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コメディ
『バレンタイン・デスローリング』(男3:女1:不問1)
しおりを挟む『バレンタイン・デスローリング』
作 / 鳳月 眠人
狩る側
A:Cのことが好きなドロデレ女(教員)
B:リア充この世から滅ぼしたいマン(理事長)女性でも可
狩られる側
C:Aに狙われるモテメン(養護教諭)
D:Bに狙われるイケメン(教員)
E:巻き込まれた生徒。男女どちらでも
どうぞ演者様ご自身のお名前を入れて遊んでください。
男女変更、言い回し変更、本筋を変えない程度のアドリブ可能。
◆◇ここから台本◇◆
E:
これは、リア充イベントの終わった、夜の学校の出来事。いや、凄惨な事件の記録だ。
── 間
── 舞台は、とある学園──
B:
「出てきてください先生方。あなた方にもう逃げ場なんて、残されちゃいないんですよ」
A:
「ねぇ……このあたりに隠れてらっしゃるんでしょう、C先生?
命までは……取りませんよ? ただあなたの存在を、私だけのものにしたいだけ……」
C:
ごく一般的な。──否。自分にとっては毎年、そわそわしつつも少し、憂鬱な日。
誰かから好かれることは決して、嬉しい事ばかりではない。
D:
なんでこうなった? もう、今日も一日お疲れ様でしたぁーの流れだったろうが!
なんでこんな恐怖体験、しなきゃならないんだ……っ
C:
「……ハァッ、はぁ、くそっ……D先生、大丈夫ですか」
D:
「っつぅ……すみませんC先生、派手に捻挫しました、痛ぇ……」
C:
「内出血でどんどん腫れてきている……すぐにでもアイシングしたいところですが」
A:
「C先生、C先生、C先生……? ふふっ」
C:
「……A先生……完全にハイになってるな、いつもは優しくて生徒思いで……素敵な先生なのに」
D:
「……あの人、実はプロレス好きで好戦的だって噂が……」
── C、D、ハッと息を飲み
── 廊下に響く足音に押し黙る。間
B:
「やはり我が校の二大モテメンは、確かにここへ逃げ込んだようだ」
A:
「ええ、……先程の理事長の撃った射角と、
封鎖してある校舎との位置関係からも、この北棟で間違いありません。
なによりこの……はぁっ、この、医薬品の微かな香り……ふふ」
C:
「ッ!」
── C、慌てて白衣を脱ぎ捨てる。
B:
「うむ、衣服を囮として、別棟へ投げ込んで逃げるほどの余裕はない」
A:
「早く……このウイスキーボンボン弾を……あの麗しいおクチにぶちこみたぁい……ウフッ」
D:
「校舎から脱出するしかない……けど俺は、ちょっと走れそうにないです」
C:
「肩、貸しますから……頑張りましょう」
E:
「……D先生?」
D:
「! E? 下校時刻はとっくに過ぎて」
E:
「(遮って)どうしたんですか、これどういう……うわ、大丈夫ですか」
C:
「(Eに被せて)シーッ!」
──(銃声)
E:
「ヒッ! ひぇ」
C:
「いま、俺とD先生は、何故か武装したB理事長とA先生に……狙われている」
E:
担任と保健室の先生が、理事長と数学の先生に?
