6 / 21
5.泣き虫令嬢は己を知る
しおりを挟む
「シェリーは、迷い子なのかもしれないね」
泣き腫らした目を氷で冷やしながら、私は父に問い直します。
「迷い子?迷子のことですか?」
すると背中を撫でてくれていた兄が、父に代わり説明をしてくれました。
いつも変わらぬ優しい兄の声を聴くと、とても落ち着きます。
「人は皆、幾重もの生を繰り返している、という話は聞いたことがあるね?」
それはもちろん。
この世界では常識となっている考え方ですから。
この世界では──。
私は何を思い出しているか、改めて実感させられました。
そして父が言いたいことも分かったのです。
「通常は赤ん坊のうちに前の記憶が消えてしまうと考えられているんだ」
え?それでは生まれたときには皆が以前の生の記憶を保有しているのでしょうか?
「そうだと言われているけれど、確認のしようがないね。何せ忘れてしまうのだから。そして赤ん坊に聞いたって、彼らは言葉を知らない」
私の疑問に答えてくれたのは父です。
そしてまた兄が説明をしてくれます。
「新しい世界の言葉を覚え、新しい世界に馴染んでいく頃には、全部忘れてしまうように決まっていると言われているんだよ」
私はそれに失敗したということでしょうか?
「失敗ではないよ。そうですよね、父上?」
「あぁ、稀にシェリーのように一部分あるいはすべてを覚えている者が存在しているんだ。彼らは皆、神様からギフトを与えられた者として、周りの人たちからも祝福されているんだよ。だからシェリー、君は失敗したんじゃない」
「ギフト……」
「うん、だけどギフトを得た人は、かつてと今が内に同居してしまうだろう?それで今という生に馴染めずに苦労することが多いことも事実で、それで時を迷う人という意味で、迷い子と呼ぶ人たちが現われたんだ」
時の迷い子。
それはとてもしっくりくる言葉でした。
今まで漠然と感じてきた不安も、時を迷っていた結果だと思えば、そう怖いものではなくなります。
そしてお父さまはあの物語に対する記憶について、素晴らしい予測を立ててくださいました。
泣き腫らした目を氷で冷やしながら、私は父に問い直します。
「迷い子?迷子のことですか?」
すると背中を撫でてくれていた兄が、父に代わり説明をしてくれました。
いつも変わらぬ優しい兄の声を聴くと、とても落ち着きます。
「人は皆、幾重もの生を繰り返している、という話は聞いたことがあるね?」
それはもちろん。
この世界では常識となっている考え方ですから。
この世界では──。
私は何を思い出しているか、改めて実感させられました。
そして父が言いたいことも分かったのです。
「通常は赤ん坊のうちに前の記憶が消えてしまうと考えられているんだ」
え?それでは生まれたときには皆が以前の生の記憶を保有しているのでしょうか?
「そうだと言われているけれど、確認のしようがないね。何せ忘れてしまうのだから。そして赤ん坊に聞いたって、彼らは言葉を知らない」
私の疑問に答えてくれたのは父です。
そしてまた兄が説明をしてくれます。
「新しい世界の言葉を覚え、新しい世界に馴染んでいく頃には、全部忘れてしまうように決まっていると言われているんだよ」
私はそれに失敗したということでしょうか?
「失敗ではないよ。そうですよね、父上?」
「あぁ、稀にシェリーのように一部分あるいはすべてを覚えている者が存在しているんだ。彼らは皆、神様からギフトを与えられた者として、周りの人たちからも祝福されているんだよ。だからシェリー、君は失敗したんじゃない」
「ギフト……」
「うん、だけどギフトを得た人は、かつてと今が内に同居してしまうだろう?それで今という生に馴染めずに苦労することが多いことも事実で、それで時を迷う人という意味で、迷い子と呼ぶ人たちが現われたんだ」
時の迷い子。
それはとてもしっくりくる言葉でした。
今まで漠然と感じてきた不安も、時を迷っていた結果だと思えば、そう怖いものではなくなります。
そしてお父さまはあの物語に対する記憶について、素晴らしい予測を立ててくださいました。
18
お気に入りに追加
208
あなたにおすすめの小説
第一王子は私(醜女姫)と婚姻解消したいらしい
麻竹
恋愛
第一王子は病に倒れた父王の命令で、隣国の第一王女と結婚させられることになっていた。
しかし第一王子には、幼馴染で将来を誓い合った恋人である侯爵令嬢がいた。
しかし父親である国王は、王子に「侯爵令嬢と、どうしても結婚したければ側妃にしろ」と突っぱねられてしまう。
第一王子は渋々この婚姻を承諾するのだが……しかし隣国から来た王女は、そんな王子の決断を後悔させるほどの人物だった。
そのハッピーエンドに物申します!
あや乃
恋愛
社畜OLだった私は過労死後、ガチ恋相手のいる乙女ゲームに推しキャラ、悪役令嬢として異世界転生した。
でも何だか様子が変……何と私が前世を思い出したのは大好きな第一王子が断罪されるざまあの真っ最中!
そんなことはさせない! ここから私がざまあをひっくり返して見せる!
と、転生ほやほやの悪役令嬢が奮闘する(でも裏では王子も相当頑張っていた)お話。
※「小説家になろう」さまにも掲載中
初投稿作品です。よろしくお願いします!
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
【完結】やり直しですか? 王子はいらないんで爆走します。忙しすぎて辛い(泣)
との
恋愛
目覚めたら7歳に戻ってる。
今度こそ幸せになるぞ! と、生活改善してて気付きました。
ヤバいです。肝心な事を忘れて、
「林檎一切れゲットー」
なんて喜んでたなんて。
本気で頑張ります。ぐっ、負けないもん
ぶっ飛んだ行動力で突っ走る主人公。
「わしはメイドじゃねえですが」
「そうね、メイドには見えないわね」
ふふっと笑ったロクサーナは上機嫌で、庭師の心配などどこ吹く風。
ーーーーーー
タイトル改変しました。
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
32話、完結迄予約投稿済みです。
R15は念の為・・
悪役令嬢の取り巻き令嬢(モブ)だけど実は影で暗躍してたなんて意外でしょ?
無味無臭(不定期更新)
恋愛
無能な悪役令嬢に変わってシナリオ通り進めていたがある日悪役令嬢にハブられたルル。
「いいんですか?その態度」
光の王太子殿下は愛したい
葵川真衣
恋愛
王太子アドレーには、婚約者がいる。公爵令嬢のクリスティンだ。
わがままな婚約者に、アドレーは元々関心をもっていなかった。
だが、彼女はあるときを境に変わる。
アドレーはそんなクリスティンに惹かれていくのだった。しかし彼女は変わりはじめたときから、よそよそしい。
どうやら、他の少女にアドレーが惹かれると思い込んでいるようである。
目移りなどしないのに。
果たしてアドレーは、乙女ゲームの悪役令嬢に転生している婚約者を、振り向かせることができるのか……!?
ラブラブを望む王太子と、未来を恐れる悪役令嬢の攻防のラブ(?)コメディ。
☆完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。
強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します
天宮有
恋愛
私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。
その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。
シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。
その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。
それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。
私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる