【R18】黒のエリアマスター

shinko

文字の大きさ
上 下
86 / 104
5章 迷宮の謎

1話 戦後処理

しおりを挟む
「のわああああ! あぁ? へ、陛下!?」

「ニュエロ男爵、久しぶりだの」

 シルバンデルク王国の玉座の間。

 大勢の貴族や騎士団。宮廷魔術師団など早々たるメンバーが集まる中で突如【絶対領域】から開放されたニュエロ男爵が叫び声を上げて跪いた。

 冷徹な表情をした陛下から怒りのオーラがほとばしっている。

 雷帝と呼ばれているニュエロ男爵でも流石にうろたえているようで、顔から冷や汗が溢れている。

 その様子を見て陛下が少しだけ表情を和らげた。

「ニュエロ男爵、こたびの出兵一体どういった意図があってのことかの?」

「は、ははぁ、私はトレビア伯爵の命によりスターテルの町を攻略するために出兵いたしました」

 うなだれながらも正直に話し出す。

 トレビア伯爵の寄子(実質部下)であるニュエロ男爵は上司の命令には従うしかないからだ。

「ほう、ではなぜそのトレビア伯爵軍のもとにゴールデンブルグの軍がまじっていたのかは当然知っておろうの」

「そ、それは……」

 その後もニュエロ男爵は陛下の質問に素直に答え続けた。



 王都シルバーニュに忽然と現れた大軍勢を何とか撃退した後は、情報収集のために捕虜を解放しながら次々と尋問していった。

 その結果、やはり北方の雄、ウラル帝国が中心となってこのセントラルリーフ大陸を統一するための侵略戦争を起こしていたことが判明した。

 大陸の北西地域を統一したウラル帝国はさらに南を制圧するため、南西諸国にもスパイを放ちシルバンデルク王国を一気に落とそうとしていたのである。


 結果、帝国軍の奇襲を辛うじて退けたものの、敵対する戦力があまりに巨大なことが判明し、国王を含めシルバンデルク王国は大きなショックを隠しきれないでいた。

 セントラルリーフ大陸は一枚の葉っぱのような形をした大陸で中央を十字に刻むようにセントラル大谷が広がっている。

 その大谷を挟んで大陸は大きく北東、北西、南東、南西に四分割されるように分路されているのだ。

 そしてウラル帝国は北西区域、シルバンデルクは南西ブロックにある。

 南西ブロックには上からシルバンデルク王国、ゴールデンブルグ王国、ブロンドルク王国の三王国が建っている。

 この三王国は建国当初から同盟関係にあり、お互いに協力しながら仲良く発展してきた間柄。

 それが今回、本当に敵に回っているとすればまさに建国以来最大の危機である。


 両王国の戦力が攻めてきているのは事実として、それが国の総意なのか、はたまた一部の者の仕業なのか。そこをはっきりさせねばならない。

 また、ゴールデンブルグ王国、ブロンドルク王国だけではなく、他の諸外国にも急いで使者を出し、各国の状況を把握するため、王城はてんやわんやの喧騒に包まれていた。


「あー暇だなぁ」

 そんな内情がウソのように、王都シルバーニュ中央にあるケルビン・シルバー邸では平和な空気が漂っていた。

 なぜならそんな小難しい話はまったく分からない興味がないからだ。

 こないだまで食うや食わずのFランク冒険者初級者だった実力は本物だ知能は低い

 あれからさらに数日程経過し王都にある邸宅で療養と言う名の新婚性活・・を送っていたケルビンだが、さすがに食って寝てヤルだけの生活を続けていたところ、早々に飽きがきてしまったのである。

 いや、バリエーション妻 と 妾も多いのでH自体に飽きることなどないのだが、体も完全に回復したためそろそろ冒険者としての仕事をしようと思っていた。

 そんな時、久々に公式な来客が訪れた。

「ケルビン様。副騎士団長のタンドリー様がいらっしゃいました」

 家宰のノキアスが寝室・・に呼びに来る。


「おお、ケルビン殿。もうすっかり調子は戻ったようですね」

 と同時にタンドリーが笑顔で入ってきた。まったく遠慮のないやつだな。

 もし裸でエッチしてたらどうするつもりだったんだ。

「おう、タンドリー、よく来たな」

「ええ、急に来てしまってすいませんね。(Hの)最中だったら申し訳ないなと思ったのですが、興味があったのでお邪魔してみました……残念でしたね」


 悪びれずにニヤニヤしながらタンドリーが俺と嫁達を観察して、残念そうな顔をする。

 大丈夫。ちょうど風呂に入って落ち着いたところだ。


「さすがにずっとやりまくってる訳じゃないさ。ところで何か用か?」

「陛下から正式に要請がありましてね。ケルビン男爵・・に地下迷宮の調査をお願いしたく、参上いたしました。これが依頼書です」

 タンドリーが依頼書という名の命令書を取り出してみせた。

 今回の敵軍撃退の報奨として、ケルビンは男爵に奉じられていた。ただ、これも一代だけの法衣男爵(領地なし)なので肩書きと給料があがっただけなのだが。

「依頼ねぇ、どうするアリエール」

 俺はとなりに座っているハイエルフの顔をみた。

「まぁいいんじゃない? 前は探索中に青龍に戻されたけど、もともと最奥まで行くつもりだったしね。しばらく休養して体もなまってきたし、そろそろ動きたいと思ってたのよ」

 体を伸ばすようにほぐしながらアリエールは肯定する。どうやらやる気になったようだ。

「そっか、じゃあいっちょ行ってみるか」

「ありがとうございます、ケルビン殿。ではさっそく参りましょうか」

 嬉しそうにタンドリーが立ち上がりすぐにでも部屋を出ようとする。

「うんっ!? お前も行くのか?」

「ええ、もちろん! このAランク冒険者でもある副騎士団長のタンドリーがお供させていただきますよ?」

 当然でしょう、といった表情で自身満々に胸をはる。

「いらない!」
「いらないわ!」

「え、ええっ!? そんなぁ」

 俺達二人から即答で断られたタンドリーは、来たとき時とはうって変わって、さみしそうにトボトボとお城へ歩いて戻っていった。
  
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

可愛い男の子に異世界転生したおじさん、領主のイケメンご子息に溺愛される

八神紫音
BL
【9話以降、1日1話更新】  昔からモテなかったアラフォーの俺は、気付いたら異世界転生していた。  というか、スライムに激突されて前世の記憶が蘇り、異世界転生した元おじさんだと言うことを思い出した。  栗色のサラサラなマッシュヘアーにくりくりのエメラルドの瞳。めちゃくちゃ可愛い美少年に転生していた。  そんな『ディオン・ラグエル』としての第二の人生を楽しんでいた俺は、3つ上の幼馴染の青年に恋をしている。だけどそれは決して叶うことのない恋であり、片思いのまま終わらせるつもりだったのだが……。  ※R18の話には*がついています。  ※エールありがとうございます!

【短編】睨んでいませんし何も企んでいません。顔が怖いのは生まれつきです。

cyan
BL
男爵家の次男として産まれたテオドールの悩みは、父親譲りの強面の顔。 睨んでいないのに睨んでいると言われ、何もしていないのに怯えられる日々。 男で孕み腹のテオドールにお見合いの話はたくさん来るが、いつも相手に逃げられてしまう。 ある日、父がベルガー辺境伯との婚姻の話を持ってきた。見合いをすっ飛ばして会ったこともない人との結婚に不安を抱きながら、テオドールは辺境へと向かった。 そこでは、いきなり騎士に囲まれ、夫のフィリップ様を殺そうと企んでいると疑われて監視される日々が待っていた。 睨んでないのに、嫁いだだけで何も企んでいないのに…… いつその誤解は解けるのか。 3万字ほどの作品です。サクサクあげていきます。 ※男性妊娠の表現が出てくるので苦手な方はご注意ください

まさか、こんな事になるとは思ってもいなかった

あとさん♪
恋愛
 学園の卒業記念パーティでその断罪は行われた。  王孫殿下自ら婚約者を断罪し、婚約者である公爵令嬢は地下牢へ移されて——  だがその断罪は国王陛下にとって寝耳に水の出来事だった。彼は怒り、孫である王孫を改めて断罪する。関係者を集めた中で。  誰もが思った。『まさか、こんな事になるなんて』と。  この事件をきっかけに歴史は動いた。  無血革命が起こり、国名が変わった。  平和な時代になり、ひとりの女性が70年前の真実に近づく。 ※R15は保険。 ※設定はゆるんゆるん。 ※異世界のなんちゃってだとお心にお留め置き下さいませm(_ _)m ※本編はオマケ込みで全24話 ※番外編『フォーサイス公爵の走馬灯』(全5話) ※『ジョン、という人』(全1話) ※『乙女ゲーム“この恋をアナタと”の真実』(全2話) ※↑蛇足回2021,6,23加筆修正 ※外伝『真か偽か』(全1話) ※小説家になろうにも投稿しております。

異世界性生活!!~巻き込まれ召喚された勇者のスキルが変態すぎた~

秋津紅音
ファンタジー
長谷河知業(はせがわ ともなり)38歳、職業AV男優は勇者召喚に巻き込まれ異世界へ。転移とともに18歳へ若返り、名前もカルマへと変わっていた。しかし変態的なスキルの所為で辺境送りになったカルマ。異世界の男性は性欲が弱くちんぽも弱い。 己の経験と新たなスキルで性欲を持て余した異世界の女性たちを満足させろ!!カルマのエンジョイ異世界性生活が今始まる! 本番なしエロ回は☆(ちょっとだけ本番ありも含む) 本番ありエロ回は♡ をつけてます。

【R18】『エロステータス』が見えるようになった俺は、追放した勇者パーティーを全員寝取る

あむあむ
ファンタジー
勇者パーティーに所属するケイオスは、ある日リーダーであるアルフレドより理不尽な理由で追放命令を受ける。 敵のステータスを見ることができる『完全解明』のスキルは長期化した魔族との戦いにおいて既に無用の能力であるという……のは建前で、真意はパーティー内の他の男が邪魔になったというものだった。 更には完全にケイオスを追い出す為、罠に嵌められ濡れ衣を着せられた挙句、犯罪者として命を狙われるようになってしまうことに。 そんな逃亡生活を強いられた時に出会ったのが、人間と淫魔のハーフであるメメだった。 彼女と接触することによりスキルは進化し、敵の裏側である『エロステータス』が見えるようになったケイオスは、この力を使い自分を裏切った勇者パーティーを全員寝取り、アルフレドを絶望に沈めることを誓う。 露出癖の聖女、服従癖の魔女など、人が秘める性癖を擽り女を雌に堕とす。 ケイオスとメメ、二人の復讐の物語が始まった。 ※♡がついている話がエロシーンになります。

【R-18】自称極悪非道な魔王様による冒険物語 ~俺様は好きにヤるだけだ~

秋刀魚妹子
ファンタジー
太古の昔、神と魔神が人の住む地上で争っていた。 それは後に神魔大戦と呼ばれる程の激戦となり、使い捨ての兵や奴隷として消費されていた人間達の命運は風前の灯であった。 しかし魔神の配下である1人の魔族の王、魔王が人間達の味方をした。 その魔王は人間達を解放し、保護したのだ。 その魔王は神の英雄であり、魔王の天敵である勇者とも友の契りを交わす事に成功し、人間達が安全に暮らせる国を立ち上げた。 突如として実現した平和に人間達は喜び魔王を崇め、称えた。 勿論、そんな平和は長続きしない。 神と魔神がわずわらしい魔王を罠に嵌め、勇者と人間達に裏切らせ封印させたのだ。 その封印は永く、永くその魔王を苦しめその地に止めるだろう。 それから永い年月が経過し、遂に目覚めた。 神と魔神が滅ぼせず、罠に嵌め封印するしか出来なかった最強の魔王。 欲望と狭間の魔王 セムネイル 神魔大戦から数千年、人間や亜人達が争う地に彼の魔王が帰ってきた。 欲望のままに。 犯し、殺し、食う。 やりたい事にしか興味が無い、自分の意思を決して曲げない。 自称悪逆非道の魔王様による冒険物語が始まった。 ※本作品は著者による妄想から成り立っております。 読む方によっては、不快に想われる可能性がございます。 ※本作品には、性的描写が多々含まれます。 18歳未満の方はご注意下さい。 ※本作品は、著者の本業の状況により更新の遅延や更新中止の可能性があります。 以上の事を読まれた上で、それでも良いよと言って下さる方。 少しでも楽しんで下さると幸いです。

後悔はなんだった?

木嶋うめ香
恋愛
目が覚めたら私は、妙な懐かしさを感じる部屋にいた。 「お嬢様、目を覚まされたのですねっ!」 怠い体を起こそうとしたのに力が上手く入らない。 何とか顔を動かそうとした瞬間、大きな声が部屋に響いた。 お嬢様? 私がそう呼ばれていたのは、遥か昔の筈。 結婚前、スフィール侯爵令嬢と呼ばれていた頃だ。 私はスフィール侯爵の長女として生まれ、亡くなった兄の代わりに婿をとりスフィール侯爵夫人となった。 その筈なのにどうしてあなたは私をお嬢様と呼ぶの? 疑問に感じながら、声の主を見ればそれは記憶よりもだいぶ若い侍女だった。 主人公三歳から始まりますので、恋愛話になるまで少し時間があります。

カラスに襲われているトカゲを助けたらドラゴンだった。

克全
ファンタジー
爬虫類は嫌いだったが、カラスに襲われているのを見かけたら助けずにはいられなかった。

処理中です...