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令嬢は真相を知る
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次の学園の休日は、お友だちとは過ごせませんでしたの。
「リリー、本当に会いたかった。君に会えない時間に気が狂いそうだったよ」
カーティス様とお約束していたからですわ。
こうして王都の我が家に足を運んでくださいますのは久しぶりね。
ふふふ。
久しぶりだけど、お変わりありませんわね。
カーティス様はいつも大袈裟なの。
「わたくしも会えてうれしいですわ、カース様。それからお務めお疲れさまでした」
わたくしたちね、二人のときは愛称で呼び合っているわ。
「あぁ、聞いたんだね」
「えぇ、大変なお勤めをされていたとか。でもまずはお座りになって」
先日もお友だちと楽しんだお庭に招待いたしましたわ。
今日も侍女が淹れてくれた紅茶は美味しいし、お庭には綺麗なお花が沢山咲いていて最高ですわね。
「本当は最初からリリーに話しておきたかったんだけれど。どこかの誰かがどうしても秘匿にせよと命じてくれるものだから……すまなかったね」
「問題ありませんわ。無事にお勤めを終えられて嬉しく思いますのよ」
カース様は、どこかの誰かの命であの男爵家の調査を行っていたそう。
わたくし、その方がどなたか存知ておりますけれどね?
カース様があえて口にしないのですから、わたくしもここであえては言いませんわ。
どうして調査をカース様が?
それはね。
学園にいると、他家の子女との接触が容易になるからなの。
今回は上からの命があってのことだけれど。
当主が子女を使い、普段は交流のない家を探るようなことはままあるものだわ。
だからそう特別なことでもないのよ。
次期公爵という立場にあるカース様なら、学園の生徒のほぼ全員にこちらから話し掛けることが可能でしょう?
だから今回のお役目に抜擢されたのですわ。
それより上位の方々ですと、色々と、ね?分かるでしょう?
そうそう。そういう意味でも不思議に思っていたことがあるわ。
あの彼女たちのことよ。
こういったこともあるから発言には気を付けるようにと、家で教わって来なかったのかしらね?
ご当主さまはとてもおおらかな方なの?
うふふ。気になるわ。気になるけれど。
もうこれは終わったこと。
カース様たちが調査した結果ね。
男爵家が良くない茶葉を王都に流していたことが判明したのですって。
事情を知らずに学園で男爵令嬢と懇意になった令息令嬢たちは、そのお茶に依存して、男爵家に対して色々と便宜を図るようなこともあったそうよ。
それも男爵令嬢側が脅迫したのではなく、なんでも言うことを聞いてやるからお茶を寄越せというような振舞いで、懇意にした令息令嬢たちから男爵令嬢を脅していた様子だったと聞いたわ。
わたくし、驚きましたし、がっかりもしましたの。
だってね。
恋は盲目ではなかったのですもの。
彼女たちが話してくれた令息たちの奇行。
あれは全部『お茶に盲目』だったのだわ!
えぇ、もうがっかりですけれど。
それよりも恐ろしくて。
調査とはいえ、そのようなお茶を持つ令嬢に近付くなんて。
カース様は大丈夫だったのかしら?
「私は一口も飲んでいないよ。だから安心してね、リリー」
ほっとしましたわ。
でも残念なところもあるの。
違うわよ?
カース様がそのお茶を飲んでいたら良かったということではないわ。
そんな恐ろしいこと、わたくし考えなくてよ。
そうではなくてね。
恋は盲目を教えてくださる?とお願い出来なくなったことが残念なの。
だってただの『調査』だったのですもの。
「やっと解放されたからね。これからはリリーと過ごせると思うと嬉しいよ」
わたくしカース様を前にして残念だなんて、なんて酷いことを考えていたのかしら。
慌てて考えを消し去って、微笑みます。
「わたくしも嬉しいですわ」
これは本心でしてよ?
