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21;マルガリータ 1(政略結婚)

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私は小さい時から劣等感の塊だった。
金髪に碧眼、綺麗な顔立ちの双子の片割れの第二王子

同い年の異母兄弟達、皆整った顔立ちに才能あふれる優秀な兄弟達の中・・・一人平凡な自分

茶色い髪に、グレーの瞳、そばかすだらけで背も小さく、がりがりで胸も小さい、勉強もそこそこで武術芸術は転でダメ。

さらに、精霊も光精霊1つのみ、皆3つから4つの精霊に好かれているのに私1つ、唯一優れているのは魔力が多いことのみだった。

そしてさらに追い打ちをかけたのが、歳の離れた弟と双子の妹、
8精霊を一人で操る弟、二人で8精霊を操る、優秀な妹達
3人とも綺麗で、学問、武術、芸術共に優秀、王宮の高官たちは次第に私の事を忘れたようだった。

「お姉さま?庭で遊びましょう」
そういって外に連れ出してくれるのはまだ5歳の弟エミリオだった。
「靴も武器になるんですよ、ここのヒールの角を・・・」
何故か遊ぶと言って、庭で5歳の弟に護身術を教わる私・・・
「男の急所は・・・・」
そこまで、私は危なっかしいのだろうか?5歳の弟に心配されるほど?
でも、構ってくれるのは本当に、エミリオだけだった。


気が付くと行遅れの27歳になっていた・・・
誰も、私がメイドのように掃除をしていても、お客様の給仕をしていても王女だと気が付かなくなっていた。

「あれ?マルガリータ?」
給仕をしていると、兄がやっと私に気が付いた
「・・・・」
「白ワインにします?お兄様」
「・・・ああ」

王家の食事に私が座らなくなってもう3年
だれも、気が付かなかったのに!
存在に気が付いた途端、今更政略結婚で嫁げと・・・
まるで思い出したように話が進んでいく・・・
母だけは猛反対!エミリオはもう旅立った後だった、母以外私を守ってくれるものは居ない。
でも猛者(モウザ)の母も周りの高官達に押し切られていた。


「マルガリータ・・・ごめんなさい!辛くなったら直ぐ帰って来なさいね」
「はい・・・お母様」

嫁ぎ先は我が国と敵対している
”ベンデーソン国”の国王ジャナザン・ベンデーソン44歳の第二夫人(正室)として迎えられることになっていた。
第一夫人(正室)、側室8人、妾が数十人居ると言われていた、そして側室が何人か原因不明の死を遂げている
邪神を信仰しており、自分達だけは滅びず他の種族は全員滅びると言う教えを広めている王室だった。

国境のテント
グレーデリ皇国側とベンデーソン国に赤い絨毯が敷かれており、
そこを装飾品から服から何もかも取られて裸のマルガリータが歩いて居た
護衛の兵士たちが見守る中、羞恥に耐えながら、ベンデーソン国側のテントに入る
そこでベンデーソン国の衣装アクセサリーを身に着けて外に出るとグレーデリ皇国側に一礼して馬車に乗りこんだ。
(あー恥ずかしかった・・・エミリオから貰った防御の魔法具のアクセサリー・・・皮膚の中に埋め込みにしたのはこのせいだったんだ、見えなくちゃアクセサリーの意味ないと思ってたけど・・・お母様から貰ったのはおいて来ちゃったな・・・)


結婚式は行われず、王宮で晩餐会が行われただけだった
「明日新たな王妃に洗礼を行う、”我が栄光の神の為”」
「「「かんぱーい」」」」

(第一夫人、口を覆う布を鼻から駆けているけど食べにくそう・・・それに、他の側室の方も布を?足も引きずってたような?どうされたのかしら・・・)
「痛!・・・なにを!」
隣の王が抓って来た
「よそ見をするな!いい気になるなよ、大国の王女だからって嫁いだら私の物だ!」
ゾクッと寒気がした
(なんなの・・・)

その晩は洗礼の前準備と言うことで教会の一室に・・・・閉じ込められている。
(格子に鍵・・・)
入口に窓に格子の嵌められた部屋、部屋は綺麗なのに違和感のあるその鉄格子に恐怖を覚えた
(洗礼の方法って知られてないよね、邪神信仰なんて・・・聖水を額に付けて洗礼名を貰うって訳じゃなさそう)

その夜は恐怖で眠れなかった。

早朝、メイドらしき人が3人部屋に入ってくると、身を清められ、真っ黒なドレスを聞かせられ、鼻から下を覆う布を付けられた。
メイドは頭から薄い黒い布を付けており、表情も顔色も見えない、手が震えているメイドが居たのに気が付くと、泣きたくなるような恐怖がまた襲う・・・

