8 / 51
作戦はまだ初手だったのだよ
しおりを挟む
なんで信用出来るかって?
それは数え切れぬ勝利の結果があるからだ。
この戦法で数多の騎士が懐柔されているのだよ。
まずは落とす。私はその第一段階で躓いたわけだけれど。
落としてしまえばこっちのもの。
あとは自分で信じられる男にすればいい。
だがこの答えが令嬢らしくなさそうだということは分かっていた。
だからまだ私は黙っておく選択をする。
するとやはり文官王子は勝手に話し出した。
潤んだ瞳で見上げる効果の高さには驚かされるな。
「いやいや、よく考えてごらんよ」
なんだ?
この文官王子、心の内を読む能力でもあるのか?
いや、まさかな。
そうだ、顔に気持ちが出ていたのかもしれない。
令嬢の皮は三重くらいに被っておいた方が良さそうだ。
私は令嬢、貴族のご令嬢、淑女というやつ……。
「若くて可愛い女性に言い寄られ、簡単に落ちる男は確かに多いと聞くけれどね。だけど君くらいの可愛さのご令嬢がこの国にごまんといるとしたらどうかな?……これは方便だよ、マイク?」
ん?なんでそこでまた護衛騎士に話を振るんだ?
だが相変わらずの護衛騎士は、話を振られたところで黙って突っ立っているだけだった。
観察していたら、ばちっと目が合う。
が、やはり反応はない。
すぐに目も逸らされた。
しかし寝てはいないのに王子を無視とは度胸があるな。
面白い。
時間があるなら、あとでうちの訓練に誘って手合わせを願いたいところだが。
文官王子の護衛役をしていたら無理そうだな。
一人しかいなければ、護衛対象から片時も離れられないだろう。
うん、やっぱりおかしいな?
なんで護衛が一人なんだ?
さすがに交代しような?
うちの者で代わりをすると言ってやるか?
いや待て。
この男はなにか王都で悪いことをして、休みなしの勤務という罰を受けている可能性もある。
それで発言を許されないということもあるか?
事情が分からないからには、勝手なことをしない方が良さそうだ。
ここはまず姉と相談だな。
こちらに顔を戻した文官王子は、やはり反応されないことを気に掛けない性質らしい。
でも一度コホンと咳をしたから、実は気にしているのだろうか。
「これは一般論として聞いておくれ。とにかく王都には君のようなことをするご令嬢がいくらでもいるんだ。そこで君に問い掛けたい。君は王都で華やかに暮らしたいから、王子である私を落とそうとしたのかな?」
それは数え切れぬ勝利の結果があるからだ。
この戦法で数多の騎士が懐柔されているのだよ。
まずは落とす。私はその第一段階で躓いたわけだけれど。
落としてしまえばこっちのもの。
あとは自分で信じられる男にすればいい。
だがこの答えが令嬢らしくなさそうだということは分かっていた。
だからまだ私は黙っておく選択をする。
するとやはり文官王子は勝手に話し出した。
潤んだ瞳で見上げる効果の高さには驚かされるな。
「いやいや、よく考えてごらんよ」
なんだ?
この文官王子、心の内を読む能力でもあるのか?
いや、まさかな。
そうだ、顔に気持ちが出ていたのかもしれない。
令嬢の皮は三重くらいに被っておいた方が良さそうだ。
私は令嬢、貴族のご令嬢、淑女というやつ……。
「若くて可愛い女性に言い寄られ、簡単に落ちる男は確かに多いと聞くけれどね。だけど君くらいの可愛さのご令嬢がこの国にごまんといるとしたらどうかな?……これは方便だよ、マイク?」
ん?なんでそこでまた護衛騎士に話を振るんだ?
だが相変わらずの護衛騎士は、話を振られたところで黙って突っ立っているだけだった。
観察していたら、ばちっと目が合う。
が、やはり反応はない。
すぐに目も逸らされた。
しかし寝てはいないのに王子を無視とは度胸があるな。
面白い。
時間があるなら、あとでうちの訓練に誘って手合わせを願いたいところだが。
文官王子の護衛役をしていたら無理そうだな。
一人しかいなければ、護衛対象から片時も離れられないだろう。
うん、やっぱりおかしいな?
なんで護衛が一人なんだ?
さすがに交代しような?
うちの者で代わりをすると言ってやるか?
いや待て。
この男はなにか王都で悪いことをして、休みなしの勤務という罰を受けている可能性もある。
それで発言を許されないということもあるか?
事情が分からないからには、勝手なことをしない方が良さそうだ。
ここはまず姉と相談だな。
こちらに顔を戻した文官王子は、やはり反応されないことを気に掛けない性質らしい。
でも一度コホンと咳をしたから、実は気にしているのだろうか。
「これは一般論として聞いておくれ。とにかく王都には君のようなことをするご令嬢がいくらでもいるんだ。そこで君に問い掛けたい。君は王都で華やかに暮らしたいから、王子である私を落とそうとしたのかな?」
10
お気に入りに追加
284
あなたにおすすめの小説
【完結】愛していないと王子が言った
miniko
恋愛
王子の婚約者であるリリアナは、大好きな彼が「リリアナの事など愛していない」と言っているのを、偶然立ち聞きしてしまう。
「こんな気持ちになるならば、恋など知りたくはなかったのに・・・」
ショックを受けたリリアナは、王子と距離を置こうとするのだが、なかなか上手くいかず・・・。
※合わない場合はそっ閉じお願いします。
※感想欄、ネタバレ有りの振り分けをしていないので、本編未読の方は自己責任で閲覧お願いします。
お母様と婚姻したければどうぞご自由に!
haru.
恋愛
私の婚約者は何かある度に、君のお母様だったら...という。
「君のお母様だったらもっと優雅にカーテシーをきめられる。」
「君のお母様だったらもっと私を立てて会話をする事が出来る。」
「君のお母様だったらそんな引きつった笑顔はしない。...見苦しい。」
会う度に何度も何度も繰り返し言われる言葉。
それも家族や友人の前でさえも...
家族からは申し訳なさそうに憐れまれ、友人からは自分の婚約者の方がマシだと同情された。
「何故私の婚約者は君なのだろう。君のお母様だったらどれ程良かっただろうか!」
吐き捨てるように言われた言葉。
そして平気な振りをして我慢していた私の心が崩壊した。
そこまで言うのなら婚約止めてあげるわよ。
そんなにお母様が良かったらお母様を口説いて婚姻でもなんでも好きにしたら!
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
比べないでください
わらびもち
恋愛
「ビクトリアはこうだった」
「ビクトリアならそんなことは言わない」
前の婚約者、ビクトリア様と比べて私のことを否定する王太子殿下。
もう、うんざりです。
そんなにビクトリア様がいいなら私と婚約解消なさってください――――……
半月後に死ぬと告げられたので、今まで苦しんだ分残りの人生は幸せになります!
八代奏多
恋愛
侯爵令嬢のレティシアは恵まれていなかった。
両親には忌み子と言われ冷遇され、婚約者は浮気相手に夢中。
そしてトドメに、夢の中で「半月後に死ぬ」と余命宣告に等しい天啓を受けてしまう。
そんな状況でも、せめて最後くらいは幸せでいようと、レティシアは努力を辞めなかった。
すると不思議なことに、状況も運命も変わっていく。
そしてある時、冷徹と有名だけど優しい王子様に甘い言葉を囁かれるようになっていた。
それを知った両親が慌てて今までの扱いを謝るも、レティシアは許す気がなくて……。
恵まれない令嬢が運命を変え、幸せになるお話。
※「小説家になろう」「カクヨム」でも公開しております。
新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる