【R18】黒のエリアマスター

shinko

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第二章 旅と娼館

5話 美女の依頼

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   キューサイの町で少しだけ買い物をした後、冒険者ギルドに立ち寄ってみた。町によって依頼内容が違うだろう。Dランク冒険者になったんだ。面白い依頼でもあるかもしれない。

 俺は一応、両腕にシールド籠手を装着し、革のベスト、軽革のブーツを装備している。【絶対領域】があるとはいえ、防御力はどうにもならない。武道家なのであまり動きを制限されるのは嫌だが、これなら動きも問題ない。

 普段からこの装備に慣れておこうと思った。クランの父の話が少し気になったのだ。冒険者は少しの油断が致命傷になることもある。装備は万全を期しておくべきだと思ったのだ。

 装備の感触を確かめながら、冒険者ギルドの建物に入る。そこそこの大きさの規模だった。朝早い事もあり、中には結構な冒険者達が集まっている。依頼表は朝更新される事が多いのだ。

 すでに飲んでいる冒険者も一杯いるが、こいつらは何のつもりだろう。わざわざ早く来て飲んでいるのだろうか。

 どうでもいいので掲示板を確認する。

 どれどれ、薬草採取に、ポーションなどの材料の納入、ゴリブリン討伐、ウルブリン討伐、素材の納入などなど。どこも似たり寄ったりか。

 竜退治の依頼などはなさそうだ。まあ、そうだろう。

 あとは護衛が結構あるな。護衛を募集する文字が結構並んでいる。護衛には必要ランクがかかれているがDランクなら全て受けれそうだ。ふふふ。いいな。Dランク。

 どうやら盗賊が多く出るのか町まで移動の護衛の依頼が多い。ふむ。これは変わってるな。精霊の泉まで護衛求む。要Dランク以上PT希望 一日1500ドロル×5日予定 7500ドロル。 アリエール。

 おお、なんか面白そうだ。依頼料も高い。良く分からんが名前がいい。爽やかで真っ白な美女のイメージがする。
 もしかしたら柔軟剤も入っているかもしれない。ん?なんだそれは。 まあいいだろう。

 美女の護衛か。うん。いいかもしれない。
 
 PT希望だが、ソロでもいいだろう。どうせチートで何とでもなるのだ。俺はチートマンだからな。

 俺は依頼書を持って受付に行った。

「これを受けようと思う」

 依頼書と冒険者カードを出す。

 俺と同じ銀髪で、肩位までのサラサラ髪をした美人が座っている。整った顔の綺麗系でスラリとした受付嬢ローラさんだ。

 依頼書を確認した時点で、にこやかだった顔色が急に変わった。

 依頼書と俺の顔を交互に見てため息をつく。完全に呆れた顔だ。

 何だ。PTじゃないから駄目なのか。

「ケルビンさん。あなたこれ、意味判って無いでしょ。ソロのDランクが行けるような場所じゃないのよ」

「そうなの? でもDランクって書いてあるじゃんか」

「そうなんですけどね。本来はCランクフルPT四人が付いて行けるかどうか位の難易度なんです。うちも仕事だから表示はしてあるけど、正直この金額で受ける人なんているとは思ってないんですよ」

 怒ったようにローラが言う。

 じゃあ。乗せるなよ。何やってんだよ冒険者ギルドは。

「へーそんなに難しいんだ」

「ええ。精霊の泉は魂の森の奥にあるんですが、魂の森にはスケルトンたちや、亡者のモンスターが沢山います。そこを抜けてその奥にある泉に到達するのにDランクPTではギリギリでしょう。まあ、そこまでは何とかなったとしても、泉の前には【守護者】がいます。Cランクボスモンスター 森の巨人がいるんですよ。多分無理でしょうね」

「じゃあ。それボスを倒したらCランクプロになれるのか」

「ははっまあ、そうですね。ソロで倒せれば間違いなくCランクプロにはなるでしょう。魔石もあるし、ドロップもあるでしょうからね。でもまず無理ですよ」

 完全に小馬鹿にしたように受付嬢が話す。綺麗な顔が台無しだ。22.3歳だろうか。いいね。生意気な女だが、ひーひー言わしてやろうか。まあ、俺のタイプじゃないが。 

 だがそろそろ俺もCランクに行っとくか。

「わかった。じゃあ。受ける。どうすればいいんだ。そのアリエールという美人はどこにいるんだ」

「本気ですか!? 冒険者が受けると言えばそうなるのですよ」

 ローラが銀色の目を見開く。心底呆れた顔だ。

「ああ、俺もDランク冒険者だ。舐めてもらっちゃこまる。いや。(息子ならいくらでも)舐めてもいいんだけど」

「ふふふ。そうですね。ええ。わかりました。ではさっそく手配を、あっちょうど依頼主さんが来たようです」

 受付嬢ローラさんが依頼表の張り出してあるボードを見た、俺も一緒に目線を追うがその先には美女などいなかった。

「うん? いないじゃないか」

「そこにいるじゃないですか」

「えっどこだよ」

 すると2mはありそうなごっついほぼトカゲの獣女?がこちらにやって来た。

 えっ!? まさか。これが・・・これがアリエール!? ワ  ニ アリゲーターじゃないか!

 俺は全身が硬直した。

 ナイわー。これはナイわー。ナイエールでしょう。うわっまじか。トカゲやん。これモンスターやん。討伐しようか。サービスで討伐しとこうか?

