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第三章 王都シルバーニュ
6話 資金繰りと迷宮案内人
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【神の手】で装備を一新した俺達は、盗賊から巻き上げたお宝を換金する為あちこち走り回っている。
手持ちのお金が全く無くなった、いやそれどころか膨大な借金まであるからだ。アリエールの装備は俺よりはるかに高い。ものすごく高いのだ。
「なんでそんな一杯買うんだよ」
「いいじゃないの。私はか弱いのよ。それにこの服可愛いでしょ。ほらほら。ねっ。可愛いだけでやる気もでるしやりたくなるでしょ」
「そうだけどさぁ……」
こらこら君は何を言っているのかね。その通り、正解、大正解だよ。ただでさえムラムラするのにこの清楚系は反則だろう。今までは黒い魔法使いのような恰好だったが今度は違う。白いのだ。まるで聖女のような装いだ。
アリエールは、見せびらかすようにくるりと回って見せつける。
純白ベースに金色のラインや刺繍の入ったマントのような【聖女のローブ】
同じ色どりの上着とミニスカートの【聖女のスーツ】
白色に金の翼のアクセントのついた【金翼のブーツ】
指揮棒のような長さの白い【聖女の杖】
白く清楚な【聖女の籠手】
そして極めつけは【聖銀の髪飾り】と【聖銀の指輪】だ。
メチャメチャ可愛い。ああ、可愛いさ。皆が見てるさ。振り返って固まって見てるさ。俺も息子もカチカチのビンビンさ。
だけどさ、それ、いくらすると思ってんの。三百万だよ。三百万。俺の三倍するんですよハイエルフさん。
借金が二百五十万ドロルなんですよ。それもトイチ(十日で一割の利息)で。
「まあ、いいじゃないの。まだ馬とか武器とか防具もあったでしょ。それを売ればそれなりにはなるでしょ。そんで食料とか、いる物揃えてちゃっちゃと迷宮に行けばいいのよ」
簡単に言うアリエール。
「そのいる物が先だろ、装備はともかく髪飾りと指輪は後で良かったんじゃないのかって話だよ」
装飾品は贅沢だろ。確かに可愛くなったけど、それはまだ先でいいじゃないか。
「そうかも知れないけど欲しかったのよ……指輪。ケルビンは三個してるのに一つもくれないし……。妻の証として指輪が欲しかったの」
口をとがらせて少しふくれた顔をする。
ズキンッ。
胸に小さな痛みが走る。
そうだったのか……。妻の証か。
それならそうと言ってくれればいいじゃないか。
可愛くすねるアリエールのいじらしさに、俺の胸がワシャワシャとした不思議な感情に包まれる。
たまらず可愛い妖精を引き寄せ抱きしめた。
「アリエール。そうか。うん、そうだったのか。しょうがない。ごめんな、気が利かないで」
「ケルビン……」
アリエールがうつむいて舌を出していたのは、ケルビンには見えなかったようだ。
「うんっ? 指輪はそれでいいとして、髪飾りはどうなんだ」
「うっ……。セットよセット。揃いなのよ、うん。それにテレジアさんも言ってたじゃない。お金はすぐに返せるって、ほらほら。元気だしてよケルビン。そうだ。魔導士の杖とローブも売れるじゃない。私が着てたんだからプレミアがつくかもよ」
「付くか。中古だろ。いや、パンツもつければイケるかも……」
しかもその場で脱げば高く売れるんじゃないか。キタコレ。これぞ錬金術か!?
