【R18】黒のエリアマスター

shinko

文字の大きさ
上 下
82 / 104
4章 凱旋と旅

25話 ドキッ、実は敵だらけのシルバンデルク

しおりを挟む
「ゴールデンブルグ王国の【領域の主】ヘクト・パスカルがいたとなるとこれは王国同士の戦争になりますね」

 ソファーに座り、落ち着いたタンドリーが深刻な顔になる。

「そう言えばそんな事をヘクトも言ってたな」

 そもそもゴールデンブルグって国があったのか、初めて聞いたな。

「ええ、隣国でシルバンデルクと同じくらいの国力を持つ王国です。同じく隣国のブロンドルク王国との間には三国同盟を結んでいたのですが、これを破棄したという事になると、とんでもない大事になるでしょう。一刻も早く陛下に知らせなくてはなりません」

 自分で話をしながらタンドリーがソワソワしだす。

「そうか、つまり敵はトレビア伯爵だけじゃなくて、ゴールデンブルグ王国と組んでたわけか」

「そう! そういう事でしょう、これはえらい事ですよ」

 狭い領域内で立ち上がりウロウロするタンドリー、気持ちは分かるが焦ってもしょうがないだろ。

 すると、となりにいるアリエールが細長い鉄の棒を取り出して見せる。

「それよりもタンドリー、あなたが撃たれて負傷した狙撃弾だけど、変なマークが付いてるのよ、これに見覚えはない?」

 タンドリーが狙撃弾を受け取って注意深く確認する。

「こっこれは!? このマークは狙撃手、ヒットバール男爵の家紋……まさか、シルバンデルク王国のギンカラー侯爵まで敵に回っている……のか」

 余りにショックがでかかったのか、顔色が真っ青になり座り込んだ。

「何かすごい事が起こってるみたいね」

 その様子にアリエールも心配する。

「……そう言えば娼館のお客さんから聞いた話なんだけど、帝国もバックについているって言うのも何か聞いた気もするわ、もちろんそれが本当かどうかはわからないけど……」

 ブルネタリアがボソっと言った。確かに娼館ならそんな話も出るかもしれない。

「帝国もですか!? これは、俺が考えているより深刻な状況かもしれません。最悪だ、それにしても帝国か……」

 さらにタンドリーが落ち込んでしまった。

 話は正直良く分からないが、このシルバンデルクがいろんな国から襲われていることは理解できた。

 その後色々話をして、どうやら一番のバックは帝国だと結論付けた。

 この周辺では帝国が一番大きく強い国らしい。

「ケルビン殿、申し訳ありませんがもはや猶予はないでしょう、一刻も早く王都へ帰りましょう」

 タンドリーが懇願する。

 どうせ俺達も王都へ行かなければならないのだ。

 早く行くべきだろう。

「よし、では戻るかタンドリー」

 ヘクトがいるといけないので慎重に地上に戻って飛び出した。

 タンドリーが鳥型になり、俺達を首に付けて飛び上がる。

 俺が中から薄い領域で幕を張りタンドリーを包んで保護をする。

 アリエールが気配探知をしながら慎重に進んで行く。

「トレビアの町にすごい軍勢がいたわ。多分そこから狙撃されたのね」

 やはりトリビア軍から襲われていたようだ。

 だが、狙撃手はギンカラー侯爵の配下だと言う。この国、完全に終わりそうだな。

 周りは全部敵だらけだ。

 まさかこんな事になっているとは騎士になるまで分からなかった。

 そう言えば俺も襲撃されたな。

「そうだ、タンドリー俺も王都で襲撃されてたわ」

『ええっ! そうなんですか』

 初めての話にタンドリーが驚いた。

「そうそう、確か騎士になった日ね、寝てたら深夜襲われたのよ」

 思い出したようにアリエールが詳しく話をした。

『そうでしたか、王都でもそんな状態ならさらに事態は深刻ですね』

 タンドリーが必死に飛び続け、アリエールがヒールで癒した。

 その甲斐もあってしばらくすると、王都のシルバーニュ城が見えてきた。

『えっ!? まっまさか』

 タンドリーが声をあげる。

 前方の城からは、一筋の煙が上がっていた。  
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

ビッチな姉の性処理な僕(R-18)

量産型774
恋愛
ビッチ姉の性処理をやらされてる僕の日々…のはずだった。 でも…

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

処理中です...