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3章 とある女神サマ、再降臨

人も神も

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 卵焼き……卵焼き……卵焼き……。
 俺の卵焼き……。

『もう~ごめんってば~貴方が好きな物を最後に残すタイプだなんて思わなかったんだもの』

 昼休みも終わり、メイティーに卵焼きの事を話したらかなり驚いていた。
 メイティーは好きな物を最初に食べるタイプだったらしく、それで勘違いしたらしい。
 まぁ確かにその気配りは嬉しいよ、嬉しいけどさっきのタイミングは全く違う。

『それに卵焼き位いいじゃない! また作ればさ!』

 そう……普通の卵焼きなら何度でも作れる……普通の卵焼きならな。
 だが、さっきの卵焼きに関しては違うんだ。
 なんてったって神野さんの手作り卵焼きなんだからな。
 他の人が作ったのや、まして俺が作る卵焼きとは価値が違いすぎる。
 ああ、先に食べておけばよかった。

『……駄目だわ。アタシの話が聞こえないくらい落ち込んでいる』

 うるさいな、聞こえているわ……けど、今は午後の授業中だから話しかけれないだけ。
 まぁ落ち込んでいるのは正解だけど。

『う~ん……どうにか元気付ける方法はないのかしら』

 お前が余計な事をしなかったら、俺はすごく元気になります。
 んーうるさいし、ほっとくと余計な事をしそうだし、注意をしたいところだ。
 でも、それを伝えようにもこいつスマホ持ってないしなーどうしたものか。
 ……あっそうだ、別にスマホで伝える必要はない。
 普通にこのノートに書いて見せればいいだけじゃないか。
 えーと、今は授業中だから……静かにしてくれ……っと、これでよし。
 後はこの部分をメイティーに見せればいいな。
 暇そうに机を指で叩く感じで、そこの部分を見る様に……。

 ――トントントン

『……ちょっと、机をトントンと鳴らさないでくれる? うるさくて考えに集中出来ないんだけど』

 なんでだよ! どうしてこうも伝わらないんだ!?
 つか、うるさいのはこっちの台詞だし!
 そもそも他にも物音や先生の声もあるのに、なんでトントンと叩く音の方が気になるんだよ!
 もういい、無視だ! 無視!

『……そうだわ。明日アタシがお弁当を食べてあげるから、その時また貰えば良いじゃないの! それでまた距離も縮まってまさに一石二鳥!』

 確かにそれで神野さんの卵焼きを食べられる可能性はあるが……流石に2日連続でそんな事をしたくない、こいつ飯台を浮かせようと味をしめたんじゃないか? とか思われそうで怖い。
 後、なんでお前が食べる必要があるんだ? それをするなら忘れたとかでいいじゃないか。
 弁当箱に鎖を蒔いて鍵をかけた方がいい気がしてきた。
 ああーもう、無視したいのに無視出来ない!
 ある意味才能だな、これは……。



 結局、放課後までずっとメイティーの奴がしゃべり続けていたから別の意味で疲れた。
 とりあえず、さっさと家に帰って体と心を休め……られないか。
 俺の横で浮いている女神が居る限りはな。

 ――ブブッ、ブブッ

「ん?」

 電話がかかってきたけど、表示された番号は知らないな。
 なら放置かな、詐欺や勧誘の可能性もあるから後で何号を調べて……。
 
 ――ブブッ、ブブッ、ブブッ、ブブッ、ブブッ、ブブッ、ブブッ

 長い……一向に切れない。
 詐欺や勧誘じゃないとしても普通に長すぎる。
 もしかして重要な電話なんだろうか?
 しかたない、とってみよう。

「……もしもし?」

《あ、もしもし~。やっと出てくれた》

 電話の相手は女性だ。
 すごく上品で透き通った声の人だな。

《あの種島 春彦さんでしょうか?》

 相手は俺の名前を知っているみたいだが、俺はこの女性が全くわからないし見当もつかない。
 だとすれば、素直に答えず様子を窺ってみるか。
 少しでもおかしな言動が出れば即切って着信拒否にしよう。

「……どちら様でしょうか?」

《あっ申し訳ありません! わたくし、メイティーの母です。娘がお世話になっています》

「……ええっ!?」

 何でメイティーの母親から電話がかかってくるんだ。
 というか、なんで番号を知っているんだよ!?

「どうしたの? 春彦。すごく驚いているけど、何かあったの?」

 しまった、びっくりしすぎて大声をあげてしまった。
 皆が何事かとこっちを見てる……まずい、女神の母親から電話がかかって来たなんて言えるわけもなし。

「えと……かっ母さんが今から俺の部屋に行くって言ってきたんだ! でー今部屋が汚くてさ! それで動揺してつい声が出ちゃった! 驚かせてごめんな、みんな! という訳で、帰るわ! じゃあな!」

 このまま教室に居るのはまずい。
 急いで体育館裏……は駄目だ、放課後だとあちこちに人が居る可能性がある。
 仕方ない、学校から離れた場所で話を聞こう。

「俺が種島 春彦でがすみません! 後5分くらい後でかけなおしてもらってもいいですか!?」

《え? あっはい、わかりました》

 メイティーが帰って来ると、どうしてこんなに走らないといけないんだ。



「ぜぇーぜぇー……」

 この路地裏なら人通りも無くて大丈夫かな。

『どうしたのよ、いきなり走ったりして』

 誰のせいだ、誰の。

 ――ブブッ、ブブッ

 丁度かかって来た。

「ぜぇーぜぇー……はい」

《あの~息切れをしている様ですが、どうかしましたか?》

「いっいえ……気にしないでください……で、ご用件は?」

《えと、近くに娘はおりますか?》

「……はい、横で浮いています」

《代わってもらってもよろしいでしょうか》

「わかりました。お前の母親からだ」

『ほへ? お母様から? ――もしも~し、どうしたの? うんうん……えっ! お父様が!? うん、わかったすぐ帰るわ』

 どうやら、何かあったみたいだな。

「何かあったのか?」

 事故か……はたまた……。

『お父様が出張先で荷物を持ち上げて腰をやっちゃったらしいわ』

「はっ?」

『何でも出張先にいた女神にいい所を見せようとして、腰がゴキッっと……馬鹿だねぇ~』

 それって、どこかで聞いた事のある話なんだが……。

『それで、治癒魔法をお母様にかけてもらうために家に戻ってきているから、スマホを取りに来なさいって』

 なにそれ、そんな事の為だけに俺のスマホに電話をかけてきたの?
 他に連絡手段は無かったのか?
 何で治療魔法の為に家に帰って来たんだ?
 そもそも――。

『じゃあ、ちょっと行ってくるわね!』

「あっ」

 メイティーが消えた。
 天界に帰っていいのだろうか、確か帰ると不合格になるとかなんとか言っていたよな。
 前も天界に帰っているといえば帰っているが……あれは連れ戻されたし、今日姿を現したからノーカンっぽいけど……今回はまずくないか?

「……まぁいいか」

 色々とツッコミたい事があったが、本人が居ないんじゃどうしようもない。
 戻って来るかどうかはわからないけど、戻って来た時に聞いてみよう。

「にしても、男は人も神も変わらないんだな……」
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