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2.それは王女殿下の命により始まりました
しおりを挟む「我が名において、バウゼン公爵子息とギルバリー侯爵令嬢の婚約破棄をここに命じます」
それは王女殿下が開催された園遊会でのことでした。
次世代の貴族たちが集まって交流を深めましょう、という意図で開催されておりましたから、その場には同年代の若い貴族しかおりません。
ほとんどは、まだ爵位を得ておらず、未婚の貴族でした。
これが良くなかったのでしょうね。
会場から一斉に集まる視線に……私が泣くとでも思っていたのでしょうか。
にやにやと嫌味ったらしい顔をした、いえ、王族らしく優雅に微笑まれた王女殿下が、私の様子に狼狽えたことが分かります。
そして声を荒げ始めたのです。
淑女としてあるまじき行いに周囲の貴族たちが一様に息を呑んだことも分かりました。
相手は王女殿下ですから、非難めいたことは出来ません。
「聞けば、あなた。お金を積んでバウゼン公爵家を脅し、レイノルドとの婚約にあり付けたそうじゃないの。人の気持ちをお金で買うような真似をして、恥を知りなさいな。聞いたときには、そんな卑しい女が本当に存在するのかと耳を疑ったのよ」
お金を積んで脅した?
脅されたのはむしろ、我がギルバリー侯爵家の方なのですが?
誰から何を聞いたら、このように事実を違え受け取ってしまうのかしら。
それが王女殿下であるというのは特に解せないことです。
「な、何を笑っているのよ!笑いごとではありませんわよ!」
笑っているつもりはありませんでした。
もしや常に浮かべております淑女の微笑について指摘されているのでしょうか。
これを辞めろというのは、あまりにも酷い話ではありませんか?
というわけで、私は変わらず微笑みを続けます。
これがこの国の貴族の習わしなのですから、仕方ありません。
すると王女殿下は、急に横を向き、別の方へと話を振ったのです。
「レイノルド!あなたもこんな女の顔を見るのは、これが最後になるでしょう。言いたいことを言っておきなさい。この場であなたがどんな発言をしても、私が許すわ!」
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