「狙われ……? 武装……? 何コレ、……チョコ?」
── E、先刻、壁に小さな穴を穿って転がった弾丸をつまむ。
C:
「そう見えるんだけどね」
D:
「チョコだと思うか? チョコなんかじゃ発砲の衝撃に耐えられない。
砕けるか溶けるはずだ……」
B:
「声がしましたねぇ」
A:
「教室はすべて施錠されている、ということは」
B:
「どんつきの曲がりカドの死角……階段に潜んでいるのかな。この校舎の階段は二つ」
A:
「はい、上階に逃げられてしまえば、反対側の、今私達のいる方の
階段から下りることができる……外に逃げられてしまいますね」
B:
「では二手に別れるかね」
A:
「承知しました。理事長? D先生だけにしてくださいね?」
B:
「はっはっは分かっているとも。C先生はくれてやりますよ」
C:
「……移動しましょう。Eさん、一緒についてきてくれるかな」
E:
「は、はい」
D:
「くそ……早く帰りたい。家で猫が待ってんだよぉ……」
E:
「え、ねこ? バレンタインなのに彼女じゃないんだ……」
D:
「うるさいよ、E。ハァ、せめてこっちにも、防具だの武器だの、あれば」
C:
「……消化器、一本持っとこうか……」
E:
「重くないですか? D先生担いだままだと」
C:
「そうだね……Eさんがコレ装備していてくれる? ピン抜いとこう」
E:
「おお……始めて使うかも……」
C:
「躊躇わずに使ってね、殿を頼めるかな」
E:
「了解っス」
D:
「お前そんなに従順だったか、」
E:
「え? うーんなんだろ、人徳の差ってやつかな?」
D:
「ぐぬ……」
── 階段をひたひたと昇る三人。
── その後を余裕の足取りで追う理事長。
B:
「ふむ、脱ぎ捨てられた白衣……やはり昇って行ったか」
── 階段を昇りながら、インカムで通信を行うAとB。
B:
「A先生? 対象は……二階をスルーしているね。そして、消化器を装備しているようだ」
A:
「かしこまりました。情報、ありがとうございます……ウフ」
B:
「物好きだねぇ君……どうしてあんな男を欲しがるのか、
そもそもアレが、何故あんなにモテるのか……」
A:
「モテるモテないは関係ないのです、理事長。
その存在が、恋しくて欲しくて耐えられないのです……
手に入らなければ……手に入る方法をとるまで」
B:
「フン、忌々しい……忌々しいが、まあいい。思う存分、食らわせてやりなさい」
A:
「ええ」
B:
「フフフ……これが彼らの、最期のチョコになるのだと思うと、
最高に気分がいい……フハハハハハハハ……」
E:(少し息を荒くしながら小声で)
「実は、図書室でさっきまで寝ちゃってたんですよ、自分、鍵持ってます。
ひとまずそこでD先生、休ませた方がいいかも」
D:
「今回ばかりは、助かる……図書室なら、死角も多そうだし」
C:
「よし、理事長とA先生が昇って来る前に、急ぎましょう」
── 四階、図書室。
C:
「図書室、始めて入りましたが広いですね」
E:
「よし、鍵かけた。先生、こっち」
D:
「なるほど、貸出カウンター乗り越えた奥に……司書室があるんだな」
E:
「そそ。あんまり思いつかないでしょ? ここは番号認証だし、図書室常連には楽勝……
ぴっぴっぴっぴーっとな。はい開いた」
D:
「この学校のセキュリティ、だめだな」
E:
「入って入って」
C:
「よし。応急処置します、座ってくださいD先生」
D:
「ありがとうございます……う、痛ぇ……」
C:
「思いっきり、くじきましたね」
D:
「情けない……」
C:
「仕方ないですよ、あんな急に撃たれたら」
── 間
A:
「おかしいですね……二人に出会わなければ人の気配もない……」
B:
「A先生」
A:
「はい、理事長」
B:
「どうやら二人は図書室のようだね」
A:
「図書室……? どうやって中に」
B:
「今も施錠されている。なぜ入れたのかはわからない。だが二人分の足跡が──
ブラックライトパウダーを踏みしめた足跡が、図書室の中に続いているのだよ」
A:
「そう仰られるなら、間違いないのでしょうね」
B:
「二人の足跡の距離が、やけに近い。どちらか負傷でもしているのかな。フフフ」
A:
「理事長のマスターキーの出番ですね。そういえば、図書室には──」
E:
「ここには避難用救助袋が搭載されてるのですっ! ほら」
D:
「お前、ファインプレーすぎるぞ、どうした」
E:
「そうでしょう、内申上げてくれてもいいんですよ?」
D:
「それとこれとは別かな」
E:
「ええーっ巻き込まれ損じゃん」
── 図書室の引き戸を開ける音
C:
「ん? 今……ガラガラって扉開ける音、聞こえませんでした?」
E:
「え……え? 入ってきた?」
D:
「まさか……」
B:
「うーん番号認証ドアか。共通解除コードは……なんだったかな。まぁいい」
── 司書室のドアを、弾丸が破壊してゆく。
E:
「うわわわわ! 来てる来てる!」
D:
「なんでこんなに最短で居場所がバレて……」
C:
「降下しましょう」
D:
「C先生、Eを頼みます。二人だけでも走って先に逃げてくれ」
C:
「何を……そんなことできません!」
D:
「俺は残って、追われないように救助袋を使えなくします。走れねーし」
C:
「なら俺も残ります」
D:
「ッ……」
── 銃尾が、弱ったドアを突き破る。
D:(小声)
「E、隠れてろ」
E:
「先生……」
B:
「フゥ。ようやく相対できましたなぁお二方……ようやっと、悲願を達成出来る」
C:
「B理事長、こんな物騒なこと……犯罪ですよ」
B:
「ふっふっふ、私はねぇ……人の好意を独占し、それをあたかも当然のように振る舞い、
無下にするような傲慢な人間が、心底嫌いなのだよ」
D:
「そんなこと、思ってないですし! 第一、なんなんですかその銃!」
B:
「趣味さ。銃身も弾もお手製だ。保有免許もある。
そして、そういう輩を消し去れるなら、何だってする。
利用できるものは何でも、誰でも利用する……
ヤンデレを拗らせた教員を巻き込んで、勝率を上げる」
D:
「A先生……」
B:
「弾はちゃんとチョコだよ? 細工はしてあるが、紛れもなくね……
二大モテメンにふさわしい弾だろう? ほら大量連射チョコだ、お望み通りくれてやる!
