上 下
3 / 27
03;舞踏会

大きな鏡に、映る別人の私

しおりを挟む
王都にはボーネット伯爵家の屋敷がある。
母が健康で私がまだ生まれていなかった時、社交界時期に王都のこの屋敷で過ごしていたらしい。
私が出来てからは利用されていない。
前もって管理人に連絡がいっていたため、ついてすぐに部屋は利用出来るようになっていた。

「王都の屋敷ってさすがね、使用人の部屋も奇麗」
「ほんとう・・・凄い」

私はここで自分の家系が結構な貴族なのだと痛感した。
田舎の屋敷と違い、冷暖房は魔法具が屋敷に施されていて、暖炉の前で寝るなんてことをしなくていいんだなと流石都会だわと思った。



舞踏会の日、朝から3人の準備で、2人しか居ないメイドの私たちは大わらわだった。お肌の手入れに、つめの手入れ、髪のセットにドレスの着付けとアクセサリーの選定。

「忙しいぃ~!約束と違う!給与上乗せしてもらうよ!」

ロザリーがお継母様に食ってかかっていた。
ブラシをマリゼラの顔の横でブラブラさせながらお継母様を睨んでいる。

「分かりましたわ、これでよろしいかしら?」

金貨5枚(5万円相当)をロザリーに渡す、ロザリーは にやっと笑うと鼻歌を歌いながらマリゼラのの髪型を整えていった。
私にはセットする技量が無いと思われていたので、もっぱらドレスの手入れをしていた。

夕方、3人はいそいそと馬車に乗り王宮に出かけて行った。

「あ-終わった~・・・・でも、あの2人って派手な衣装着せても地味よね・・・ははは!全然似合ってないし、趣味悪っ、絶対に王子様になんて選ばれないわよ、メイド服のあんたの方がよっぽど可能性ありそう」
「はは・・・疲れたわね、お茶でも入れる?」
「要らない、私これから街に繰り出すわ!せっかく軍資金いただいたしね、金持ちの男居ないかなぁ~西町は貴族区域で治安いいから女一人でも安全だし、行ってくるわっ」
「そ・・・そう・・・行ってらっしゃい」
「あんたも行く?」
「ううん・・・遠慮しとく」
「そう・・・じゃ」

メイド服のポケットに忍ばせておいた自作の睡眠薬をぎゅっと握った。
さっと着替えるとロザリーは12時には帰ると言って出かけて行った。

「さてと・・・まさか街に繰り出すとは思わなかったわ・・・使わなかったな」

睡眠薬を見つめてため息をついた。

「さてと、舞踏会っ」

私は玄関に向かいながら魔法を放っていく。黒いメイド服がきれいな青いプリンセスラインのドレスに変わる。髪を魔法で編み込みハーフアップにしてダイヤの髪飾りとネックレスを飾る。うっすらと化粧を施し白いレースの手袋をはめる。

「お母様の髪飾り、似合ってるかしら・・・ガラスの靴はさすがに歩けないってね!その代わりのクリスタルをちりばめた靴、ガラスの靴っぽい?頑張って魔法使わずお母様の靴をリメイクしたんだもの、絶対落とさないようにしよう私にシンデレラストーリーは必要ない!もうすぐ貴族じゃなくなるし!」

ダイヤのアクセサリーは、当主しか入れない宝物庫から持ち出してきたものだ。
当主しか入れないからお継母様はこの宝石のことは知らない。
玄関脇の大きな鏡に、映る別人の私、折檻の痕は魔法で見えなくしているから、シミ一つない美しい肌がそこにあった。

「我ながら完璧ね・・・誰もこれが「灰かぶり」だなんて分からないわね」

玄関の扉を開けるとそこには、2頭の白い馬がつながっている貴族の馬車が止まっていた、御者もいる。。

「小さい荷馬車を偽装したの上手くいってるわね、馬と御者は魔法で作った人形だけど・・・ま、大丈夫でしょう」

馬車を動かすのは私の魔法、馬と御者も私が「マリオネットの魔法」で動かしてる。
ゆっくりと馬車に乗り込むと王宮に向けて出発した。





王宮ではもう舞踏会が始まろうとしていた。
「フィレンバレット王国 国王エゼウルフ様、后妃エウザラード様、第一王子ロバート様、第二王子フェルディナンド様、おなーりー」

会場のざわつきが収まりシーンとした、会場のすべての人が項垂れ王族一家を出迎える。

王様は41歳がっちりとした体形の美丈夫、20年前の戦争のときは先頭を駆け巡って敵を蹴散らせていた脳筋王である。
后妃は38歳3人の子持ちとは思えないほどのスタイル抜群の美女、才女で王の公務を助けている。
第一王子ロバートは19歳、剣の腕も高く、貴族の学園では常に首位だった才媛でもある、婚約者は公爵家の長女。
第二王子フェルディナンド17歳、先日まで隣国に留学中だった。運命の人を探すロマチストで剣と魔法に長けた人物だ。
第一王女18歳は隣国の王太子に嫁いでいる

「今宵はフェルディナンド帰還の祝いでもある、皆楽しんでくれ」

そう王が告げると音楽が始まった。
始めに第一王子ロバート殿下が躍ると踊りの輪は広がって行った。




ようやく王宮についたファティマはゆっくりと御者の手をとり降り立った。
招待状を護衛騎士に渡すと、騎士は少し不思議な顔をしたが難なく会場に通してもらえた。
騎士が不思議な顔をした理由は分かっている。

【ボーネット伯爵家当主】と招待状の表面には書かれていない隠れ表記のせいだった。そう、お継母様が気が付いてない肩書があったからだった。

普通の令嬢の招待状は
【ブラウン男爵令嬢】と書かれているはずなのだ。
それと保護者が付き添っていないのもあった。



会場の扉がゆっくりと開けられる
(名前呼ばれなくてよかった、呼ばれたらどうしようかと思った)
会場に入ると皆一斉にこちらを見た
(うわっ・・遅れてきたから注目あびちゃった、やばいばれるかな?お継母様たちに・・・あっいた)
会場を見回すとお母様たちが見えた・・・それといかにも王子様!って感じのハンサムな煌びやかな男性
(すっごいハンサム!さすがね・・・王族だよね・・・こっち見てる・・・ど・・・どうしよう、こっち来る)
(顔が引きつりそう・・・作り笑い慣れてないのに・・・)

「どちらのご令嬢でしょうか?私と踊っていただけますか?」

そして手を差し出された

「はっ・・はい喜んで」

(心臓が壊れそう・・・なんなのよこの破壊的な笑みは!だめよ・・・私は庶民になるんだから・・・これはひと時の夢なんだから、夢にするんだから)

そう自分に言い聞かせているがドキドキが止まらない
音楽が鳴り響く中、なぜか会場に踊っているのは2人だけ

「名前をうかがってもよろしいですか?」

踊りながらそう尋ねてくる王子

「えーっと・・・」
「失礼、私は第二王子のフェルディナンドと申します」
「あ・・・の」

質問されたがどうしようか困ってしまった・・・それよりも付け焼刃の踊りを失敗しないか気が気じゃなかった、王子のエスコートは最高で、私のつたない踊りをカバーしてくれていた
周りは私たちをじっと眺めている・・・なぜだ・・・ちょっと怖いと思った。

曲が終わると、息をつくそれにすぐ気が付いて王子が

「バルコニーで一息つきませんか?」
「あっ・・・はい」

王子は給仕に飲み物と軽く食べれるものを頼んで私の手を引く。
バルコニーにはソファがいくつか置いてあり、端の方に2人なぜか並んで座った。
二人きりというわけではなく、護衛らしき人が囲むようにして少し離れて立っていた。

「フルーツジュースにしましたが、カクテルか何かの方がよかったですか?」
「いえ、お酒は飲めないのでありがとうございます」
「どちらのご令嬢かお聞きしてもよろしいですか?」
「いえ、王子様に気にかけていただくような身分では無いので」
「・・・お名前だけでも」

(うー困った、雑談を交えながら、何度が名前と爵位を聞かれた~どうにかごまかしているが・・・不敬にならなければいいけど)

「田舎ですか?どんなところですか?」
「緑豊かな所です、空気もおいしくて地鶏は名産なんですよ」
「領民の暮らしはどうです?」
「裕福ではないですが、領主が事業をしているので税金はそれほど高くしなくても国に治める税を確保できております」
「いい領主なんですね」
「そうですね・・・領主としてはそうなんでしょうね」
「?・・・領主としては?」
「いえなんでもありません」




それから留学の話や、兄弟の話、王様の武勇伝なども聞いて、なんだか楽しい時間を過ごせた。

時間を気にしていなかった私が悪かった。
<ズクン>
と頭痛がしてきた。
(やばい・・・魔力切れ)

いきなり立ち上がって
「殿下、楽しい時間をありがとうございました。私これで失礼させていただきます」
私は言うが否や一目散に走りだした。

「あっ待って」

王子の焦った声がする・・でも止まるわけにはいかない、魔力が切れるとドレスはメイド服に変わる。馬車は荷馬車に戻るし、馬を動かせなくなると屋敷に帰れない。

(やばいやばいやばい)

王城の長い階段、足がもつれる。

「あっ・・・」

靴が片方脱げた・・・。

「くそっまじか・・・取りに戻ってたらやばい・・えーい諦めだ」

そのまま馬車に駆け込んで走り出す。。
後ろから

「その馬車を止めてくれ!」

と王子がさけぶが、魔法で動かしている馬車は騎士の間をすり抜けて街道を駆け抜けていった。
王子が私の脱げたくつを、大事そうに抱きしめていたことなど知るよしも無かった。

12時前、どうにか屋敷につくと荷馬車から、メイド服の私は下りた。
馬と御者を消して納屋に荷馬車をしまって屋敷に入る。
ロザリーはまだ帰っていなかった

1時頃ロザリーがかえって来ると、しばらくして3人が帰ってきた。

3人は興奮していた。

「凄いお姫様が来たのよ。王子様メロメロだったわ。私より少し美人だったから王子に見初められても仕方がないわね」
そうマリぜラが言うと
お継母様は苦虫をつぶしたような悔しそうな顔をしていた。

