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3章 とある女神サマ、再降臨

女神サマは家に居る

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『ふ~ふふ~ん……あ、おかえり~』

「……」

 家に帰ると、ソファーの上で寝っ転がり鼻歌を歌いながらスマホをいじるメイティーの姿が……。
 その横のテーブルの上には棚に入れてあったポテチが、パーティー開けされて置いてあるし。
 完全に自分の家かの様にくつろいでいやがる。

「……随分と戻って来るのが早かったな」

 メイティーの姿を消してから時間にして約10分。
 俺は1週間くらいはまた戻ってこないんじゃないかとも思ったんだがな。

『ん? そりゃそうよ、だってアタシのスマホを取りに戻っただけなんだし』

 それはそうなんだけどさ、その戻る行為に俺は疑問を持っているんだよ。
 まぁ戻って来たんだから10分前の疑問に答えてもらおう。
 じゃないと俺の心のモヤモヤが取れないし。

「でも、それって天界に帰って事になるよな。不合格扱いになるんじゃないか?」

『ああ、大丈夫大丈夫。スマホを取りに戻っただけだし、それにお父様もすでにいなかったわ。だから問題はなしよ』

 人に対して違反をすれば、連れ戻されて檻に入れられる。
 けど、スマホを取りに天界に帰るのは違反にはならず問題はなし。
 厳しいのか、適当なのか……わからん。
 と言ってもそのお父様が何も言ってこない以上、これは当人達の問題だからこれ以上はいいか。
 そうだ、お父様と言えば。
 
「なぁメイティーの父親って神なのに治療魔法を使えないのか?」

『そうよ、神にだって得意不得意はあるわ』

 お前、自己紹介の時に全知全能の女神メイティーって言っていたよな。
 ……いや、こいつの事だから見栄を張って言っただけに違いない。
 それを指摘すると、ぎゃーぎゃーと喚くのが目に見えるから黙っておこう。

『まぁそのおかげで、アタシのスマホがここにあるんだけどね~』

「けどさ、治癒魔法が使えるのは母親だけじゃないだろ? 出張先に治癒魔法が使える神様がいなかったとは思えないんだが……」

『はあ? 何馬鹿な事を言っているのよ。そんな事をするとお金が掛かっちゃうじゃない』

「お金って……えっ治療費を取るのか!?」

 おいおい、神様なのに治療費がかかるって聞いた事が無いぞ。

『そりゃそうよ、何事にもお金が必要なのは当たり前の事でしょ? 何でそんなに驚くのよ』

 そうだけど! そんな怪訝な顔でこっちを見ないでくれ!
 俺が常識を持っていないみたいじゃないか!

「いや、それはわかるが……天界でお金を使うイメージがなかったから驚いたんだよ」

『貴方の天界のイメージって、よくわからないわ』

 よくわからないのはこっちの台詞だっての。
 そもそも、そのお金って天界独自の通貨なのかな? それならどんなものか見てみたいが……あっ待てよ、天界に家電製品があるのならこっちの世界で買っているて事だよな……そってつまり……。
 うん、俺の想像が合っていればこれ以上聞くと、また馬鹿にされそうだから黙っていよう。

『もうこれ以上話す事はない? アタシ、夕飯までにはやっておきたい事があるんだけど』

「え? ああ……」

 って、飯はやっぱり俺が作れと。
 得意不得意の話で、メイティーの不得意の方は家事とみた。
 料理は焦がし、洗濯物は雑に干し、掃除をすれば逆に汚くなる……すごくしっくりくるなー。
 つかこいつが神野さんと同じ顔のせいで、神野さんもそうじゃないかと思えてきた。
 流石に違うよな? こいつとは違うよね、神野さん。

『え~と……次の項目は……』

 メイティーが紙を見ながらスマホに打ち込んでいる。
 項目とか言っているし、どこかの登録でもするのだろうか。
 変な所じゃなければいいけど。

『ピンクの花柄……っと……』

 ピンクの花柄……?
 そうか、メイティーが見ていたのは普通の紙じゃなくて今日書いていたメモだ!

「なぁ夕飯までにはやっておきたい事って……」

『ん? そうよ、あの娘のデータをスマホに打ち込んでおきたいの』

 やっぱり。
 これってプライバシー問題だから止めた方がいいのかな。
 あーでも、メモがある時点で止めても無駄か。
 なら、あのメモとスマホを隙をついて奪い取るしか――。

『で~誕生日は5月5日で……』

 へぇ~神野さんの誕生日って5月5日だったのか。
 気にはなっていたんだけど、今まで聞くに聞けなかったんだよな。
 これは大事だから覚えておかないとな、出来れば祝いたいし。
 5月5日、こどもの日だから覚えやすい……な……。
 
「はあああ!? 5月5日だって!?」

 こどもの日なんて、とっくに過ぎているじゃないか!!

『きゃっ! ちょっと、急に大声を出さないでよ! びっくりしてスマホを落としかけちゃったわ』

「嘘だろ……マジかよ……5月5日だったなんて……」

 その日は1日中ゲームをしていたぞ。
 知らなかったとはいえ、何をやってんだ俺は。

『急に大声をあげて、膝をついての落ち込み具合……まさか、貴方誕生日を知らなかったの!? あの娘を好いているんでしょ!?』

 メイティーにド正論な事を言われた。
 それに関しては何も言い返せない。

「……はい……聞く勇気がなくて……」

『……』

 メイティーがこのヘタレ野郎って感じで俺を見ている。
 痛い、その目は痛いよ!
 そんな目で俺を見るな!

『まぁこれ以上触れないで置いておくわ……』

 助かります。

『じゃあ、貴方の誕生日の話を聞かせて』

「……俺の誕生日?」

『そう、今後の参考にしたいから教えてほしいの。誕生日はどうするの?』

 その辺りは、人間界も天界も同じ様な気がするけどな。
 これは別に答えてもいいか。

「親から連絡貰って、義秋に飯を奢ってもらった」

『……へっ? それだけ?』

 メイティーがキョトンとした顔をしている。
 別に高校生になっているんだからこんなもんだと思うんだが……。

「それだけ」

『パーティーを開いたり、プレゼントを貰ったりは……』

「なかった」

『なによそれ! 全く参考にならないじゃない! もっと派手にやんなさいよ!』

 なんでお前にそんな事を言われないといけないんだ。

「知るかよ! だったらお前の時はどうだったんだよ!?」

『アタシ? アタシの時は親族、友達、その親、そのほか関係者の神々を招待してパーティーを開いたわね。豪華な食事やプレゼントを貰ったわ』

 予想以上に豪勢だった。
 何で貴族みたいな事をしているんだよ、こいつは。
 俺なんて、義秋に奢ってもらったのはハンバーガーだったのに……。

『もういいわ、アタシは作業に戻るから早くご飯作ってね』

 何だろう、この圧倒的敗北感。
 いや……気にするな……誕生日の過ごし方なんて人それぞれなんだから……そう、人それぞれ……。

「ふぅ……よし、作りますか」

 あっそういえば、香夏子からお祝いメッセージが来てたっけ。
 あいつの事だから他の友達にも送っているだろうけど……それでもお祝いメッセージを送ってくれるのは嬉しかったな。
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