チョコにトラウマを刻みつけてやろう!」
D:
「チッ! なんで俺らを採用したんだよっ!」
C:
「Eさん、消化器!」
E:
「はいっ! んらぁぁぁあ!」
B:
「! 生徒? クッ、煙幕と攻撃を同時に……ゴホッゴホッ」
D:
「E、いいぞ貸して。オラァァァッ」
B:
「グゥッッフ」
C:
「消化器を鈍器として……! D先生、なかなか……やりますね」
D:
「正当防衛の範囲ですよ」
E:
「よーし逃げましょっ、一番、E選手滑りまーす! あああ怖っこわい!」
── 救助袋を降下する三人。
A:
「んふっ、ここから降りてくると思いました」
── 銃声
E:
「ヒィッ!」
C:
「地上で待ち伏せられていたか! 二人とも下がって」
D:
「っ! C先生!? 突っ込んだら危ない!」
A:
「C先生……っ!」
E:
「うおっ、す、すごいスライディング! からの」
D:
「銃をカチ上げて拾った! 速い!」
E:
「そのまま壁ドン!?」
D:
「いや、アレは銃ドンだ! これが、モテメンのチカラ……!」
C:
「──A先生。なぜ、こんなことを」
A:
「──あなたが欲しいからです、C先生」
C:
「なら、なぜ堂々と来ないんです」
A:
「……心の奥底では……手に入ると、思っていないから、でしょうか。
あなたの心に傷を遺したい。
引きずり込んで、噛みちぎるようにしながら、あなたの存在を味わいたい……」
E:
「いや、とんでもねぇサイコパスじゃん……A先生嘘でしょ」
C:
「──俺は。あなたのことをずっと見てましたよ。
こんな手段をとられて後手に回るとは思いませんでしたが……率直に言えば、好きです」
A:
「……? 誰が? 誰を?」
C:
「俺が、あなたを」
── 短い間
A:
「本当に? その場しのぎの言い逃れでは、なく?」
C:
「ええ」
A:
「信じ……られません」
C:
「なら改めて言おう。俺もあなたが、欲しかった。ずっと。
焼けるような想いを持て余していた」
A:
「……」
── 間
A:
「まさかこんなことをして、受け入れられるとは……思いませんでした」
B:
「A先生、何をしている……さっさと討ち取りなさい」
E:
「うわっ、理事長生きてた」
D:
「あの負傷で降りて来たのか、しぶといな」
B:
「君はそれぐらいの拘束、抜けられるだろう。討ち取りなさい」
A:
「……理事長……申し訳ありません。できません……
本当は! そりゃあ健全に生きて、幸せを享受したいに、決まっています!」
── 短い間
B:
「ふ……フフフ、フハハハハハハハ……
よもやよもやだよ……君が裏切るとはね。買い被っていたようだ。
よろしい……リア充となった以上、君も討伐対象だ。A先生」
A:
「……昨日の友は今日の敵、ですね……? 構いませんわ。
私は勝って、未来を掴み取ってみせますB理事長……」
C:
「A先生! あんな弾丸を食らったら……」
A:
「手刀で捌いて、肘へ受け流せば……大丈夫です」
D:
「それアウト! アウトなやつだよ色々と!」
B:
「その意気や良し! バレンタインなどっ! リア充など!
目の前から消え去れえええ」
A:
「奥義ッ! ジャンピング・デスローーール!」
C:
「やめろーっ!」
D:(かぶせて)
「C先生ッ、巻き込まれ……!」
E:(さらにかぶせて)
「ダメです先生! 間に合わな……っ」
──間
D:
「──っえ? アレ?」
A:(Dの猫)
「にゃ~ん」
── 間
D:
「……なんだ。夢か」
E:
ゆ、夢オチなんてサイテー!
D:
「やっべ寝汗やっべ……シャワー浴びよ」
── 完w
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