手を前に出すように言われそっと出すと、手は合わせた形のまま拘束された・・・
「なぜ、こんなことを」
帰ってくる言葉は無い

メイドから真っ黒な衣装を頭か昂り剣を持った男達に引き渡された
「洗礼とは何をするのですか?」
恐る恐る聞いたが
「黙れ」
そう言われただけで説明はやはりない

祭事場はそんなに広くないが中央正面に、邪神の像だろうか?禍々しい姿の像が飾ってあり、
左右の一段高い所に、剣を持った黒ずくめの多分男達が数十人立って居た
獣臭いと思って正面中央の前の台座を見ると、子牛が手足を縛られて横たわっていた

台座の前に連れて行かれそこに膝立ちで座らされ、床から伸びた鎖に手枷が繋がれ、男達に肩をぐっと掴まれる、そして猿轡(さるぐつわ)を嵌められた

「痛みで叫ばれたら煩いからな」

そう言って脇の通路から王が出て来た

祭壇前で祈りを奉げる王、カチャンと祭壇から何かを取った

短剣だった
勢いよく振り上げらる手、そのまま子牛の心臓を貫いた

(ひっっ・・・うっそ・・・)

「はははっ良い顔だ!その顔は放蕩に気持ちが良いな」
王は血の付いた短剣を持ってマルガリータの前に立つ
頭をわしづかみにされ、さらに短剣が目の前に、恐怖で涙が溢れる

「倭が妻とする印をつける、そして新たな名を授ける”アラディア”それがそなたの新しい名だ」

そういっては先を額に付けた
鈍い痛みが走る
頭、肩とがっしりと掴まれているため身動きが一切出来ない

額から血がしたたり落ちるのが分かった、そのまま意識を手放した。


身体が痛い
そう感じて薄らと意識を戻すと暗い部屋だった
腕を上に、吊るされて居た
「気が付いたか?”アラディア”お前!防御魔法使ったな!」
そう言ううと平手が飛んできた、鈍い痛みが足る、が我慢できないことも無い
「くそ!」
「王様、無意識に使っているようです、解除は難しいかと」
側室だと紹介された中の一人だろう、見たことのある女性が言った
「額の印が浅い!」
「あうっ痛い!」
額の傷に指を押し付けられた

「もういい、初夜だお前は下がれ」

そう言ううとその女性は部屋から出ていった

それかは最悪だった、殴られながら凌辱される
身体中がきしみ、悲鳴しか上がらなかった。
それも押し殺すような悲鳴で、それが王には気に入らなかったようである。
それでも、防御魔法が発動しているので、痛みは軽減されているようだが、精神的に壊れていく自分が分かった”アラディア”と違う名前で呼ばれるのも辛かった。


朝、気が付くと普通にベットの上に居た
「お目覚めですか?少し傷により熱が出たようです、薬湯をお飲みになってお休みください」

(昨日震えていたメイドだわ・・・)
「王に付けられた傷は、邪神からの恩恵と言ううことで、治癒魔法は禁止されております・・・・」
「つぅ・・・分かったわ・・・・あなた大丈夫?名前は?」
「!奥様・・・メディと申します」
メイドは泣きだしていた
「すみません、王宮に上がって日が浅いもので、慣れずに・・・すみません」
「こんなことになれない方が良いわよ・・・いつっ」
「喋られませんよう、口の中と口の端が切れております。」

(2メートルも飛ぶように殴られたのにこれで済んでいるのは防御魔法?私のそんなの使え・・・エミリオ!?埋め込んだ魔法具のアクセサリー・・・知ってたの?エミリオ・・・そいえば、精神耐性も付与しとくのでって・・・この事知ってたの?)

「奥様?スープでも召し上がりませんか?」
薬湯の苦さに参っていたのでありがたくもらった。
此処の来て初めて優しくされたのに、精神が穏やかになって行くのが分かった


それから、王は私を凌辱することは無かった、が、
暴力は邪神の恩恵と馬鹿な事を言いながら続けられていた・・・
青痣が消えることのない毎日を過ごし、骨が変形してあの時の側室のように足を引きずるようになっていた。
治癒魔法を使えばあっと言うう間に治っていただろうが、こうまで変形しては、母位の能力者じゃないと治らないだろう、初夜以外、暴力のみなので、子供が出来ることも無く3年がたった。
その頃、王宮の中の人たちに異変が起き始める、まだら模様に黒く皮膚が変色しているのだ、そのまま亡くなった人もいた。