「それは……ちょっと……いや、かな」
おマタを押さえてもじもじするアリエール。うはっ。可愛いぜ。押し倒したい。今すぐに。
「冗談だよ。パンツは俺のだ。誰にも渡さん。どうせ換金出来ても全然たりないんだ。焦らず行くか」
「そうね。パンツは私のだけど……。そうと決まれば急ぐわよ」
その後何件か店を廻り、盗賊から巻き上げた物は全て売り払った。だが、全部で三十万ドロルにしかならなかった。もちろん全然足りてない。
「思った程じゃなかったわね……」
「まあ、大金なんだけどねぇ」
借金が多いから少なく感じるが三十万ドロルは大金だ。
簡単に稼げる額ではない。
迷宮探索の準備資金としては十分すぎるほどだろう。
必要な物を揃えた俺達は、宿で休み、早々に迷宮へ挑む準備をするのであった。
翌日。
「でかいな。これは……」
迷宮の入口にある入場門を見上げていた。都市の中央にある大迷宮は、五メートル以上の灰色の高い壁にぐるりと囲われている。正面には大きな鉄製の門《大門》があり、まれにある魔物の決壊襲撃に備えられている。
「うん。楽しみね。ワクワクして来たわ」
その大門に向かう長蛇の列に並び、しばらくして受付にたどり着く。冒険者も多いがその分受付も多くいる。
冒険者カードを見せると、緑色の長髪をした美人のギルド員、フラウさんがこちらを向いた。
「Bランクペア【一撃】さん。迷宮は初めてですね。手ぶらなようですけど。道案内の出来るサポーターは必要ですか」
「へーそんな人がいるんですか」
「ええ、ギルド所属のサポーターなら一日150ドロルでお手伝いする事が出来ます。戦闘は出来ませんが道案内と荷物持ちが可能ですよ」
と横を向いて指さした。視線の先には大きなリュックを背負う獣人が数人待機していた。
「へー。いいかもな。どう、アリエール」
「いいかもね。一日案内してもらうだけで助かるんじゃない。初めてだから色々聞けた方がいいし……。あのうさ耳の可愛い娘ならOKよ」
完全に見た目で選んだのだろう。十三歳位だろうか。ウサギ特有の耳とふわっとした丸い尻尾、白い肌に赤い瞳。肩に付くくらいの長さの茶色の髪をした可愛らしい獣人娘だ。
背も小さく140Cmくらいしかないが背負ってるリュックは特大だ。
荷物を持ってもらうつもりはないので、小さな娘でもいいかも知れない。道案内はいたほうが楽だろう。
「うん。じゃあ、あの子でお願いします」
「ラナナですね。ああ見えてベテランですよ。では150ドロルになります。よろしいでしょうか」
へえ、ベテランか、じゃあ結構経験があるのかな。
「ああ、それでいい」
了承して150ドロル払うと、フラウさんに呼ばれたラナナがやって来た。嬉しそうにニコリと笑って、礼儀正しくペコリとお辞儀する。
「ラナナです。よろしくお願いします」
やっぱり小さくて可愛いな。
「俺はケルビン」
「私はアリエールよ。Bランクだけど迷宮は初めてなの。色々教えてね」
「はい。ではさっそく参りましょうか。あっお荷物が何もないようですが」
「ああ、アイテムボックス持ちなんだ。荷物は自分で持つからいい。初めてだから案内とレクチャーしてくれれば助かるよ」
「はい。それは楽なお客様ですね。ではご案内します」
うさ耳のラナナを先頭に大迷宮へと足を踏み入れた。
手持ちのお金が全く無くなった、いやそれどころか膨大な借金まであるからだ。アリエールの装備は俺よりはるかに高い。ものすごく高いのだ。
「なんでそんな一杯買うんだよ」
「いいじゃないの。私はか弱いのよ。それにこの服可愛いでしょ。ほらほら。ねっ。可愛いだけでやる気もでるしやりたくなるでしょ」
「そうだけどさぁ……」
こらこら君は何を言っているのかね。その通り、正解、大正解だよ。ただでさえムラムラするのにこの清楚系は反則だろう。今までは黒い魔法使いのような恰好だったが今度は違う。白いのだ。まるで聖女のような装いだ。
アリエールは、見せびらかすようにくるりと回って見せつける。
純白ベースに金色のラインや刺繍の入ったマントのような【聖女のローブ】
同じ色どりの上着とミニスカートの【聖女のスーツ】
白色に金の翼のアクセントのついた【金翼のブーツ】
指揮棒のような長さの白い【聖女の杖】
白く清楚な【聖女の籠手】
そして極めつけは【聖銀の髪飾り】と【聖銀の指輪】だ。
メチャメチャ可愛い。ああ、可愛いさ。皆が見てるさ。振り返って固まって見てるさ。俺も息子もカチカチのビンビンさ。
だけどさ、それ、いくらすると思ってんの。三百万だよ。三百万。俺の三倍するんですよハイエルフさん。
借金が二百五十万ドロルなんですよ。それもトイチ(十日で一割の利息)で。
「まあ、いいじゃないの。まだ馬とか武器とか防具もあったでしょ。それを売ればそれなりにはなるでしょ。そんで食料とか、いる物揃えてちゃっちゃと迷宮に行けばいいのよ」
簡単に言うアリエール。
「そのいる物が先だろ、装備はともかく髪飾りと指輪は後で良かったんじゃないのかって話だよ」
装飾品は贅沢だろ。確かに可愛くなったけど、それはまだ先でいいじゃないか。
「そうかも知れないけど欲しかったのよ……指輪。ケルビンは三個してるのに一つもくれないし……。妻の証として指輪が欲しかったの」
口をとがらせて少しふくれた顔をする。
ズキンッ。
胸に小さな痛みが走る。
そうだったのか……。妻の証か。
それならそうと言ってくれればいいじゃないか。
可愛くすねるアリエールのいじらしさに、俺の胸がワシャワシャとした不思議な感情に包まれる。
たまらず可愛い妖精を引き寄せ抱きしめた。
「アリエール。そうか。うん、そうだったのか。しょうがない。ごめんな、気が利かないで」
「ケルビン……」
アリエールがうつむいて舌を出していたのは、ケルビンには見えなかったようだ。
「うんっ? 指輪はそれでいいとして、髪飾りはどうなんだ」
「うっ……。セットよセット。揃いなのよ、うん。それにテレジアさんも言ってたじゃない。お金はすぐに返せるって、ほらほら。元気だしてよケルビン。そうだ。魔導士の杖とローブも売れるじゃない。私が着てたんだからプレミアがつくかもよ」
「付くか。中古だろ。いや、パンツもつければイケるかも……」
しかもその場で脱げば高く売れるんじゃないか。キタコレ。これぞ錬金術か!?
