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気付けなかったお気持ち

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 私が病気になるのは困ります。
 それではスペアのお役目を務められなくなるからです。

 スペアでなくなった私は、お城に足を運ぶこともなくなるでしょう。
 私に与えられたお部屋も別の方のもの。

 もう彼を遠くから見ることさえ叶わない。
 彼のお役に立つことも出来ない。

 気が付いたら、私の指先が震えておりました。
 私はこっそりと手を握り締めましたが、どうやらヴァイオレット様には気付かれなかったようで安堵します。

「あなたの本音を聞かせて欲しいから、先ほどの謝罪のお話について詳しく話すわ。実はね、私たちは以前からよく言っていたのよ。このままで良いのかしらって」

 ヴァイオレット様のお言葉は止まりません。

「向いている人間が王位を継承すべきではないか。彼はね、昔から一貫してそう言ってきたわ。長子絶対主義は確かに争いを招かないけれど、それは本当に国のため民のためとなっているのだろうかってね。そう言っていつも苦しそうに笑っていたのよ」

 私の知る元第一王子のお姿からは想像出来ないお話でした。
 震えは収まりませんが、私は必至に取り繕って笑みを浮かべヴァイオレット様のお言葉に耳を傾けます。

「彼はローレンス殿下の方が王に向いているとはじめから考えていたわ。それをね、私は否定して彼を励まそうともせずに、同意していたの。ふふ、王太子の婚約者としては失格でしょう?」

 自嘲するように笑ったヴァイオレット様のお顔も、私が知らないものでした。


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