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令嬢はこの場を楽しむ
しおりを挟む驚かされることになりましたわ。
彼女たちは理解していただけないだけでなく、止まりませんの。
「侯爵様にはご相談されておりまして?」
「これだけ噂が広がっておりますもの。早い方がよろしいですわ」
常時お家の名を背負われているという意識をお持ちではないのかしらね。
とても凄いと思うわ。
私がうふふと笑いましたら、「リリーシア様はお優し過ぎます!」と力強く言われてしまいましたの。
今のはお返事をするに値しない、という微笑みでしたのよ?
「いくら婚約者様が公爵令息様であっても、不貞をすればあちらが悪いのですわ。リリーシア様はもっと強く出られてよろしいのです!」
まぁまぁ、そのような発言をしてよろしいのかしら?
「そうですわ!リリーシア様には何の落ち度もございませんもの」
「次の方を考えますにも、早いほどよろしいと思いますわよ?」
沢山あるテラスの他の席にも、令嬢たちが座っておりました。
このような場所で、彼女たちはわたくしの婚約者が不貞したことを断言したのです。
そのうえわたくしの次のお相手まで気にしてくださったのよ?
「リリーシア様おひとりで抱えていてはなりませんわ。侯爵様にも動いていただきましょう?」
「いくら向こうが公爵家でも、あちらに瑕疵があれば問題なく婚約破棄は出来ましてよ?」
開いた口が塞がらないとはこのことを言うのね。
もちろん淑女として口を開けて呆けるなんてことはいたしませんわ。
ただやっと言葉の意味を理解出来て嬉しいの。
ふふふ。
この子たちには沢山のお礼を伝えなければならないようね。
本当に凄い子たちだわ。
けれども沢山のお礼を伝える機会は、もう来ないと思うから。
少ない言葉に最大の気持ちを込めますので、ご理解いただきたくてよ。
「あなたたちのお言葉は確かに受け止めましたわ。今日この場でこのようにお気遣いいただいたこと、お礼を申し上げますわね。父にもよく伝えておきますわ」
カシャンと音が響きました。
近くの席のご令嬢がカトラリーを落としたようよ。
慌てて謝っておりましたけれど、こちらに聞き耳を立てていたと思われてしまうタイミングでしたわね。
安心してちょうだい。
目が合った令嬢には、何もなかったことにする笑みを見せておいたわ。
うふふ。彼女たちにはきちんと伝わっているようね。
けれどもどうしてなのかしら?
目のまえの四人の令嬢たちには、何ひとつ伝わりませんの。
「お役に立てて良かったですわ」
「今後も是非ご相談くださいませね」
「でもねぇ。まさかあの公爵令息様まで引っ掛かるとは思いませんでしたわよ」
「見境なく殿方に媚びを売っておりましたけれど。引っ掛かるのはせいぜい田舎から出てきた下級貴族の子息だけだと思っておりましたのにね」
「恋は盲目と言いますもの。恋をしてしまったのでしょう。あぁ、リリーシア様。申し訳ございません」
悲しそうに眉を下げながら、その瞳は生き生きと輝いておりました。
本当に面白い方々ですこと。
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