に酸っぱい物を食べたせいで吐き出しそうになりながらも耐えて飲み込んだ。
 腐った酸味じゃなくて柑橘系の酸味だった事と、今は食べ物を粗末にしていられないからだ。
 酸っぱいのを我慢して1個を食べきった。

「……ふぅ……食べれない事はないけど……」

 だからって毎日ってのはきついな、これ。
 でも、今食べられるってわかっているはこれしかないから我慢するしかないか。
 これからは、動物が食べた物がないかを注意深く見ながら歩かないといけないな。
 水同様、入れ物が無いので仕方なく両手にカラフルな実を1個ずつ持ち、僕は沢へと戻る事にした。
 沢へと戻るのは水を飲むためじゃない。
 次に作るシェルターに必要な物を取る為の道具を作るためだ。

 シェルターを作るのに必要なもの。
 ・大人の腕くらいの太さがあり、出来るだけ固い木が数本。
 ・木や屋根を括り付ける為の紐。

 今後、木は色々と使い道があるから出来る限り多くほしいな。
 紐は作ろうと思えば作れるけど、今回は時間節約でその辺に伸びている蔓を使おう。
 で、木を切るには斧や鉈、蔦を切るのにも刃物が欲しい。
 無論、今の僕にそんな物はない。
 じゃあどうするかというと……石器だ。
 それで石がたくさんある沢に戻ってきたわけだ。

「えーと……まず加工しやすそうな、平べったい形の石を……あった、あった」

 そして、その石を別の石でコツコツとたたきながら形を整えて……。

 ――コンコンコン……パカッ

「ああっ!!」

 叩いていると平べったい形の石が真っ二つに割れてしまった。
 これは力の加減が難しいな。
 まぁ器を作るのは初めてだから仕方ないか。
 気を落とさずに次だ次。

 ――コンコンコン……パカッ

 ――コンコンコン……パカッ

 ――コンコンコン……パカッ

 ――コンコンコン……パカッ

「だあああああああああ! どれもすぐ割れる!」

 これは僕の力加減が原因というより、選んだ石が柔らかんだ。
 どれが石器に向いている硬い石なんだ?
 全部一緒に見えてわからん。
 まずいぞ、このままだと何もできないまま夜になっちゃう。

「硬い石……硬い石……硬い……硬い? ……あっ!」

 石じゃないけど、すごく硬い奴を僕が持っているじゃないか。
 そう、今朝拾った赤い板だ。
 柿の葉っぱの様に先端が尖っているから、まさにその部分を使ってくださいと言わんばかりだ。

 さっそく僕は尖っている所に蔓を当て思いっきり引っ張った。
 すると、蔓は簡単に切断することが出来た。
 蔓を切るのはこれでいい、けど流石に木を切るのは難しいよな。
 棒に括り付けて斧みたいにするか?
 あ、それだと実用強度が低くて使いから、農具みたいに持ち手と噛み合わせるのが理想だったな。
 んーその持ち手の作り方を思い出しながらだと、絶対に時間が掛かる。
 ただでさえ石割で時間かかって……石割……叩く……これならいけるかもしれない!

 板の尖っている部分を幹に当てて、その後ろを石で思いっきり叩いた。
 カーンというと音が鳴り響き、板は幹に付き刺さった。
 思った通りだノミみたいに使えるぞ。
 これで幹を削っていって、ある程度細くなった所をへし折ればいいだけだ。

「いける! これでシェルターを作れるぞ!」
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