【R18】黒のエリアマスター

shinko

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第三章 王都シルバーニュ

25話 初めての指名依頼

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 扉がひらいた瞬間、見た事のある冒険者が入って来た。

「うぃーっす。俺達と組むSランク様ってのはどいつらだ? うんっお前ら……、お前らが青龍討伐した新人Sランクかー!? 」

「クローさん!?」

 王都入口で会った紺色の短髪、長身の黒マント姿のクローさんが入って来た。隣にもう一人赤い長髪のグラマーな女性も連れていた。そして感じる。彼女も《持ってる》人だった。

「やりやがったな、Bランクだって言ってた癖に、まさか先越されるとは思わなかったぜ、最強は嘘じゃなかったんだな。まあしょうがねえよろしくな」

 にこやかに入ってきた二人がドサっと横のソファーに座る。

「クローさん、ペアだったんだ」

「おうっAランクペア【鉄の爪アイアンクロー】だ。俺の相方、《聖女》のグレミアだ。回復、障壁、補助呪文、光魔法のスペシャリストだ、怒らすと俺より怖いぜ」

「グレミアよ、よろしく」

 黒いぴちっとした体に張り付くボンテージのような革の服を着た女性が挨拶する。全然聖女のイメージじゃない。美人だが少し田舎のお姉さんと言った感じだ。体のラインがハッキリわかるのでエロい感じがたまらない。胸元は大きく開いておれの目線がそこへ行く。

 メリシアがその様子を見てほっとしたような顔になる。 

「なんだ。お互い面識があったのね。話が早くて助かるわ。【一撃】さんは、エマールさんも入ってトリオだから5人になるわね。お互いに協力して何とか【進化の魔王】を倒して頂だい。あと、確認しておきたいんだけど、ケルビンさん」

「うん?」

「あなた何の能力を《持ってる》のかしら、【領域の主エリアマスター】なの? それとも【特殊系】、かしら、【スキル系】や【魔法系】、【身体系】には見えないけど……」

 メリシアが真剣な顔をした。


 この世界にあるチート能力には、色んな種類があり、チート神を掴む他にもそれを得る方法はある。まあ、方法はともかくとして、そのチートの種類は大きく5つに分けられている。

 まず、

 1.火魔法最強や氷魔法最強など大魔法が使える【魔法系】

 2.鉄を切る剣技だとか麻痺させる技とか毒付与する技などの【スキル系】

 3.身体強化や手が伸びる体が消えるなどの【身体系】

 4.それ以外の変わった現象を起こす【特殊系】

 5.そしてチート最強と言われる【領域の主エリアマスター】というのがあるそうだ。

 領域の主はその領域において絶大な力を持つもので、その領域内の重力を操る重力マスターや、温度を操る温度マスター。速度を操るスピードマスターなどがいるそうだ。

 その領域に入ってしまえばその力から逃げられない。よって数あるチートの中でも【領域の主】は最強と言われる能力らしい。

「へーそんな事になってたのか」

 メリシアの説明に納得する。

「じゃあ、やっぱりケルビンは最強じゃないの」

 アリエールが得意げに俺を見た。

「ということは、ケルビンさんは【領域の主エリアマスター】でいいのよね」

 確認するようにメリシアが言う。

 まあ隠してもしょうがないし、そもそもバレても問題ない。そう思っているとクローがこっちを見て、こう言った。

「だろうな。ずっと三人を囲うように黒い領域が見えてるぜ」

 グレミアもうんうんと頷く。どうやら《持ってる》者同士はその能力が見えるようだ。

「そう、不思議な障壁を使うと報告があがっていたのだけれど、任務の遂行に当たって必要な事なの、申し訳ないけれど何の能力か教えてもらえないかしら」

 メリシアが慎重にお願いしてきた。

「いいよ。俺の能力は【絶対領域】だ」

「絶対領域!? どういうこと? 温度や重力を操るんじゃなくて、絶対を操れるってこと?」

 皆がびっくりした。

「ああ、この領域内の中では全部俺の自由になるんだ。そう、絶対にな」
 
 ドヤ顔で言い切った。

「なんじゃそりゃ!? メチャクチャずりーじゃねーか!」

 クローが叫ぶ。

「そんな能力聞いたことないよ! なんでも自由ってなんだよそれ、そんなの神様の力じゃないか」

 グレミアも怒ったように声を荒げる。

 神の力その物だからな。

 まあ、気持ちはわからんでもない。

「そのとおり、でも俺の領域は本当は小さいんだ。今見えてるのは薄く伸ばしてペラペラにした表面なんだよ。本当の領域はこれ位しかない」

 俺は手でソフトボール大くらいの大きさを見せた。

「……そうか、そういう事か」

「そうなのね……」

 クローもメリシアも納得する。

「なるほど、他の【領域の主エリアマスター】に比べて範囲がべらぼうに狭いんだね。その分強力な願いが叶うって訳か、でもすごいじゃないか。薄くできるなら皆を守れるし、これは相当な戦力になるね」

 グレミアが目を輝かせて俺をみた。

 どうも田舎のヤンキーねーちゃんスケ番みたいに見えてしまう。

「だから、青龍からも二人を守れたのね。でもどうやって倒したの、攻撃力があるようには思えないけれど」

 メリシアが疑問に思ったようだ。

「この領域を伸ばして大槍にしたのさ、龍の口内に食べられたまま大槍で頭を貫いたんだ」

「そういう事だったのね。それで得心がいったわ。うん。攻防一体のすごい能力ね。これなら【進化の魔王】でもきっと倒せるわ」

 メリシアが納得し大喜びしたその時。

――ズガーン。

 地響きがして大きな音が鳴り響いた。

「何か来やがったな!」

「まさか、また青龍が!?」

 クローとグレミアがすぐに立ち上がり素早く部屋から飛び出して行った。

 俺達も遅れてついて行く。

 外からは大勢の悲鳴が聞こえた。
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