(気が付かれてない?よかった)

「ん?酒臭い・・・灰かぶり?違うわね・・・ロザリー!?」
「ん?そっちは楽しんで来てるんだがらお酒くらいでくどくど言わないでよ」

お継母様は訝しげな顔をしていたが、疲れたのか3人共湯あみもせずに寝所に入っていった。

「灰かぶり・・・高級な香水の匂いが少しするわよ、シャワーしたら?」
「え?・・・・」

にやにやとこちらを見るロザリーだった。
まさかね・・・・






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

異世界定食屋 八百万の日替わり定食日記 ー素人料理はじめましたー 幻想食材シリーズ

夜刀神一輝
ファンタジー
異世界定食屋 八百万 -素人料理はじめましたー   八意斗真、田舎から便利な都会に出る人が多い中、都会の生活に疲れ、田舎の定食屋をほぼただ同然で借りて生活する。     田舎の中でも端っこにある、この店、来るのは定期的に食材を注文する配達員が来ること以外人はほとんど来ない、そのはずだった。     でかい厨房で自分のご飯を作っていると、店の外に人影が?こんな田舎に人影?まさか物の怪か?と思い開けてみると、そこには人が、しかもけもみみ、コスプレじゃなく本物っぽい!?     どういう原理か知らないが、異世界の何処かの国?の端っこに俺の店は繋がっているみたいだ。     だからどうしたと、俺は引きこもり、生活をしているのだが、料理を作ると、その匂いに釣られて人が一人二人とちらほら、しょうがないから、そいつらの分も作ってやっていると、いつの間にか、料理の店と勘違いされる事に、料理人でもないので大した料理は作れないのだが・・・。     そんな主人公が時には、異世界の食材を使い、めんどくさい時はインスタント食品までが飛び交う、そんな素人料理屋、八百万、異世界人に急かされ、渋々開店!?

一番モテないヒロインに転生しましたが、なぜかモテてます

Teko
ファンタジー
ある日私は、男の子4人、女の子4人の幼なじみ達が出てくる乙女ゲームを買った。 魔法の世界が舞台のファンタジーゲームで、プレーヤーは4人の女の子の中から1人好きなヒロインを選ぶ事ができる。 ・可愛くて女の子らしい、守ってあげたくなるようなヒロイン「マイヤ」 ・スポーツ、勉強と何でもできるオールマイティーなヒロイン「セレス」 ・クールでキレイな顔立ち、笑顔でまわりを虜にしてしまうヒロイン「ルナ」 ・顔立ちは悪くないけど、他の3人が飛び抜けている所為か平凡に見られがちなヒロイン「アリア」 4人目のヒロイン「アリア」を選択する事はないな……と思っていたら、いつの間にか乙女ゲームの世界に転生していた! しかも、よりにもよって一番モテないヒロインの「アリア」に!! モテないキャラらしく恋愛なんて諦めて、魔法を使い楽しく生きよう! と割り切っていたら……? 本編の話が長くなってきました。 1話から読むのが大変……という方は、「子どもの頃(入学前)」編 、「中等部」編をすっと飛ばして「第1部まとめ」、「登場人物紹介」、「第2部まとめ」、「第3部まとめ」からどうぞ! ※「登場人物紹介」はイメージ画像ありがございます。 ※自分の中のイメージを大切にしたい方は、通常の「登場人物紹介」の主要キャラ、サブキャラのみご覧ください。 ※長期連載作品になります。

娘の命を救うために生贄として殺されました・・・でも、娘が蔑ろにされたら地獄からでも参上します

古里@10/25シーモア発売『王子に婚約
ファンタジー
第11回ネット小説大賞一次選考通過作品。 「愛するアデラの代わりに生贄になってくれ」愛した婚約者の皇太子の口からは思いもしなかった言葉が飛び出してクローディアは絶望の淵に叩き落された。 元々18年前クローディアの義母コニーが祖国ダレル王国に侵攻してきた蛮族を倒すために魔導爆弾の生贄になるのを、クローディアの実の母シャラがその対価に病気のクローディアに高価な薬を与えて命に代えても大切に育てるとの申し出を、信用して自ら生贄となって蛮族を消滅させていたのだ。しかし、その伯爵夫妻には実の娘アデラも生まれてクローディアは肩身の狭い思いで生活していた。唯一の救いは婚約者となった皇太子がクローディアに優しくしてくれたことだった。そんな時に隣国の大国マーマ王国が大軍をもって攻めてきて・・・・ しかし地獄に落とされていたシャラがそのような事を許す訳はなく、「おのれ、コニー!ヘボ国王!もう許さん!」怒り狂ったシャラは・・・ 怒涛の逆襲が始まります!史上最強の「ざまー」が展開。 そして、第二章 幸せに暮らしていたシャラとクローディアを新たな敵が襲います。「娘の幸せを邪魔するやつは許さん❢」 シャラの怒りが爆発して国が次々と制圧されます。 下記の話の1000年前のシャラザール帝国建国記 皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません! https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/129494952 小説家になろう カクヨムでも記載中です

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

処理中です...