星降る夜の体験記

からふる

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流星群 2

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風の音は段々と弱くなって、いつのまにか止んでいた。さっきよりもなんとなく星が輝いて見える。
「あとどれくらいかなあ」
「ん~」
パパが返事を言いかけた時、一瞬空で何かが動いた。
「今の見た!?」
「流れ星、あったのか?」
「違うよ!」
「違うって、何が見えたんだ?」
「わからない」
僕が変な事を言うからパパは眉を歪めて空を見回した。そして今度は笑いながら言った。
「UFOだったんじゃないか?今晩連れ去られるかもしれないな」
「やだよ、怖い」
「冗談だよ。どんなふうに動いてたんだ?」
「なんか、白いのがちょっと、ぐにゃぐにゃって…… あっ!今、星がひとつ流れた、流れたよパパ!」
パパが言ってた通り、星が突然斜めに流れて落ちていった。
「おっ、いよいよだな」
「すごい、ほんとに一瞬だった!」
「ちゃんと願い事の準備しておかないとな。あっ!あそこに今あったぞ」
「え!」
銀色の雨が降り始めたかのように空に次々と流れ星が現れた。それはとても不思議な景色で、僕らが驚いているのを面白がってるみたいに楽しそうに流れていく。願い事を心の中で唱えるんだけど、どの星に言ってるのか自分でもわからなくなるくらい星がたくさん降っている。


随分時間が経って流れ星の数は少なくなってきた。さっきは寒ささえ気にならなかったけど、ちょっとお腹が痛い。
「星、あんまり流れないね。もう終わりなのかな?」
パパを見ると、パパは眼鏡を外して目の辺りを手で覆っていた。
「どうしたの?」
「なんでもない。ずっと見てたから目が疲れたのかもな」
パパはそう言って眼鏡を掛け直した。頬にきらりと光る滴がついていたのを僕は見つけた。でもそれについては何も言わない事にした。
「ココアもなくなったし、そろそろ部屋に入ろうか」
「うん」
リクライニングチェアを片付けてから、パパはポットを、僕は写真立てを持って部屋に戻った。マグカップを持って降りるとリビングでママが座ってテレビを観ていた。
「ママ!ココアごちそうさま」
「おかえり。どうだった?星はたくさん見れた?」
「うん、もうすごかったよ。すっごく綺麗だった!ママも来ればよかったのに」
「そうね。でも外は寒いから」
「確かに。僕お腹痛くなっちゃった」
「大変。体が冷え切ってるのよ。さっきのスープまだあるから温めようか?」
「うん、ありがと。先にトイレ行ってくる」
リビングを出るとちょうどパパが階段から降りて来た。
「ママがスープ温めてくれるって」
「そうか。じゃあ一緒にもらおうかな」
トイレから戻ってくるとパパとママは楽しそうに話していた。僕はそれを見てほっとした。さっきもしもパパが泣いていたのなら、早く元気になってほしかったから。
「スープってまだ具もたくさんある?」
「ええ、あるわよ。ベーコンもちゃんと入ってる」
「やった!」
スープを食べながらパパと流星群の事をママに話した。楽しかった。でもすぐに眠くなってきて、重い瞼を開けていられない。
「優斗、もう寝なさい」
「はあい。明日パパも休みだよね?」
「そうだよ」
「どこか連れて行ってくれるの?」
「風邪引いてなかったら遊園地にでも行くか」
「え!ほんと!?」
「ああ。だからちゃんと温かくして寝るんだぞ」
「わかった。うわあ、最高」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
嬉しくて眠気が一瞬吹き飛んだ。でも足が重くて階段をやっと登りきって部屋に入った。パジャマに着替えてベッドに転がった。あ、歯磨きをするの忘れてた。起きないと―――――
瞼を開けられない。あと10秒数えてからにしよう。カウントダウンをしているうちに僕はうっかり寝てしまった。
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