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1章 無人島生活開始

2、水を求めて

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 日も沈み、辺りはもちろん真っ暗になってしまった。
 喉が渇いたし、お腹もすいたな……。
 けど、この暗さで森の中を歩くのはあまりにも危険だ。
 それにここは異世界、何が潜んでいるのかわからないし。

「はぁ……」

 動けない状況なので、仕方なく僕はその場に寝転んだ。
 夜空には綺麗な星が輝いている。
 そして紅い月と蒼い月が並んでいる、こっちの世界の月は二つあるんだな。

「……僕はここで死ぬのかな……」

 こんな無人島で?
 憧れの異世界に来たのに?
 そう思うと自然と涙が出て来た。

「…………そんなの……いやだ……」

 こんな訳の死にたくない!
 僕はまだまだ生きたい!
 こんな所で……こんな所で……!

「こんな所で、僕の人生が終わってたまるか!!」

 これは【異世界の旅】じゃない、【異世界のサバイバル】だ。
 なら今まで得たサバイバルの知識を使う時。
 まぁネット動画や雑誌等で得て実戦はしてないけど……それをいきなり実戦、ましてや異世界の無人島でそのサバイバル術が通用するかどうかわからない。
 でも、この島で生き抜く為にはやるしかない。
 意地でも生き抜いて、この島から脱出してやる!!

 そう僕は決意し、体力温存の為に眠りについた。



 太陽が昇り、辺りが明るくなってきた。
 それに合わせ、僕は起き上がった。
 結局、体力温存と思ったけどあまり寝付けなかったな。
 まぁそれ関しては仕方ない……状況が状況だしな。

「さて、やらないといけない事は……」

 頭をフル回転させて色んなサバイバル動画の内容を必死に思い出す。
 まずサバイバルで必要なものとして水、火、雨風等をしのげるシェルター……だったよな。
 そして、その中で優先されるのが水だ。

 で、水のとり方としては。
 ・水源を探す
 ・雨
 ・植物
 ・海水
 ・石や木の窪みにたまった水
 ・尿
 僕が覚えているのはこの位。

 ただ、海水をそのまま飲むのは絶対に駄目、逆に体の水分が無くなってしまう。
 海水は蒸留出来る道具がないとまず飲めない。
 そして、窪みにたまった水もろ過や煮沸が出来なければ細菌等で危険。
 この2つは候補から除外だ。

 残りの候補から考えよう。
 雨は……今の空は快晴、雲一つない。
 夕立でも来ない限り、今すぐ雨で水分を取るのは無理。
 植物はサボテンみたいに水分の多いタイプから取る、もしくは一部を切ってそこから出て来る水分を貯める方法だけど、この異世界の植物がどんな性質かわからない以上、うかつに口へ入れるのはまずいよな。
 そして尿は…………贅沢は言っていられないけど、本当のほんとおおおにやばくなった時の最終手段として残しておこう。

「……となると、水源を探すか」

 昨日、この山に登っている時は見当たらなかった。
 だから登って来たのとは別の方向へ行くのは確定だな。
 後はどの方向へ行くかだけど……ん?
 水源がありそうなとこがないか辺りを見わたしていると、この拓けた場所に何個か赤い物が落ちているのに気が付いた。

「なんだこれ?」

 その赤い物を拾い上げてみる。
 柿の葉っぱのような楕円形の板で、僕の手のひらより少し大きい。
 素材は何だ? 鉄じゃないし、プラスチックでもない。
 割ってみるか。

「……んんっ!! ――かったっ!」

 板を割ろうと力を入れてみるが、僕の力では割れそうにもない。
 石……いや、それ以上の強度がありそうだ。

「特に危険なものじゃなさそうだけど……」

 今は物資が何一つない。
 こんな訳の分からない板でも、なにかしらの役に立つかもしれない。
 僕は拾った板を腰のベルトに挟んで持って行く事にした。

「さて、降りる方向は……」

 よし、わかりやすく太陽が登った方向、東へ向かうとしよう。
 この世界の太陽が東以外でも昇る可能性もあるけど……俺の中では東という事にしておこう。
 


「ふぅー……ふぅ―……」

 登りより、降りの方が辛い。
 滑り落ちたら大変だからより神経を使うんだよな。
 そのせいか、ますます喉が渇いた。
 おまけに軽い頭痛とめまいもして来たし。
 まずいな、これは脱水症状だ。
 このままだとぶっ倒れて動けなくなってゲームオーバーだ。
 どうしたものか。

「……?」

 耳を澄ますと、バサバサと羽ばたく翼の音が聞こえる。
 僕は身の危険を感じ、とっさに木の陰に隠れた。
 すると頭上から大きな黒い鳥が枝にとまった。
 見た目はカラスそっくりだけど、大きさが普通のカラスより2倍くらい大きい。
 そして、額には第3の目がある。

「こえぇぇ……」

 もし普通に旅立っていたら、あんな化け物と戦う事になっていたんだよな。
 それはそれで僕に出来たのだろうか。
 本当に何で僕が選ばれたのか不思議だ。
 息を潜めていると、大ガラス? は目の前にあったリンゴくらいの大きさがあるカラフルな丸い実をつつき始めた。
 しばらくその様子を見ていると、満足したのか空に羽ばたいて行った。

「……ふぅ……怖かった……」

 心臓がバクバクしてる。
 怖い思いをしたが、収穫はあったぞ。
 あの大ガラス? はカラフルな実を食べていた。
 となると、あのカラフルな実は僕が食べれる可能性が高いという事だ。
 霊長類が食べていた物がより安全らしいけど、今はそんな事を言っていられない。
 あとはどうやって採るかだけど……まずは木を揺らしてみるか。

「よっ! よっ! ほっ!」

 幹を揺らしてみようとするがびくともしない。
 それならと、僕は少し離れて木に向かって思いっきり体当たりをした。

「おらああああああああああああああああ!」

 木に体当たりすると、少し木が揺れてのカラフルな実が1個落ちて来た。

「やった! ……って、うそだろ!?」

 カラフルな実は地面に落ちたと当時に、斜面をコロコロと転がっていってしまった。

「まてまてまてまて!」

 僕は慌ててその後を追いかけた。
 その後、僕はこのカラフルな実の事を【幸運の実】と呼ぶ事になる。


 結局、カラフルな実は見失ってしまった。
 しかし、それ以上に大きなモノを見つけることが出来た。

「うおおおおおおおおおおおおお! 水だ!!」

 僕の目の前には小さな沢。
 そう奇跡的に水を発見する事が出来たのだ。
 さっそく、水を手にすくって確認してみる。

「……無色透明……くんくん……変な匂いは無し……味は……」

 少しの口の中へいれテイスティング。
 味は全くしない。
 危険を感じないが、素人の俺がそれを判断してもいいのだろうか。
 それに水は水源に近い上流を飲んだ方が良いって話だったよな。
 下流になるにつれて細菌も増えてくるからと…………けど、もう限界だ!
 僕は水を手にすくい何度も口へと運んだ。

 無味無臭の水だったけど、僕の人生の中で一番おいしい水だった。
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