 俺は黒い領域を出す。

「ローラさん私の依頼表がないんだけど。ついに受けてくれるPTがいたの!?」

 嬉しそう? に話すトカゲ女。マジかー。これはいかん。美女とかそういう問題じゃない。人間じゃないじゃないか。

「ごめん、ローラさん。俺間違えちゃったみたい。てへへペロ」

 可愛く言ってみたがもう遅い。

 バンッと受領印が押されているのだ。OhーーーNoーーー!!!!

 俺は頭を抱えて神に祈る。

「良かったわねアリエールさん。そこの凄腕Dランクソロ冒険者のケルビンさんがたった今受けてくれたところよ」

 いやらしい目で俺を見るローラ。すいません。俺が調子に乗っておりました。不思議だな。なぜか視界がぼやけてきた。涙がでてきたようだ。そう。まるで滝のように。

「そうですか。ケルビンさん。うん? ・・・・・・何で泣いてるんですか。本当にありがとうございます。ソロだそうですが大丈夫でしょうか」

 なぜか声は可愛いト カ ゲ女アルエール大丈夫じゃない。全然大丈夫じゃない。

「すいません。ちょっと俺も調子に乗ってたみたいで、やっぱり一人じゃ・・・・・・」

「いえいえ。このケルビンさんはソロでジャイアントクイーンビーを退治してますから大丈夫ですよ。受けたからにはやり遂げる方ですよ! ねえ! ・・・・・・ケルビンさん?」

 かぶせるように言ってローラが睨む。くそっ! ギルドカードの情報を見やがったな。ちっ。しゃあない。まあしゃあないかー。受けたからには責任をとるか。 まあ、これも縁だ。 くそがああああああああああああああ! 怒りで俺の【絶対領域】が右腕全体に広がった。おっレベルアップか?

「そうなんですね。頼もしいです。では早速ですが出発しましょう。いつでも行けるように毎日準備はしてあるんです」

 よく見るとトカゲ女は大きなリュックをしょっている。ピンク色の可愛いリュックだ。似合わねー。

 爬虫類独特のテカテカした鱗の体に大きな太い尻尾のリザードマン?か。目はギョロっした金色だ。一応服とスカートを履き、というか巻いて?あるのと頭にピンクの大きなリボンを付けているので女と認識出来てはいる。だが、髪の毛もないし、体はほぼトカゲだ。色は白い。胸も膨らんではいるようだがしょせんトカゲだ。色気とかじゃない。そもそもアソコがあるのだろうか。

 まあ、どうでもいい。流石の俺も、まさかトカゲがアリエールだとは思わなかったよ。あはははは。

 精神的ダメージですでにKO寸前だ。だが、仕事だ。やる事はやらねばならないのだ。

 簡単にローラを含めて打ち合わせした。

「おい、あいつ、あの例トカゲの依頼受けたみたいだぜ!」

「マジかよ!? あの不味い依頼を? えっソロじゃねーか。武器も持ってねーぞ。おいおい。大丈夫かよ。はした金で命落としてちゃ割りに合わんぜ」

「ちげえねえなっ!はっはっはっは」

 飲んでる冒険者たちが聞こえるように嘲る。まあ、そう思うのも無理はない。

「俺はスグに帰ってくるに、100ドロル銀貨一枚

「俺も」

「俺もだ。ってそれじゃあ賭けになんじゃねーか。ぎゃはははは」

「そうだな。じゃあ。俺は帰ってこないに100ドロルだ。はっはっは」


 それにしてもひどいな。

 ローラも少し怒っているような顔をする。だが、それがこの依頼表クエストの難しさを表しているのだ。冒険者は正直だからな。

 打ち合わせを終えた俺達は町を出た。アリエールの案内で進んで行く。

 アリエールはこの町へ来てからずっと依頼表を出していたようだが、半年を過ぎても受けてくれる人がいなかったようで、毎日来てはガックリとしていたそうだ。

 ええ。そうでしょうね。

 仕方なく毎日少しずつ、薬草を採取して生計を立てていたようだ。

 そうなの? ゴリブリンとか素手で倒せそうな気がするけど・・・・・・。むしろ一人で行けるんじゃないかと思うんだけど・・・・・・。

 見た目とは違って戦闘は苦手らしい。

「そもそも、なんで精霊の泉に行きたいんだ。何かあるのか」

 歩きながら聞いてみる。

「ええ。どうしても行かなきゃいけないんです」

 可愛い声で話し始めた。

 どうやらアリエールは呪われているらしい。

 おいおい。いきなりハードだな。

 精霊の泉に入れば呪いが解けるかもしれない。と聞いてこの地へやって来たそうだ。

 なるほど。じゃあ、呪いが解けるともしかして美女になるとかそうゆうやつか。それなら少しは期待できるかも。俺はワクワクして聞いてみた。

「へー大変だな。俺は15歳だけど、アリエールはいくつなんだ」

「私は40歳です」

 だめじゃん。おばさんじゃん。 俺の僅かな希望も打ち砕かれた。

 急にやる気がなくなった。美女でも(誰も美女とは言ってない)40歳はかなりきつい。もーどーにでもなーれ。

 仕事なのでしょうがないが、これからはもっと吟味してから依頼を受けることにしようと心に誓うケルビンであった。

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