「凄い邪気・・・・」
他の人は感じないのか?この禍々しい邪気が・・・
「祭司の方が多い見たいです」
「あの、邪神の像には邪神の髪が埋め込まれてるって本当?」
「そう、私も聞いております・・・くっ」
メイドのメディも、王や祭司たちの暴力を受けていた

二人はもう、諦めていた自分たちもあの黒いのに殺されるのだろうと
暴力にさらされているうち気持ちまで後ろ向きになって行っていた。




「戦争です!奥様グレーデリ皇国が攻めてきました。」
「・・・・私では人質にはならなかったのね・・・・」
「奥様・・・」
扉が大きく開けられ兵士がマルガリータを拘束する
縄で縛られ、青痣に食い込み激痛が走る、涙が浮かんだ

王座に連れてこられたマルガリータ、
「攻めて来たのはグレーデリ皇国の末の王子だったか?はははっお前は見捨てられたんだよ!傑作だな!」
「・・・・この国は亡びるべき、私ともどもね・・・」
「滅びる?邪神に守られている我々が?」
「私もこの国も世界には必要が無いのよ・・・邪気に殺されてるくせに・・・」
「!何だと!邪気に殺されるわけがなかろう!我らが力のも源だぞ」
「じゃあ、邪神にも要らないって言われたんじゃない?」
「この!」
王が剣を抜いて此方に向かって来る

(ああっ・・・本当に私って何も役に立たない不要な人間だったのね、ああこれで楽になれる・・・)
目をつぶって死を覚悟した

ざしゅ!

人が切られる音がした・・・がどこも痛くない
(?)
ゆっくりと目を開けると
黒装束・・祭事の時の男達と違う・・・・冒険者の様な姿の男が目の前に居た

床が血にまみれて行く
どさっ
血のかなに倒れたのは王だった

「え?」
「グレーデリ皇国第一王女マルガリータ様ですね」
「はい!?だれ?」
「私はグレーデリ皇国、第8王子、エミリオ・グロイスターの配下の者です、ご安心ください。」

見ると周り中血の海だった・・・その中で冷静な自分に驚いている
心の中で、ざまあみろと言った感情が溢れて来るのに驚いていた
その反面、死ねなかった・・・そう言う気持ちもあった

部屋に戻され、しばらくそこに居る様言われた
メイドのメディも居て、二人で手を握って不安に耐えた

数日後、エミリオが王宮にやって来た、他の兄弟達も居た
綺麗に掃除されたあの血の海だった部屋にグレーデリ皇国の兵士たちが居た

私の姿を見た兄弟達は、目に涙を浮かべる者壁に八つ当たりするもの
凄い殺気を放つもの、ちょっと兄弟が恐ろしかった

杖をついて近づくと、エミリオが寄ってきて
「姉上なら治療魔法が使えたでしょうに・・・なぜ」
「魔法は禁止されてて、邪神の恩恵とかで、治したらダメだって言われて・・・」
エミリオの周りに威圧が展開される

「えっと」
エミリオに抱きつくマルガリータ
「ありがとう、痛みに耐えれれたのはエミリオの魔法具のおかげ」
「・・・ここの邪気のせいで弱くなったんですね、本当なら危害を加える事は出来なかったはずなのに!くそっ!」

「本当にエミリオだけね私の事を気にかけてくれるのは」
「「「「「 ! 」」」」」」


その言葉に、兄弟達は何も言えなかった・・・
この婚姻に反対したのはロゼッタとエミリオだけだったからである。
額の傷跡、口の横の青痣、ちらっと見える腕にも青痣。
杖を突いて歩く姿に、そして力なくエミリオに笑いかける姿に、自分たちは何てことをしたんだろうと後悔していた。

「姉上治癒を・・・」
「いえ、良いわしなくて」
「!どうして?」


「ねぇ・・・殺してくれない?」


「あ・ね・う・え・?」

兄弟達が全員目を剥いた、冗談ではないその言葉に驚愕した

「辛いの、役に立たない自分が、けっきょく人質としても役に立たない、ベンデーソン国王ジャナザン・ベンデーソンにも、暴力だけで相手にされない、市井に落ちても生きて行く術がない、私なんて・・・自分で死ぬことも出来ない臆病者だし・・・」

自虐的な言葉を聞いて、いかにマルガルータが傷つき、自暴自棄になっているかが伺われた

「幸せになります!絶対姉上はこれからは・・・だからそんな事言わないで・・・」

エミリオはマルガリータを抱きしめる
そして治療魔法を掛けた
















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