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おまけ
王子様の呟き③
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あの子たちの父親こそが、北の辺境伯。
しかし彼は、亡くなった南の先代伯や現南の辺境伯とは酷く対照的な人物で、王都ではよく顔を知られた有名人でもあった。
国境付近では他国の民らと小競り合いが続き、常に厳戒態勢を敷いている南北の辺境伯家。
その片方の当主をしている男がふらふらと王都に出てきては、女遊びに興じている。
目立つなという方が無理だ。
あれは遊びというより、自分を囲い守ってくれる女性を本気で探しているようにしか見えなかったが、それを面白がった貴族たちからは様々な噂を囁かれていたものだ。
そんな彼が、わざわざ喪に服すこの期間にも王都へとやって来て、普段と変わらぬ様子を見せていたのだ。
さすがに王も思うところがあったのか、何度か彼を呼び出して事情を問うた。
だが彼は悪びれもせずに、むしろ胸を張って、娘二人が優秀だから何も問題ないのだといつも同じ言葉を王に返した。
別の意味では強い男だな、と感じたものだ。
かつて会ったときには、まだ幼かった姉妹。
姉妹の歳が離れているとはいっても、姉の方もまだこのとき十代半ばのはず。
その年若い子どもたちに北の辺境伯領を任せていると平然と言ってのける男。
自分は子どもたちを置いて領地を出て来ては、王都で楽しく遊んでいる父親。
喪に服す期間であるのに亡くなった南の先代辺境伯に敬意を示す素振りも見せない同位にある貴族。
一体誰がこんな男を国にとって重要な辺境伯などに任命したと言うのだ?
…………私の父だった。
しかし彼は、亡くなった南の先代伯や現南の辺境伯とは酷く対照的な人物で、王都ではよく顔を知られた有名人でもあった。
国境付近では他国の民らと小競り合いが続き、常に厳戒態勢を敷いている南北の辺境伯家。
その片方の当主をしている男がふらふらと王都に出てきては、女遊びに興じている。
目立つなという方が無理だ。
あれは遊びというより、自分を囲い守ってくれる女性を本気で探しているようにしか見えなかったが、それを面白がった貴族たちからは様々な噂を囁かれていたものだ。
そんな彼が、わざわざ喪に服すこの期間にも王都へとやって来て、普段と変わらぬ様子を見せていたのだ。
さすがに王も思うところがあったのか、何度か彼を呼び出して事情を問うた。
だが彼は悪びれもせずに、むしろ胸を張って、娘二人が優秀だから何も問題ないのだといつも同じ言葉を王に返した。
別の意味では強い男だな、と感じたものだ。
かつて会ったときには、まだ幼かった姉妹。
姉妹の歳が離れているとはいっても、姉の方もまだこのとき十代半ばのはず。
その年若い子どもたちに北の辺境伯領を任せていると平然と言ってのける男。
自分は子どもたちを置いて領地を出て来ては、王都で楽しく遊んでいる父親。
喪に服す期間であるのに亡くなった南の先代辺境伯に敬意を示す素振りも見せない同位にある貴族。
一体誰がこんな男を国にとって重要な辺境伯などに任命したと言うのだ?
…………私の父だった。
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