カース様はそれは嬉しそうに笑いましたの。
だからわたくしも、より深く微笑みましたわ。
「リリー、本当に会いたかった。君に会えない時間に気が狂いそうだったよ」
カーティス様とお約束していたからですわ。
こうして王都の我が家に足を運んでくださいますのは久しぶりね。
ふふふ。
久しぶりだけど、お変わりありませんわね。
カーティス様はいつも大袈裟なの。
「わたくしも会えてうれしいですわ、カース様。それからお務めお疲れさまでした」
わたくしたちね、二人のときは愛称で呼び合っているわ。
「あぁ、聞いたんだね」
「えぇ、大変なお勤めをされていたとか。でもまずはお座りになって」
先日もお友だちと楽しんだお庭に招待いたしましたわ。
今日も侍女が淹れてくれた紅茶は美味しいし、お庭には綺麗なお花が沢山咲いていて最高ですわね。
「本当は最初からリリーに話しておきたかったんだけれど。どこかの誰かがどうしても秘匿にせよと命じてくれるものだから……すまなかったね」
「問題ありませんわ。無事にお勤めを終えられて嬉しく思いますのよ」
カース様は、どこかの誰かの命であの男爵家の調査を行っていたそう。
わたくし、その方がどなたか存知ておりますけれどね?
カース様があえて口にしないのですから、わたくしもここであえては言いませんわ。
どうして調査をカース様が?
それはね。
学園にいると、他家の子女との接触が容易になるからなの。
今回は上からの命があってのことだけれど。
当主が子女を使い、普段は交流のない家を探るようなことはままあるものだわ。
だからそう特別なことでもないのよ。
次期公爵という立場にあるカース様なら、学園の生徒のほぼ全員にこちらから話し掛けることが可能でしょう?
だから今回のお役目に抜擢されたのですわ。
それより上位の方々ですと、色々と、ね?分かるでしょう?
そうそう。そういう意味でも不思議に思っていたことがあるわ。
あの彼女たちのことよ。
こういったこともあるから発言には気を付けるようにと、家で教わって来なかったのかしらね?
ご当主さまはとてもおおらかな方なの?
うふふ。気になるわ。気になるけれど。
もうこれは終わったこと。
カース様たちが調査した結果ね。
男爵家が良くない茶葉を王都に流していたことが判明したのですって。
事情を知らずに学園で男爵令嬢と懇意になった令息令嬢たちは、そのお茶に依存して、男爵家に対して色々と便宜を図るようなこともあったそうよ。
それも男爵令嬢側が脅迫したのではなく、なんでも言うことを聞いてやるからお茶を寄越せというような振舞いで、懇意にした令息令嬢たちから男爵令嬢を脅していた様子だったと聞いたわ。
わたくし、驚きましたし、がっかりもしましたの。
だってね。
恋は盲目ではなかったのですもの。
彼女たちが話してくれた令息たちの奇行。
あれは全部『お茶に盲目』だったのだわ!
えぇ、もうがっかりですけれど。
それよりも恐ろしくて。
調査とはいえ、そのようなお茶を持つ令嬢に近付くなんて。
カース様は大丈夫だったのかしら?
「私は一口も飲んでいないよ。だから安心してね、リリー」
ほっとしましたわ。
でも残念なところもあるの。
違うわよ?
カース様がそのお茶を飲んでいたら良かったということではないわ。
そんな恐ろしいこと、わたくし考えなくてよ。
そうではなくてね。
恋は盲目を教えてくださる?とお願い出来なくなったことが残念なの。
だってただの『調査』だったのですもの。
「やっと解放されたからね。これからはリリーと過ごせると思うと嬉しいよ」
わたくしカース様を前にして残念だなんて、なんて酷いことを考えていたのかしら。
慌てて考えを消し去って、微笑みます。
「わたくしも嬉しいですわ」
これは本心でしてよ?
カース様はそれは嬉しそうに笑いましたの。
だからわたくしも、より深く微笑みましたわ。
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