「それは……ちょっと……いや、かな」
おマタを押さえてもじもじするアリエール。うはっ。可愛いぜ。押し倒したい。今すぐに。
「冗談だよ。パンツは俺のだ。誰にも渡さん。どうせ換金出来ても全然たりないんだ。焦らず行くか」
「そうね。パンツは私のだけど……。そうと決まれば急ぐわよ」
その後何件か店を廻り、盗賊から巻き上げた物は全て売り払った。だが、全部で三十万ドロルにしかならなかった。もちろん全然足りてない。
「思った程じゃなかったわね……」
「まあ、大金なんだけどねぇ」
借金が多いから少なく感じるが三十万ドロルは大金だ。
簡単に稼げる額ではない。
迷宮探索の準備資金としては十分すぎるほどだろう。
必要な物を揃えた俺達は、宿で休み、早々に迷宮へ挑む準備をするのであった。
翌日。
「でかいな。これは……」
迷宮の入口にある入場門を見上げていた。都市の中央にある大迷宮は、五メートル以上の灰色の高い壁にぐるりと囲われている。正面には大きな鉄製の門《大門》があり、まれにある魔物の決壊襲撃に備えられている。
「うん。楽しみね。ワクワクして来たわ」
その大門に向かう長蛇の列に並び、しばらくして受付にたどり着く。冒険者も多いがその分受付も多くいる。
冒険者カードを見せると、緑色の長髪をした美人のギルド員、フラウさんがこちらを向いた。
「Bランクペア【一撃】さん。迷宮は初めてですね。手ぶらなようですけど。道案内の出来るサポーターは必要ですか」
「へーそんな人がいるんですか」
「ええ、ギルド所属のサポーターなら一日150ドロルでお手伝いする事が出来ます。戦闘は出来ませんが道案内と荷物持ちが可能ですよ」
と横を向いて指さした。視線の先には大きなリュックを背負う獣人が数人待機していた。
「へー。いいかもな。どう、アリエール」
「いいかもね。一日案内してもらうだけで助かるんじゃない。初めてだから色々聞けた方がいいし……。あのうさ耳の可愛い娘ならOKよ」
完全に見た目で選んだのだろう。十三歳位だろうか。ウサギ特有の耳とふわっとした丸い尻尾、白い肌に赤い瞳。肩に付くくらいの長さの茶色の髪をした可愛らしい獣人娘だ。
背も小さく140Cmくらいしかないが背負ってるリュックは特大だ。
荷物を持ってもらうつもりはないので、小さな娘でもいいかも知れない。道案内はいたほうが楽だろう。
「うん。じゃあ、あの子でお願いします」
「ラナナですね。ああ見えてベテランですよ。では150ドロルになります。よろしいでしょうか」
へえ、ベテランか、じゃあ結構経験があるのかな。
「ああ、それでいい」
了承して150ドロル払うと、フラウさんに呼ばれたラナナがやって来た。嬉しそうにニコリと笑って、礼儀正しくペコリとお辞儀する。
「ラナナです。よろしくお願いします」
やっぱり小さくて可愛いな。
「俺はケルビン」
「私はアリエールよ。Bランクだけど迷宮は初めてなの。色々教えてね」
「はい。ではさっそく参りましょうか。あっお荷物が何もないようですが」
「ああ、アイテムボックス持ちなんだ。荷物は自分で持つからいい。初めてだから案内とレクチャーしてくれれば助かるよ」
「はい。それは楽なお客様ですね。ではご案内します」
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