ざふぁんじゃ!!!

Venere

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第2章 Fun Lives at the Magic School

#7 はじめての授業

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「ねぇーかなこ!明日は修卒式しゅうそつしきだよ~!春休みぃぃぃ~~♪」
 エレンが私の肩を叩きながら話しかけてきた。
「終卒式……?なにそれ?」
 私は尋ねた。
「修了式と卒業式、合わせて『修卒式』~!」
「へぇー!私が向こうで行ってる学校では卒業式の方が先だよ!6年生は大変だね!……っていうか、卒業の年齢は一緒だよね?」
「うん!6年生だよ!でもさー、向こうって卒業してからもまだ義務教育が3年間も続くでしょ?そっちの方が大変だよ。ここでは、卒業した6年生は学校を続けるのか、働くのか選べるんだよー!」
「えっ!?……っていうことは、来年は私たちが卒業生……!?うそ……!?将来なんてあと3年先だと思ってたよ~。」
「あたしは、ルミート上級魔法科専門学校、略してルミ校に行くんだ♪あんたも来る?」

 エレンと卒業について話しているうちに、授業の始まりのチャイムが鳴った。もう次の日が『終卒式』だというのに、今日から新しい教科、『5年生から始める"神の如き"大魔法使いへの道』の授業が始まる。……とはいっても、昨日入ったばかりの私にとっては、どの教科もゼロからのスタートだ。と、いうわけで、1時間目は私のために、復習の時間に変更になった。

(本来なら、普通に授業があったんだけどね。エルミー先生に感謝!どうもありがとうございます!)

 まずは、基本中の基本である、『魔法界の文字』から。先生が、黒板に10個ほど、記号を横に書いていった。地図記号のようなマーク、算数の難しい問題で出てきそうなマーク、見たこともないヘンテコなマーク……。そんなマークの並びの一番左にある、丸の下に短い縦棒が付いた、果樹園の地図記号を上下逆さまにしたような記号を指さして先生が言った。
┌─┐
│○│
│││
└─┘
「この記号は一番よく使います。何という意味ですか?」
 その瞬間、教室中の生徒ほぼ全員が勢いよく手を挙げた。
「はい……では……エレネヴ・ホーアムさん。」
「はい。このままでは"自分1人"という意味で、縦棒に横棒を2つ重ねれば"あなた"、3本重ねれば"その人"。これは2人称と3人称っていうこと。ただし、横棒1本の"このマーク(♀️)"は"女"。そして試験に出やすいのは横棒が4本の場合。これは"鍵"という全く別の意味になる。ちなみに"男"は"このマーク(♂️)"。」
「正解、大正解です!先生が言おうとしていたことを全部言われてしまいましたわ……。」
 先生は、他の記号の説明も続けた。

┌──┐
│  ○  │
│┼┼│
└──┘
「丸の下に縦棒2本、横棒1本。2本の縦棒は複数系を表します。これは1人称の複数系なので、"私たち"という意味になります。」

┌──┐
│  ○  │
│┼┼│
│┼┼│
└──┘
「これは2人称の複数系ということになるので、意味は"あなたたち"です。」

(1人称、2人称、複数系…………。何がなんだかさっぱり理解できない。魔法学校ではこんな難しいことを習っているのか……。ついていけるかな……?)

「このような記号を組み合わせることで、文を作ることができます。」

(文字だけでも難しいのに…………文!?ぐはぁぁぁ~……。あとで隣の人に聞こう。)

 次は、大切な呪文の復習だ。先生がクラスのみんなに質問した。
「知っている魔法の呪文で重要なものを順番に1人ずつ言っていってくださーい!」
 私は教室を見渡した。30人ほどのクラスメート達が1人1個呪文を答えるってことは…………こんなに呪文、あるの!?

「はい。"モーヴェレ・アッド"のあとに行きたい場所の名前を言うと、瞬間移動の魔法が使えます。」

「"マジカル"のあとにものの名前を言うと、それを呼び出すことができます。」

「水晶玉を用意して、"キアマ"のあとに電話をかけたい人の名前を言うと、電話をかけることができます。」

 次々と呪文の名前を言っていく。そして、エレンの番が来た。エレンは、自信満々で答えた。
「みんなは知らないと思うけど、あの魔王が使った、禁断の魔法フォービドゥン・マジック。それは……」「それは言っちゃダメよ!」
 またあの少女、プラチナガールだ。今日は、エレンと同じツインテールをしている。その時初めて気づいたが、よく見るとなんだかエレンと顔がそっくりだ。双子……?と思っていると授業の終わりのチャイムが鳴った。
「これで1時間目は終了でーす!次は歴史の授業なので、準備をしてから休憩してくださーい!」

──「ねぇ、かなちゃん。」
 "かなちゃん"という呼び方と声の雰囲気で、一発で誰なのか分かった。やはりあのプラチナブロンドの少女だ。先ほどとは違った優しいしゃべり方だった。
「次の授業、歴史だね。」
 それが、どうかしたのか私には理解できなかった。彼女は続けて私に話しかけてきた。
「はじめまして。……じゃないよね。前にも何回か会ったよね。わたし、ミシェル!あなた、歴史に興味ある?教科書にも載っていない、すっごく珍しい知識ダアト、ここだけの話。レグナークラは本名ではないの。つまり、レグナークラ自身が付けた名前!」
 "本当の名前を言ってはいけない"……あの時の先生の話がはっきりと思い出された。私はふと、ミシェルの付けているネックレスに目がいった。あれはもしや……!
「ねぇ、ミシェルちゃん。昨日、エレンちゃんのレリーフは、ただの浮き彫りじゃないって言ったよね?あれ、本当は何なの?」
 ミシェルは、真面目な顔をして答えてくれた。
「あれは、"Reliefレリーフ"、お守りよ。"レリーフ"には、"浮き彫り"とは別の意味で、"気持ちを落ち着かせるもの"という意味もあるのよ。先生が、わたしとエレちゃんで1つずつ持っていなさいって。もしどちらかのレリーフが壊れれば、たちまちもう片方も壊れて、その時にはすっごく恐ろしいことが起こるの。」
 私は、どんな恐ろしいことが起こるのか、すぐに大体の予想がついた。
「魔王が……現れる……!?」
「つまり、そういうこと。だから2人とも、壊さないように大事に持ち歩いているの。……あっ!あと1分で授業が始まっちゃう!準備するの忘れてた!」
 そう言ってミシェルは急いでかばんから教科書とノート用紙を取り出し、机の上に置いた。と同時に、私にとって初めての授業日2授業目のチャイムが鳴った。
「今日は、みんな大好き☆魔王とレグナークラ様の復習をしますよーっ!」
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